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死にたがりの唄

作者: 榎木津 穂積

 今日は空の月が笑った

 昨日は雲の切れ間が泣いていた

 明日の風は何処へ行く

 明日の僕は何処へ行く


 風が冷たい秋の夜。半壊した教会から、歌声のようなものが聞こえる。その声は、絶望の底で希望を探しているような声色だった。


「今日は、こっちらへんを壊そうかな…。」


 襤褸きれのような服を着たアルビノの少年が、半壊している教会の外壁を壊し始めた。


 空が躍ったカッタッタ

 雲が歌ったラッタッタ

 風が嫌ったパッパッパ

 僕を殺してタッタッタ


 少年が外壁を壊す音が、ガラガラカラカラと響いている。


「ふぅ、これくらいでいいかな。」


 瓦礫が少年の腰辺りまで溜まった時、少年は、壁を壊す手を止めた。見上げた空には、数えきれない程の星が瞬き、月が細く笑っていた。


「はぁ、また今日も死ねなかったな。」


「神様。もしいるのなら、この教会を壊しきってしまう前に、僕を殺して下さい。どうか、お願いします。」


 流れ星が、空に光る傷をつけた。それを見て、少年は神様に願った。


「自分で死ねない僕を、この教会を壊す悪い僕を、殺して下さい。」


 今日は空の月が笑った

 昨日は雲の切れ間が泣いていた

 明日の風は何処へ行く

 明日の僕は何処へ行く

 

 空が躍ったカッタッタ

 雲が歌ったラッタッタ

 風が嫌ったパッパッパ

 僕を殺してタッタッタ


 少年の歌声は、今日も続いた。


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