ムフフフフ
「この世界のどこかに眠っていると言われている大秘宝【ハゲの秘薬】を見つけ出し私の元に持ってくることです!!!
これは代々国王に受け継がれる情報で王自身が禿げた時のみ公開していいと言われている情報なのです。残念ながら私は禿げてしまった醜くなってしまったのです……ですが私はまたフサフサに戻りたい! そこで国民の皆様に協力してもらいたい。冒険者となってハゲの秘薬を見つけ出してほしいのです! もちろん冒険に出るための資金や物資はある程度負担します。冒険に出ても良いという方は明日の正午王宮に集まって下さい。詳しいことはそこでお話しします。」
ハゲの秘薬!? なんだそりゃ? てか冒険者ってめちゃくちゃ危険て言われてる仕事じゃん! でもちょっと興味あんだよなー 冒険って危険だけど楽しそうだし どうすっかなー
なんて考えてると彼女から声をかけられた。
「ねえタケル。とりあえず坊主にしようよ。うっかり3日経っちゃったら大変だし」
うっ 坊主に? 俺が彼女の目の前で?あの冴えない姿に逆戻りしろっていうのかよ……
「アハハ……でもさ俺が坊主にしたらめっちゃダサくなるかもよ?」全力の笑顔を作りなんとか答える。
「タケルはカッコいいから大丈夫だよ! 私、実はカッティングの魔法ちょっとだけ使えるの! 坊主にするくらいなら楽勝よ」
俺は、彼氏が坊主になるのを嫌がるどころか明るく話してくれる彼女の姿に安心感を覚えていた。
この娘なら髪型なんてもので俺を嫌いになったりしない。そう確信した。
「分かったよ! 坊主にする! じゃあ俺ん家に行こうぜ」
「そうだね。じゃあ行こうか」
俺はさりげなく自宅に誘導出来たことに内心ガッツポーズしていた。正直ムフフな展開を妄想して喜んでいる。
俺はこの娘と付き合って結婚して幸せに暮らせれば坊主でも良いかもしれないとさえ思い始めていた。自分でも思うが単純なやつだな俺は。
数分後自宅に着いた俺は早速カッティングをしてもらうことにした。
彼女は器用に手をかざし魔法で俺の頭を刈っていく。
わずか5分ほどでその作業は終わった。
「カッティングありがとね! どう? 坊主似合うかな?」
自慢の髪を刈られ内心ショックもあったが、出来るだけ明るく努め彼女の顔を見つめながら言った。
「う、うん。とっても似合ってるよ~アハハ」
ん?心なしか顔が引きつってる気がするが気のせいだよな……
「俺、ほんとは不安だったんだ。坊主にしたら嫌われちゃうんじゃないかって。でも明るく話してくれる君に救われたよ。君のことが大好きだ」
俺はムフフな展開に持っていきたい一心でそういうムードを作ろうと必死だった。しかし……
「ごめんタケルくん こんなのタケルくんじゃないよぉーーー!!もう私のことは忘れて!!!!」
そう言うと正に電光石火の如く彼女は俺の家を出ていってしまった
ポカーンとただそこに佇む俺。思考は停止していた。
これは現実なのか? もしかして夢? そうだ今日の出来事はあまりにもおかしい。これはきっと夢だ!
そう思いほっぺたをつねってみた。
……痛い何度つねっても同じだ。痛みは消えるどころか増していくばかりだった。
これは夢じゃないんだと気付いた。その瞬間俺は号泣していた。
そして同時に王への怒りが込み上げていた。
自分が禿げたからといってこんな糞みたいな法を作りやがって!
見とけよ絶対に俺がハゲの秘薬を見つけ出してやる! そしてまたモテモテライフを復活させてやるんだぁ!
この日タケルは冒険者としてハゲの秘薬を探す旅に出ることを決意したのだった。