魔物の2匹の競争
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ルイがマルセルを説得し、サビーヌを護衛に加え、一行は東の大草原の地にいた。異種連邦国の東側には広大な草原には野菜兎という魔物が多く生息している。草花を主食としている魔物であり人を襲う事はなく、繁殖力も強い為、農家でも飼われている。名前の通り背に様々な野菜を成長させる兎で肉と野菜を同時に収穫出来る魔物らしくない魔物である。そのため他の魔物から獲物として好んで食べる為、強い魔物もその中にはいる。その防衛として作られた城壁をリザーナが破壊した為、昼夜問わず作業をしていたが、資材の関係で修復が追い付かずに住民はいつ魔物が城内に襲撃してくるか不安であった。
「にしてもリザーナにこれ程の破壊力のある魔法が使えたとは…」
「ふふん。丁度いいからこのリザーナ様の真の力を見せてやろう!!」
腰に着けた鞘からサーベルを抜くと、剣先を正面に向け呪文を唱え始める。迷宮では攻撃魔法を使わずに剣術や身体強化の魔法のみを使っていた。あのリザーナが城壁を破壊する魔法を使えるとは想像もつかないが、ミックスも興味があった。剣先に魔力が凝縮され始める。
「…ん?そっちの方角は確か…。り、リザーナ!!!撃つな!!!」
「爆撃波…!!!!」
剣先から放たれた熱の光線が北の山脈に直撃し、爆煙が立ち上がった。城壁を破壊する魔法の為かリザーナはその場で座り込んでしまった。魔力が尽きてしまい暫くは動けなくなってしまうと話を聞いていると、山脈から無数の雄叫びが轟いた。近くにいた作業員にゴリガンが逃げるように指示を出す。北の山脈は飛竜の縄張りであった。そこに攻撃を仕掛けてしまった為、数十体の飛竜が雄叫びを上げて此方に向かってきていた。
「り、リザーナ!!北の山脈にぶっ放すなんてなにやってるんだよ!!?」
「その前の大岩を狙ったんだよ!?けど何か魔力が強くなってて思ったより距離出ちゃって…」
「サビーヌ、説教は後にして下さい!!飛竜が来ますよ…!!!」
縄張りを攻撃され、怒り狂った飛竜の一体が急降下し、リザーナ目掛けて突進してくる。慌てて逃げ出すが飛竜の速さ相手に逃げられる筈がない。するとエレーナが腰に着けていた鞭を取り飛竜に向かって振り下ろすと、首を巻きそのまま締め付け首を落としてしまった。
「ハッハッハー!!このエレーナ様がただ飛ぶだけのトカゲ擬きに負けるかよ!!ミックス、どっちが多く狩れるか勝負しようぜ!!!」
「面白そうだな…俺が負けたらリザーナを好きに着飾らせていいぞ?負ける積もりもないがな!」
ミックスも戦斧を腰のベルトから持ち出すと、突っ込んできた飛竜の頭を叩き切る。エレーナは口笛を吹き楽しそうに笑った。
「ヤベッ!!超楽しい!!リザーナも火の魔法使ってたし、ワタシも得意なヤツ見せてやるぜ!大爆発!!!」
「グギャアァァ…ッ」
エレーナは鞭を振り回し、鞭に魔力を込め放つと空を飛んでいた飛竜に爆撃が当たり地面に墜落した。エレーナは自慢げにミックスに向かって笑顔でピースサインを向ける。
「やるな…だったら俺は残りを撃ち落としてくれる!石弾!!!」
「グギャァァア…ッ」
エレーナに対抗心を燃やし、戦斧の刃を地面に突き刺し、石を弾丸の様に飛ばし、同じく飛行している飛竜の羽根を貫通させ撃ち落とす。エレーナは落ちてきたまだ息のある飛竜を仕留める。どちらが多く狩れるか。どちらが多く仕留めた数が多いのかを競っていた為、ミックスの仕留めそこないを始末していく。ミックスも負けじと飛竜の首を切り落とす。城壁の側に避難した面々はミックスらの強さに唖然とした。複数の飛竜の襲撃など並みの冒険者では太刀打ち出来ない。
下手をしたら国が滅んでしまうほどの力を持っている竜を怒らせるなど自殺行為だ。だが、複数の飛竜を相手に勝負を楽しみ、その圧倒的な強さを持ちまだ余力を残している2匹の魔物の底が知れない。大方の飛竜を討伐し、リザーナが走り寄ってくるが、その上を巨大な影が現れた。飛竜の上位種である上位飛竜が2匹も姿を表したのだ。




