死死死死死
「はあー。暇だなー 冒険者って危険な職業って聞いてたけど全然大したこと無いじゃん」
俺たちは出発してから30分ほどただひたすらに歩いていた。
凶悪なモンスターが出てくるということもなく至極平和だ。
「油断は禁物ですよ! この国は街の中は基本的に平和ですが外にはモンスターがたくさんいるんです。いつ襲われても良いように心の準備をしていてください」
「へいへい。大体よお、襲われたとしてもリスキィの黒魔法があれば無敵だろ?」
「ま、まあそうですけど。わたしの黒魔法で倒せないモンスターなぞいません!」
リスキィは腕組みしながらフフンと鼻息をならした
「そんじゃまあ気楽に行」
ンモォー!!!
!?
なんだ!? 何かの鳴き声か? こっちに向かってくる! やばい!!鳴き声に気付いた時にはもう遅かった。5体の巨大なモンスターに囲まれてしまった。
恐らく五メートルほどはあるんじゃないかこいつら……
「おい!? なんだよこの巨大な牛みたいなモンスターたちは。リスキィは知ってるか?」
「ええ。白色の巨大な体に黒色の斑点。この牛型の巨大モンスターはキングギュウギュウに間違いありません!」
キングギュウギュウ!? ぷぷカッコ悪い名前。てか二足歩行してる牛なんて初めて見たよ。
「タケルさん!気を付けて下さい!! キングギュウギュウは格闘技を使いますので。私が魔法を放つまでの時間どうにか耐えて下さい!!」
「わ、分かった! 出来るだけ早くしてくれよ! あっ、さっきの魔法は危ないから無しな!!」 「了解です!」
ブオン!! 俺を目掛けていきなり強烈な蹴りが飛んでくる。あの巨体でなんつー強烈で速い蹴りだ。
俺はすんでのところでかわす。昔から逃げたり避けたりすることだけは自信があるからな。とはいえ5体を相手にするには限界があった。リスキィはひょいひょい避けながら魔法を詠唱している凄い奴だなほんと……
キングギュウギュウの強烈なパンチとキックの猛攻に俺は限界を迎えていた。もういつ攻撃が当たってもおかしくない。俺の防御力じゃイチコロだろうな。
仕方ない。本当は使いたくないんだが奥の手だ
「クイック!!!」
俺はその名の通り素早さを上げることの出来る魔法を自らにかけた
よし! 明らかにキングギュウギュウの動きを上回っている。
しかしこの魔法には弱点がある。
1分しか持たないのだ。改めて自分の魔力の無さに涙が出そうだぜ......
「リスキィまだか! 早くしてくれー!!」
「たまりましたよ!落ちろ黒雷ダークライトニング!!」
ピシャッどーん!
リスキィがそう叫ぶと黒きいかずちが雷鳴と共にキングギュウギュウの巨体を正確に捉えた。
キングギュウギュウは真っ黒焦げだ。
「力は加減しておきました。命に支障は無いでしょうから早く行きなさい!」
ンモォー………
キングギュウギュウ達はさっきまでの元気が嘘のように力ない声で鳴きながら一目散に逃げて行った。
「タケルさん! やりましたね!!」と言いながらリスキィはタケルの方を振り向いた。
!?
「タケルさん! どうしたんですか! 大丈夫ですか!?」
「うぎゃあああ痛えー!!!」
タケルは全身をつっていた。クイックの弊害でタケルの貧弱な肉体は悲鳴をあげているのだ。
「タケルさん! タケルさん! しっかりしてください!!!」
そのまま1分が過ぎた頃ようやくタケルの体から痛みは消えていた
「ハハハ、心配かけたな。俺って魔力も肉体も貧弱だからさ、クイックを使ったら同じ時間全身がつっちゃうんだよ。つまり1分クイックを使える俺は同じ1分激痛に耐えないといけない訳だ……しかも使えるのは1日に1回だけだし」
まあそもそも何回も使いたくないのだが……
「そ、そうだったんですか。お役に立てずすみません。わたしはクイックのような補助魔法や回復魔法は全く使えないもので」
「何言ってんだよ。リスキィのせいじゃないしそもそもリスキィがいなければあの怪物にやられてただろ? ホントお前は頼りになる最高の仲間だよ」
「い、いやーそれほどでもないですよ~。そんなに褒められたって嬉しく無いんですからね」ニヤニヤ
「……凄く嬉しそうなのが顔に出てるぞ」
「とにかくモンスターの討伐はわたしに任せて下さい。わたしがどんなモンスターでも一掃してみせますから!!!」
すっかりリスキィは調子に乗っているようだ。
「おう! 頼りにしてるぜ偉大なる黒魔道師リスキィ様!」
「もう、偉大なる黒魔道師様だなんて。そんなに褒めても何も出ないんですからね! さあまだまだわたしの凄いところを見せますよ。行きましょう!!!」
「おう!」
(ししししし。ちょろいぜ。これで俺の冒険は安全イージーモード間違いなしだな)
それからというもの俺とリスキィの二人は躍進を続けた。様々なモンスターに遭遇したが全て苦もなく一掃することに成功していた。まあ俺は攻撃を避けてるだけだが。
幸いキングギュウギュウより強いモンスターには遭遇せずクイックを使えない俺でも無事に済んでいた。
「はっはっは! 俺たちは無敵だな! なあリスキィ!!」
「その通りです! わたしたちに怖いものなんてありません。どんどん進みましょう!!」
俺たちはすっかり調子に乗っていた。もう冒険は安泰だと本気で思っていたんだあの事件が起こるまではな……
次に出会ったモンスターを討伐した直後その事件は起こった。
「スノーフローズン!」
モンスターは凍ってしまい動かない。俺たちの勝利だ!!
「やったなリスキィ!」
「マ、マズイです。タケルさん。力の暴走が……逃げて下さいは……やく」
「何言ってんだよ。逃げろってどういうこ」
どっかーん!!!
「ちょっ!? おい! 何で魔法をうってんだよ!! やめろリスキィ!」
「タケルしゃーん! 逃げて~止まりゃなーい!」
リスキィの杖からは無数の魔法が放たれていた。
加減なしの魔法の攻撃範囲はとてつもなく広かった。
「くそ! どうなってんだ!! しかも詠唱無しでうってるじゃねえか。やべー逃げ切れねえ! やめてくれリスキィーー!!!!!」
もう何を言っても暴走するリスキィの耳には届かなかった。
ズドーン!!!!!
「うぎゃああああー!!!」
タケルの体に魔法が直撃した。一発で気絶してしまう。その後もリスキィの無差別の魔法が直撃しタケルの体はボロボロになった。
その攻撃は約10分間もの間続いたのであった。
「は!?」リスキィはようやく我にかえった。
「タ、タケルさん!」急いでタケルの元へ向かう。
タケルの元へ着くとリスキィはすぐにタケルの心臓に手を当てた。
「う、動いていない……嘘でしょう? タケルさんタケルさーん!目を覚まして下さい! うわああーん!!!」
回復魔法の使えないリスキィは心臓が止まってしまったタケルに対しどうしてあげれば良いのか分からず泣きわめいてしまった。
なんだここは? 綺麗な川だな。あれ?? 向こうにいるのは俺が大好きだったおばあちゃんじゃないか! おばあちゃんは亡くなってるはずなのにどうしてだ? そうか! これは夢なんだ!!!
夢とはいえおばあちゃんに久しぶりに会えるのは嬉しいもんだなぁ
手招きしてくれてるし早く行かないと。
「おばあちゃーん!」
タケルがおばあちゃんの元へ走り出したその時だった。
???「そこのお嬢ちゃあんワタシに任せてぇん♡ その男の子ワタシが、た・す・け・て・あ・げ・る♡」