転生先は悪役令嬢ですのよ!オホホホ! 4
「・・・・・。」
「・・・・・。」
二人きりにさせられてどのくらい経っただろうか。
「若い二人なのだから散歩にでも行ってらっしゃいな。」と送り出されたのはいいが、ゴールはどこだ。
行く当てもなくララが無言で私の手を引く。
握られた手の熱さとじわりとした湿気にララも緊張しているのがこちらにも伝わってくる。
何を話せば良いのやら、さっぱりわからない。
たまにこちらをチラチラとララが見てくるのだが目が合うとパッと逸らされ速足になる。
そして落ち着いた頃にまたチラチラとこちらを見ての繰り返し。
初デート?いいえ、初デートというよりもこれはまるでお見合いみたいだわ、とふと前世で見たドラマを思い出した。
そうそう、たしかお節介おばさんとおじさんが仲人するのよね。
そういえばさっきの母とハナ様の言葉もまるっきりそれと同じだったわ。
あのドラマではどんな話をしていたかしら。
たしかご趣味とかお仕事とか?
だけど私達はお見合いじゃないわね。
そんなことを考えているとララは私が花を見つめているのかと思ったのか「あ、あれは遠い南国の花、ラーラっていうの。」とポツリと呟いた。
緋色と黄色のグラデーションが鮮やかな小花はラーラというらしい。
へえ、と言えばララはラーラを手折りミチルへ渡した。
「ラーラ?ララ様とお名前が似ていますわね。とっても綺麗な花ですわ。」
「・・・・あ、え、うん。」
「それにとっても甘い良い香りがする、南国のものだからかしら。」
南国といえばマンゴー、パイナップル、バナナ!
サンバ!フランダンス!アミーゴ!
何だか色々混ざってしまったけれど、この世界にもあるのかしら。
「きれー・・・・。」
ララがうっとりとした声を漏らした。
「ララ様?」
「あーん、良いわぁ、良いわぁ!
美しい少女が花と戯れる姿って良いわぁ!
ちょっともう少し此方に寄って、そうよ、そう!
花びらに唇を寄せてみせて!
ああん!さいっこう!傑作だわ、良いわぁ!
お花の妖精さんみたい、とっても綺麗。
お父さまに見せて頂いた絵の女神様よりも綺麗だわ。
パーフェクトで鼻血が出そう!」
呆気に取られてしまった。
急にどうした。
モジモジ少女がハァハァ!変態少女になってしまった。
はぁはぁと鼻息を荒くしながらララが興奮していると、たらりと本当に鼻から真っ赤な血筋が流れてきた。
私は咄嗟にポケットから小石を包んでいたハンカチを取り出して、小石をポイっと投げ捨ててハンカチを渡すとララはハッとして鼻にハンカチを当てた。
どうやらララは機嫌がよくなったり興奮すると饒舌になるようだ。
「・・・お、お見苦しいところを、」
「い、いえ。ただちょっと驚きましたわ。」
私達は長椅子に座っていた。
横に座るララは顔を赤らめながらもミチルの手を放そうとはしないので、しょうがなくそのまま話すことにした。
だがララはそれに味をしめたのか指先をぎゅうっと絡めて恋人繋ぎにしてきた。
「ら、ララ様?」
思わず最初の「ら」が裏返って変な声になってしまった。
「ララって呼んで。」
「え、でも、ララ様は姫ですので。それはちょっと・・・身分が違いますし。」
「いいの、あなたにはララって呼んで欲しいの。
様をつけたら返事しないもん。」
「ララ様・・・」
「・・・・・・。」
ツンっとそっぽを向きながらぎゅうっと握る力が強くなる。
「お願いです、機嫌直してくださいませ。
ララ様、姫様を呼び捨てで呼ぶなど私には出来ません。
もし周りの者が見れば私は不敬だと言われ、姫様は侮られていると噂になりかねないのですよ。
お互いの為に良くありません。」
「・・・二人だけの時なら良いってことよね。」
「えー、まぁ。」
「それじゃあ二人だけの時はララって呼ぶって約束してね。
ふふふ、私達二人だけの秘め事って良いわね。」
あれ?ララの相手って私だったけ?
一瞬そう勘違いしてしまったような錯覚に陥るがふるふると頭を振る。
違うわな、ララの相手は王子様の側近の騎士だった気がする。
ヒロインが騎士様ルートにいくと意地の悪いことをするのがララだ。
「ねー、私ね、あなたのこと好きよ。
優しいし美しいし。
それにとっても良い香りがする。
ラーラの甘い香りと混ざると本当に香しい。
きっと相性が良いんだわ。
ラーラってね私の名前の由来なの。名前が似ているでしょう?
私とミチルも相性が良いってことかしら。
きっとそうよ、ねえ、ミチルもそう思うでしょう?
ふふふ、このままずっと一緒にいれたら良いのに。」
・・・違うよね?