心優しい王女様の気持ちに答えたい魔物達
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初めてのダンジョン攻略はダンジョン内部に潜入する事すら出来ずに終えてしまった。
翌日、再びダンジョンへの再挑戦をしようと【ガルーシャ大洞窟】に向かえなかった。理由は2つあった。
1つ目の理由は最近全く構っていなかったせいか、久しぶりにルイ王女が脱走し、ミックスの腹の上で眠っていたからだ。
前とは違いわざわざ時前の掛け布団をもってミックスの上で気持ち良さそうに眠っている為、仕方無く城に寄らなくては行けなくなってしまったのだ。
そしてもう一つはリザーナの愛刀のサーベルが折れてしまった事だ。
「サビーヌごめんなさ~い~!!!
折角、サビーヌに貰ったサーベルだったのに折れちゃったよぉぉ~!!!ゴメンねぇ~!!!」
「そりゃね。ただのサーベルだし、いつかは折れるとは思っていたから。
そんなに気にしてないから泣かないで…ね? 」
城に着くなり、サビーヌはルイ王女を叱ろうと近づいてきたが、その前にリザーナが抱き付いて大泣きしてしまった為、それ処ではなくなってしまった。
ルイとシルビアもリザーナを宥めるが暫くは泣き止みそうに無かった。
エレーナとミックスはどうするか話し合った。
「どうするよ?
リザーナとシルビアを残して私らだけでダンジョン攻略するか?」
「それも一つの手だがな。
今後の事を考えたら二人の新しい武器や装備は身を守る上で必要があるからな…
装備を整えるにしても金がな… 」
実際このパーティーは本当に金が本当にない。
ダンジョン内にあるであろう財宝や宝も先日のエレーナの暴走により、ダメになっている可能性もある。
例え、二人で攻略出来たとしても金になる財宝や金貨がなければ意味がないのだ。
異種連邦国の内部に魔物が住める屋敷とシルビアが作る服を販売する店を作る為には莫大な資金がいる。
しかし、魔力で武器の刃などを維持できる魔物のミックスやエレーナと違って、リザーナ達通常の冒険者は装備や武器にも金が掛かってしまう。
「…手元に残ってる資金が金貨15枚だけだ。
リザーナとシルビアに最低限の装備は揃えられる額ではあるが…」
「魔物の私らが金銭面で苦労するなんて思ってもみなかったな!!
てか、私自身もミックスの財宝のお陰で助けられた様なもんだしな!
その礼いうの遅れて悪かったな。
助かった。ありがとな」
エレーナは腕を組んで豪快に笑い始めた。
普通の魔物なら、その日の獲物を仕留めて生き永らえる事が何よりも重要である。次に種を絶えさせない為に求愛行動をし、子孫を作り数を増やすのが一般的な魔物だ。
ミックスやエレーナの様な知力がそこそこ高い魔物は好き勝手に行動したり、ダンジョンや迷宮のボスになったりする。
冒険者から守ってきた財宝が人間社会で生きる上でこれ程まで重要だとは知らなかった。
すると、そんな二人の会話を聴いていたルイ王女は泣きじゃくるリザーナをサビーヌとシルビアに任せると、マルセル国王の側に近付いた。
「ねぇ。パパにお願いがあるんだけど、リザーナ達を異種連邦国の専属冒険者パーティーに任命する代わりにお屋敷とお店の資金を出してあげるのはどうかな? 」
「…勿論、彼らにはそれだけの力があるのは解っているんだがな。
…他国のギルドや国王や領主がどう思うかが気掛かりでな 」
「異種連邦国の専属冒険者パーティー?」
詳しく話を聞くとそれぞれの国には専属の冒険者パーティーが存在し、魔物の襲撃から国を守る契約をしている国の用心棒だ。
基本どの国も専属の兵士団や護衛団は存在するらしいが、魔物相手に戦えるプロの冒険者を在住させたり隣国からの特別依頼を受ける事で国同士の信頼関係を結ぶ役割りをになっているのが専属のパーティーというらしい。
しかし、反対派も勿論いる訳で一人の大臣が進言してくる。
「しかし、国王様。
正直に言ってしまえば、手先が器用で魔法使いとしても優秀なシルビア殿はともかくですよ?
伝説の女魔王リリスの能力を持ったリザーナに知力を持った魔物が2匹いるパーティーを異種連邦国の代表にして宜しいのですか?」
「私から言わせて貰えば異種連邦国の王女である私を救出し、挙げ句そのエレーナとシルビアの命を護る為にミノアの財宝を提供し仲間になりました。そして事故とはいえ、飛竜の襲撃や上位飛竜を討伐し、壊された外壁の穴を塞ぎ、民を魔物からの驚異から守った実績があります。
何よりも私は異種連邦国の王女として彼女らが大好きなのです。
王女という役職についていなければ、一緒に冒険に出たいと今も思っています。
お城を抜け出して一緒に馬小屋で寝ていたのは少しでも冒険者として仲間としていたいと思ったからです」
一人の大臣の言葉にルイは王女としてリザーナのパーティーが如何に功績を上げて来たか述べた。そして城を抜け出して馬小屋で一緒にいた理由も正直に述べてくれた。
ルイは王女として魔物であるエレーナとミックスや女魔王リリスの能力を持ったリザーナを仲間として信頼してくれているのだ。
大臣はルイの強気の言葉に何も言えなかった。
全て事実である為、否定する事が出来ない。
「… オイ、リザーナ泣くのをやめろ。
残りの金で新しい武器と装備を二人とも揃えて【ガルーシャ大洞窟】の攻略に行くぞ?」
「ミックス…? 」
「… だよなぁ。一国王女を何時までも馬小屋に寝泊まりさせる訳には行かねぇもんな!
ダンジョン攻略の実績が上乗せされて屋敷さえ手に入ったら安心して遊びにこれるし、泊まりにもこれるようになるもんな!!」
「エレーナも急にどうしたんですか? 」
ミックスとエレーナの目付きが変わったのが解るほど強力な重圧を感じとる事が出来た。
普段一緒にいる二人ですら見たことが無い程やる気に満ちている。普段は何だかだと優しいミックスにいつもヘラヘラと笑っているエレーナの変わり様に驚きを隠せないでいた。
「そこまで信じてくれてるルイ王女様自身に私は迷惑掛けちまったからな。
そんな事言われたらやる気出すしかねぇよな?」
「あぁ…魔物である俺らを受け入れてくれただけでも、有り難いのによ。
それ以上の想いを伝えられたら、結果で答えてやらねぇとルイ王女に顔向け出来ねぇだろが?」
二人の言葉にリザーナは涙を拭き、シルビアも微笑み側に駆け寄った。そして武具屋で掛け無しの金貨で装備を揃える為、城を後にした。
ギャグとシリアスは銀魂から学んだ。
だから、ふざける時はふざける。
シリアスな時は真面目にカッコいいキャラにする流派を真似て見ました。なろうっぽくないかも知れないけど…




