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召喚勇者ヒロシの復讐

作者: ほすてふ

 彼、ヒロシは異世界に召喚された。


 降り立った地は王城。人類と魔王軍との境界を接するサイハテ王国、その謁見の間であった。

 金属の鎧で武装した屈強な兵に囲まれ、守られた王により、ヒロシは異世界から勇者として召喚されたことを知らされた。魔王討伐の使命と、元の世界への送還手段は見つかっていないという事実とともに。

 ヒロシは当然怒りと不満、不安をあらわにした。

 これに対して王に対する無礼をとがめる周囲の塀やその後ろのきらびやかな衣装を身に着けた者たち。しかしそれを一喝し、王が頭を下げた。

 魔王軍の侵攻に対しなすすべもない自分たちは必死であり、伝説にすがるしかすでに方法がなくやむを得ないことだった。勝手なことを言っているのは重々承知であるがどうか力を貸してほしい。送還の方法は必ず見つけて見せる、と。


 なるほど、とヒロシはうなずき、改めて周囲を見回し、これを承諾した。

 こうして、召喚勇者とサイハテ王国は協力関係になった。

 と、この時この場にいたものは一人を除いて思っていた。



 しばらくの間、勇者にこの世界の常識と戦い方を教えるとして、ヒロシに勉強と訓練を施された。

 勇者召喚による影響か、本人も驚くほどの上達を見せる。

 ど素人だった剣技はすぐに騎士団長を追い抜き、元の世界では存在しなかったという魔法も宮廷魔導師長の火力を抜き去った。

 一般常識も瞬く間に吸収し、誰もがこの勇者ヒロシによって世界が救われるのだという希望を抱いた。

 サイハテ王国も用意できる最大の装備や道具、仲間を用意した。

 魔王討伐は並大抵のことでは達成できない。成功率を少しでも上げるため可能な限りのことをやったと、国王は自信を持って言えた。


 そして勇者ヒロシ旅立ちの前日、勇者ヒロシが姿をくらました。




「必死なら、二度と戻れない場所から拉致して命がけの戦いを強要してもいいんですよね」


 一年後。

 再び見えた勇者ヒロシは、国王にそう告げた。


「ここは魔王城のさらに向こう、古代異次元戦争の戦場後。異界のモンスターが出現すし、その先は異界に通じるともいわれている場所ですよ。まあその異界は僕のいた世界じゃあなかったんですけど、まあそれはおいといて」


 国王は拉致されていた。

 ほかに国王が信頼する臣下たち、そして近衛兵たちも気を失って近くに倒れている。


「ここの魔物と戦えるならたぶん魔王城の兵とも戦えます。頑張って修行して魔王を倒してください。僕も必死なんで。わかります? 必死。僕も勇者とか言われても結局はただの拉致された一般人なんでね、死にたくないので。必死なんですよ。魔王とかいうめちゃくちゃ強い奴と戦っても勝てないかもしれないですよね。っていうかまあ勝てないですよ。だから僕を、勇者を呼んだんですよねあなたたち。きらびやかな鎧に包まれた兵隊さんがいっぱいいたのにね。あなた方が魔王を倒すか、魔王に倒されれば僕は魔王と戦わなくていいじゃないですか。魔王と戦う理由はあなた方に強要されたというそれだけの理由なわけですし。この世界の人類とか関係ないんですよね僕には。なら強いほうにつくほうがいいじゃないですか。ほっとけぼあなた方滅ぼされるんですから後腐れもないですしね」


「裏切ったのか!?」


「裏切ったも何も初めから味方じゃないですし。誘拐された第三者ですよね。誘拐犯が何言ってるんです。思考を制限する魔法はお城にいる間に解除しましたしね。周到ですよね。勇者召喚の力を甘く見てたのはいただけませんが。一応とはいえ勇者が従わない可能性を考慮して準備してたのはつまり勇者は味方じゃないとわかってたってことですよね。送還手段を見つけるとか言ってたのもまもる気なかったようですし。お互い味方じゃないと思ってたのに何が裏切りになるんです?」


「なぜわざわざ生かしてこのようなことを」


「意趣返しですよ。あるいは復讐問答無用で殺すのは良心がとがめるのであなた方の流儀でやらせてもらいました。必死なら帰れば居場所に拉致して命がけの戦いを強要してもいいんですよね。すみませんね。勇者ごめんなさい」


 雑に頭を下げた後、じゃあ頑張ってくださいね、と勇者ヒロシは魔法を使って去っていった。

 こうしてサイハテ王国は首脳部を失い、その後数日のうちに滅んだ。

 サイハテ王国に魔王軍との前線を任せ安穏としていた背後の人類国家の多くも勢いに任せて滅ぼされ、前線は再構築されるまでに人類の領域は大きく削り取られることになった。

 勇者ヒロシは魔王軍のオブザーバーとして細々と活動し、人としての寿命で亡くなった。


 そしてさらに未来、また勇者償還を行う国が現れたが、その顛末は別のお話。


 おしまい。

思い付きで書きました。

今後ともよろしくお願いいたします。

ほすてふ。

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