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迷宮探索者の憂鬱  作者: 叢咲ほのを
Phase 1 生まれ変わってもブラック会社に勤めていた迷宮探索者の憂鬱
31/105

第31話 一週間経過

「≪火球≫!≪火球≫!≪火球≫!≪火球≫!……」


「6、7、8、9……」


「≪火球≫!!!」


「10……」


「どうスか師匠!」


「こいつ、一週間で火球10発撃てるようになりおった……」


 迷宮内で火球の魔法を10回連続で撃ったロキが、マルコの方を向いてドヤ顔を決めると、3~4発しか撃てなかったロキがたった一週間でここまで成長したことにマルコは唖然としていた。

 アルマの魔力無限回復という反則技(チート)によって、ここ一週間魔力回復薬を使わずに火球を使いまくったロキの保有魔力が増加しないはずはなかった。

 それを知ってか、ロキの努力を素直に褒める気になれないマルコは、複雑な表情を顔に浮かべていた。


「さあ師匠、これで次の魔法を教えてくれるんだよね!」


「う、ううむ……。それでは次は中級魔法へ行こうか。それじゃココロ、魔物ができるだけたくさんいる場所へ案内を頼めるか?」


「うん。何匹くらいいるところがいい?」


「そうじゃな、多ければ多いほど良いぞ」


「分かった!」


 そう言われ、嬉々としてパーティーの先頭を進むココロ。

 魔物を見つける勘の鋭いココロは、罠や隠し通路などを見つける勘も鋭いことが分かり、今ではロキよりも断然能力の高い斥候として先頭を任せられるようになっていた。

 ただし戦闘能力は無いに等しく、魔物が現れたらその攻撃範囲に入らないよう、アルマと二人で後方で避難をしている。


「あそこの方にたくさんいるよ」


 少し歩いた先にあったのは、広間になっている部屋の入口だった。

 ロキがその入り口の中を覗くと、「うおっ!」という声が漏れる。

 そこにはケイブスパイダーの群れがいた。


「巣か?」


「卵がかえったのかもしれんな」


 マルコに言われてよく見れば、一体一体のサイズはそれほど大きくはなかった。

 だが、迷宮内の魔物は何もない空間から湧き出る(ポップする)と思っていたため、不思議に思ったロキは質問する。


「迷宮の魔物って卵から産まれるの?」


「いろんなパターンがあるみたいじゃぞ」


「へえー、そうなんだ……」


「そんなことより良く見ておけ。≪火炎柱(ファイヤブレイズ)≫!」


「うおっ!」


 唐突にマルコが魔法を唱えた。

 その広間にいた全てのケイブスパイダーの足元から火柱が立ち上がる。その光景は非常に派手なものだった。

 数が多いだけで一体一体の強さは大したことのない小型のケイブスパイダーは、マルコの全体攻撃の魔法の一撃で全滅し、辺りには魔力結晶だけが残された。


「すげえ!」


「これが全体攻撃魔法じゃ。魔物一体への威力は大したことないが、数が多い場合はこのように重宝する。剣で一体ずつ倒していく労力を考えたら確実に習得しておきたい魔法じゃ」


「すげー!ココロ、また魔物探して!」


「分かった!」


「あっ、こら!呪文を唱えるだけで使えるわけじゃない!その場にいる魔物を全て認識して、それぞれの魔物から炎が立ちのぼるイメージを思い浮かべて……、こら!説明を聞け!」


 マルコが魔法の使い方をレクチャーするも、話も聞かずに先へと進むココロとロキ。

 怒るマルコと笑顔を浮かべたアルマが後を追う。


「あっちに三匹いる」


 ココロが通路の先を指さす。

 ロキが目を凝らすと、天井に張り付いた大コウモリの姿に気づく。


「いくぞ!」


「こら!炎の精霊の存在を思い浮かべて、力を貸してほしいと心の中で……」


「≪火炎柱(ファイヤブレイズ)≫!」


「説明を聞け!」


 マルコの声に耳を貸さないロキは、右手を掲げ魔力を練ると呪文を唱えた。

 直後、空中の大コウモリを炎が包む。

 三体は燃え尽きて地に落ちると、その姿は魔力結晶へと変えた。


「なんで見ただけで使えるんじゃ!」


 マルコの説明を詳しく聞かず、見ただけで使ってみせたロキにマルコは怒る。

 そう言われてロキは少し考えた。


「そういや思ったんだけど、精霊とか言われてもよく分かんなくて、それよりも周囲の酸素が集まって燃焼が大きくなるイメージしてみたんだけど、うまくいったんだよね。前に師匠が魔法はイメージが大切だって説明してくれたじゃん?」


「周囲の酸素が集まる?どういうことじゃ?」


「ああ、それ前世の知識なんだけど、俺前世の知識でイメージすると魔法も使いやすいみたい」


「前世……???」


「マルコさん、ロキさんは前世では40歳だったっていう設定らしいんです」


「アルマおまえ、信じてないな!」


「幼馴染にもいましたよ。眼帯をして右目に宿った魔力がうずくとか、世界のどこかにある聖剣を引き抜いたときに俺の物語が始まるとか言ってる子が。10代半ばの男の子って、そういう変な設定を考えちゃうらしいですよ」


「おまえ、俺の事を中二病だと思ってたのか?!」


「ふむ……よく分からんが、その中二病という病気にかかっている若者は魔法の習得が早いのか?」


「言葉の意味は分かりませんが、多分そうです!」


「こら!」


 ロキが中二病というのを全肯定するアルマにロキは怒るが、マルコはなぜかそれで納得していた。


「俺の知識は科学だよ!おまえら科学を洗脳してやろうか?!神様とか魔法とか全否定だからな!」


「全否定って、魔法使いのくせに魔法を否定するのか?」


「この世界には魔法があるんだよ!何なんだよ魔法って!」


「とりあえずロキ、今教えているのは炎系統の魔法だが、風系統、水系統も一系統ずつ順番に教えてゆく。同じ火球でも集中力や魔力の込め方で全然変わる。丁寧に魔法を操ることを覚えてゆくように」


「話そらされたー!俺は中二病じゃないー!」


 迷宮内にロキの声が響いていた。


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