強くても結局金銭面が悩み種になる
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「ねーミックス、キスして戦斧になってよ~また活躍したい!!」
「ど阿呆、只でさえ魔力を根こそぎ持っていかれる状態にされるのに好き好んでホイホイなってれるか。大体、俺が戦闘できない状態になったらお前、どうやって魔物と戦うつもりだ?」
あれから一週間たったが、リザーナは定期的にキスを求めてくる。今までろくに戦闘で活躍できなかった為、戦える力があるとわかって嬉しいのだろう。だが、ミックスからしたら魔力を根こそぎ持っていかれ最悪の場合、死亡するリスクを背負うのだ。その為、そう簡単に唇を許すことは出来ない。依頼を終え、ギルトで食事をとっていてもキスを迫ってくるようになった。
「あのなぁ…今の問題はリザーナの呪いもだがな。俺らには金がない。俺が守護していた迷宮の財宝はお前の借金返済に使ったし、シルビアの店を出すにしてもそもそも資金がなければ話しにならんだろうが…」
「うっ…そ、それは…確かに今は金欠だ…」
「なーその件だけどよ。住む場所と店を同じにしねぇか?正直、私ら魔物が住む家とか貴族とかが暮らす屋敷レベルじゃないとミックスは入れねぇし…つーか大きめに作らねぇとミックスが入れないしな!それにいつまでも馬小屋暮らしを続けねぇのは正直キツくねぇか?」
リザーナのパーティーは金がない。常に金欠である。前に倒した上位飛竜の角や鱗をギルドで換金して貰い、討伐金等も多少なりは入ったが、食費に大体が消える為、今も4人仲良く馬小屋で暮らしている。シルビアに店を持たせたいエレーナ的にはシルビアと暮らせる様に提案をするが、現実的に資金不足が問題である。異種連邦国周辺の魔物はレベルも高く、討伐レベルが初心者向けの依頼がほぼ無いのが当たり前だ。
草原に生息する 野菜兎や 野菜鼠の討伐ランクは一番したのEランクであるが、それを主食としている魔物がこの周辺には多く生息している。
大蛙Dランクがいて、その上位個体の巨大蛙Cランクが存在する。
更にその蛙を主食に食べる走る竜や 飛竜に 巨大な熊等Bランクの魔物がこの近辺には生息している。
一番下の 野菜兎や野菜鼠の討伐依頼を受けたとしても、そういった上位種に遭遇する確率が高い為、この街の冒険者はレベルが高い実力者が多少はいるようだ。
だが、大半は高額の賞金に目が眩み、一攫千金を夢見て挑み、自滅するパーティーが殆どで、大方は安全である城壁の警護任務に着く為に、城の騎士団試験や護衛団試験を受けるのが普通らしい。受かりさえすれば、衣食住は約束されており、無理にギルドの依頼を受けて危険を犯す必要が無い為である。
「あ、あのね?エレーナ。私はそんなに気にしてないからね?お店は持ちたいけど…その皆と冒険するのは恐いけど、一緒にいるのは楽しいから…」
「なぁ~ミックスよ~!!! シルビアが可哀想だと思わないのか!?何とかなんねぇのか?」
「…討伐金の殆どが、俺やお前の酒代で消えている自覚があるというなら酒を控えろ。大食らいな俺も悪いが…大体の強い魔物は俺とお前で討伐してるんだぞ?」
大柄で大食漢のミックスに酒好きなエレーナとシルビアとリザーナのだけの食費だけでも稼ぐのがやっとの状況の為、魔物が住めるような大きな屋敷という代物を購入する事は夢のまた夢の様な話であった。店を出すにしても資金がまったく集まらない。この辺りの魔物はミックスやエレーナよりもレベルが低いかそこに近い上位飛竜Aクラスがいるだけだ。
下手に竜の根城である北山に脚を踏み入れば間違えなく全滅するだろう。上位飛竜すら恐れる竜が棲むと古くから言い伝えられている為余程の命知らずの冒険者が行く位で誰も生きて戻ってきた者はいない程危険な場所だ。
「でもどーするんだよ?ぶっちゃけここら辺の魔物討伐した稼ぎ分なんて私ら胃袋に消える程度の金にしか何ねぇんだろ?」
「そもそもこのギルドの討伐依頼自体が高額で危険なものばかりで…。普通の人なら暫くは生活に困らない額は出ていますし、それを当たり前に討伐できるお二人が強いだけでは?」
「エレーナとミックスがいるから何とかなってるようなもんだもんね…私がパーティーリーダーだから活躍したいからやっぱりキスして武器になってよ!!」
「子どもみたいに駄々こねるな。そもそもお前自身がアルテミスとかいう女神を怒らせて運が悪いせいで高ランク魔物との遭遇率が高い自覚あるのか?」
大体の強い魔物はリザーナが引き連れてくる。それをミックスとエレーナが倒し、シルビアが魔法で補助する流れが定番である。前にリザーナがルイとサビーヌの剣稽古に付き合っていなかった際に3人で依頼を受けたが高ランク魔物には遭遇しなかった。女神に嘔吐を掛けた事により幸運値が低い為に強力な魔物に襲われやすいのだろう。リザーナはふて腐れてエレーナの胸元に顔を埋めた。すると、そこにゴリガンとステラが現れた。




