オカマで乙女なヒールマジシャン
「だ、誰ですか貴方は!?」
そこに立っていたのはなかなかにゴツい体格をしたオカマっぽい男だった。年齢は30くらいだろうか。
180cmのゴツい体格、坊主頭に青々としたあごひげ、メイクにより少し紅潮している頬に赤い唇。
そんな男を見てリスキィは警戒し臨戦体勢に入っていた。
「安心して~ん。ワタシこう見えてもヒールマジシャンなのよん
若い男が困っていたら助けるのがワタシの主義なの」
「ヒールマジシャン!? 本当ですか!! かなり怪しいですが今は時間がありません。どうかタケルさんをお助け下さい」
リスキィは藁にもすがる思いでお願いした。
「まあ話が分かる良い娘ね。ワタシに任せなさい。必ずその男の子を助けてあげるわ」
そう言うとオカマ男はおもむろにタケルの体を触りだした。
「まあ若い男の子の身体♡ 素晴らしいわ~♡♡ これなら何時間でも触っていられそうね」
ふざけているように見えたオカマ男にリスキィが文句を言おうとした瞬間オカマ男の動きが止まったのでリスキィは文句を言うのを止めた。
(なるほどね~ 状態は把握したわぁ。かなり重症ね。これはあれを使うしか無いわね。ドキドキするわ♡)
「ああ。久しぶりに若い男の子を感じることが出来るわぁ♡」
そう言うとオカマ男はタケルに覆い被さったそして
ぶっちゅううう♡ 熱い接吻を交わした
思わずリスキィは顔を背ける
(タケルさん本当にすみません。)
「天使の息吹き♡」
オカマ男はタケルの口に思い切り息を吹き込んだ。するとボロボロだったタケルの体がみるみると治っていく。
そして、ドクンドクン...と心臓が動き始めた。治癒は終わったかに見えたがオカマ男はタケルの唇を離さない。
!?
タケルの目が大きく見開いた。まだ意識は朦朧としている
ん? なんだこの唇の感触は 少し柔らかいな
結構気持ちいい……?
は!? ちょなんだよこれ!!
「うわあああ!」
オエエェェ!!!
意識が戻りオカマ男と接吻を交わしていることに気付いたタケルは豪快に吐いた。それはもう恐ろしい量だった。生涯で一番の量だろう
「ど、どういうことだよこれは……なんで俺は見知らぬ男とキスしてるんだ……」
タケルは涙目で呟いた。
「あら~ 元気になったみたいね 良かったわね。タ・ケ・ル・く・ん♡」
「あんた誰なんだよ! なんでこうなったか説明してくれ。理由によっては俺はお前を許さないぞ」
「あらあら物騒ね~。命の恩人に対してその言い草は無いんじゃないかしら? ねえそこのお嬢ちゃん?」
「は、はい。命の恩人と言うのは本当です。この方はタケルさんが死にかけていたところを救ってくれたんです」
「俺が死にかけた? ああ !思い出したぞ。リスキィお前何で俺を攻撃したんだよ!?」
「すみません。実はワタシいきなり魔法を制御出来なくなっちゃう時があるんです。急に暴走しちゃうので自分でも原因が分からなくて。運が悪いと一発魔法をうつだけでも暴走しちゃうんですよ」
リスキィはエヘヘと苦笑いを浮かべながら答えた。
「そうだったのかあ、ならしょうがないな。ってなるかボケ! アホ! オタンコナス!!何でそれを先に言わないんだよ! お陰で危うく死にかけたじゃねえか!!!」
「本当にすみませんでしたぁ! 魔法をうつのが楽しくて。更にタケルさんに褒められてつい調子に乗っちゃいました……」
「はあ。まあいいや。次からどうするか対策を考えないとな。無闇に魔法をうつのはもう禁止な。なるべくモンスターは避けて冒険しよう」
「はい……」
リスキィはしょんぼりしながら力なく答えた。
しょんぼりしているのはタケルも同様だった。
はあー。無闇に魔法を使うなとは言ったけどリスキィの魔法抜きでやっていくのはキツいしこれからどうするかな……楽に冒険出来ると思ってたんだけどなぁトホホ。
「状況が分かったかしら? タケルくん♡」
タケルとリスキィとのやり取りが終わったと見るやすぐにオカマ男が口を開いた。
「あ、ああ良く分かったよ。さっきのことは謝る悪かった。そして命を救ってくれて本当にありがとう」
タケルは一礼した。
「んまあ! 素直で良い子じゃない! お姉さんますますタケルくんのこと好きになっちゃうわあ♡」
「あ、あはは。それはそうとお兄さん……じゃなくてお姉さんの名前を聞きたいんだけど」
タケルはドン引きしているのを必死で隠しながら質問した。
本当はすぐにでも逃げたかったが流石に名前を聞かないまま立ち去るのは失礼だろうと思ったからだった。
「やっと聞いてくれたわねぇ。ワタシは体は男、心は立派なお・と・め♡ 名前はブラウンよ。よろしくねぇ」
「ブラウンさん本当にありがとうございました。じゃあ俺たち先を急ぐので。おい行くぞリスキィ」
タケルは逃げるようにその場を立ち去ろうした。
「あ、ちょっと待ってぇ。これからの冒険また死にかけることもあるかもしれないでしょお。タケルくんにはこれを渡しておくわぁ」
ブラウンはタケルにボタン式のスイッチを渡した
「何ですかこれ?」
「ワタシを呼べるスイッチよ。これを押せばワタシがいつでもタケルくんの元に駆けつけるから困ったら押してねぇ。ワタシはヒールマジシャンだから普通のヒーラーでは使えないユニークな回復魔法を使えるの。その中でもワタシほどの蘇生魔法を使えるのは極々少数なのよ。タケルくんも死にたくはないでしょお?」
うっ。確かに死にたくはない。それにただでさえ普通に冒険するだけでも危険なのにリスキィと一緒だからいつ死の危険が迫ってきてもおかしくないし……
このスイッチはありがたく頂いておくか。
ブラウンさんとのキスは死ぬほど嫌だけど……
「ありがとう。なにかあったら呼ばさせてもらうよ。所で1つ聞きたいんだが、キスをしないで蘇生させる方法ってないんだよな?」
タケルはダメ元で聞いてみた。
「無いわよぉ。ワタシの使う魔法はユニークだからねぇ。他の回復魔法を使うときにも相手と触れあいながらしか使えないわ。触れあう場所は魔法によって変わっていくけどね。後はワタシのポリシーとして若い男の子にしか使わないことにしてるの。タケルくんはこんなに頼りになるお姉さんと出会えて本当にラッキーだったわねぇ」
やっぱりそうだよな……
てか回復魔法の種類によって触る場所が変わるのか。
俺はブラウンさんと手を繋いだり抱き合ったりしている場面を想像してまた吐きそうになった……
「わ、分かった。じゃあまたなにかあったらよろしく。じゃあな」
「ブラウンさん。ありがとうございました。また何かありましたらよろしくお願いします。」
「ええ勿論よ。遠慮なく呼んでねぇ♡ じゃあねタ・ケ・ル・く・ん♡♡」
ブラウンはタケルたちが見えなくなるまで手を降り続けた。
「なあリスキィ。俺は普通のヒーラーを探して仲間にしたいんだがどう思う?」
「もちろん大賛成ですよ。蘇生は出来なくても良いのでせめて普通の回復魔法を使える人がほしいですね」
「だよな。お前もそう思ってくれてて安心したよ」
「そりゃあ、ピンチの度にブラウンさんを呼ぶなんて恐怖でしかないですからね……」
「ああ怖くて仕方ないよ……後、これは完全に俺の願望なんだがやっぱり回復魔法は可愛い女の子にかけてほしいしな」
こうして二人は【普通の】ヒーラーを求めて再び冒険を開始した。
ヒーラーを仲間にすることが絶望的な状況であることも知らずに……