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アンドロイドの受精
これはアンドロイドを労働者として生産し、国民として生活させる政策の実現に向けて始まったプロジェクトの経過報告である。
もし、"ロボットが人間になりたと思っている"なんて聞くと、
あなたはやはり、ありふれた陳腐な物語だと思うだろうか。
しかし私は考えることを止められそうにもない。
例えばもし、人間の"本能"だけを与えられたロボットが誕生したとすると、
それはやはり、産声を上げようとするのだろうか...。
2120年―-。
人類は自らの遺伝子情報の解析に成功し、同時に数値ではない5次元物質をグラフィック上で表現させることにより"人を人たらしめる"情報群の可視化に成功した。
依然として、それがなにであるのか。何故その様相を表すのかの研究は終わる所を見せないが、
少なくともそれをプログラムの演算過程に利用することで、答え無き問いに対しエラー以外の返答を導き出させた。
それが即ち、第1次AI革命であり、
君が受精した瞬間だ...。
私はディスプレイに映る黒いボックス内に一行のコードを書き加え、らしくもなく『祈り』を込めながら実行させた。






