インターミッション。
久々に投稿したらかなり短くてすみません。
次回、最終回になります。
「遊里。」
私は玄関を入ると奥から呼ばれた。
3週間ぶりの自宅マンション、呼ぶのは冴子。
美人チェリストの小日向冴子であり、私の恋人でもある。
「なによ、帰って来て早々・・・」
探すも、リビングには居なかった。
どこなのよ。
「冴子?」
「こっちよ、遊里。」
キッチンの方から声がする。
私はのれんを手でかきわけると冴子が居た。
テーブルにはケーキ?
パン!
大きな音がして、何かが弾けた。
「冴子?!」
「ハッピーバースデー。」
冴子の口からそう聞いた。
誕生日?! 私の?
もう誕生日なんて祝っている年代じゃないのに、冴子だってこんなことされたら悪態をつくクセに。
「・・・何のきまぐれなの?」
「うれしくないの?」
「いつもしないくせに、何かあると勘ぐってしまうじゃない。」
嬉しいけど、反対に何かあると思ってしまう。
「何もないわよ、純粋に祝ってるのに。」
ぷっとムクレる冴子。
「それならいいわ、安心して喜べる。」
私はそこでやっと笑えた。
「じゃ、吹き消して年齢分のろうそく。」
「ずいぶんあるわね、そしてよく乗っけたわ。」
ホールのケーキの上にろうそくがところ狭しと突き刺さっている、一気に消すのは難しいかもしれない。
息を大きく吸い込み、私はろうそくの炎を吹き消した。
さすがに2回、かかったけれど仕方がないだろうと思う。
何十本ものろうそくを一気に吹き消すのはよほどの肺活量がないと出来ない。
「よくできました。」
冴子はそういうと私の腕を引いてキスをした。
唇はすぐに離れない。
私も久しぶりの冴子とのキスなので自分から離さなかった。
「・・・ケーキより、冴子の方がいいわ。」
やっとのことで離れた唇で私は言う。
「ま、手作りじゃないしね、このケーキ。」
冴子も笑って私の両頬を挟む。
「その気?」
「その気。だって3週間ぶりに帰ってきたんだもの。」
「寂しかった?」
「まさか。」
「・・・嘘つき、冴子。」
表情からは伺えないけど、こんなことするくらいだもの寂しかったに違いない(笑)。
私は冴子の腰に手を回し、引き寄せた。
「のびのび出来たわ、お陰さまで。」
冴子の手は両頬から私の首に掛かる。
私たちの身体は更に寄ったので、互いの付けている香水が香った。
外国のキツい香りから、ふんわりと香る繊細な日本の香水に心が安らぐ。
「寂しかった、って正直に言ったらいいのに素直じゃないんだから。」
「寂しくなかったわよ、全然。」
「憎いわね。」
細い冴子の身体を抱きしめた。
襲い来る魔の手をかいくぐって、帰ってきたのよ?
もっと歓迎してくれてもいいくらいだわ(笑)。
「おかえり、遊里。」
お、優しい声。
「ただいま、冴子。」
私は嬉しくなってさらに抱きしめて、冴子を実感した。
旅行先で独りで寝ていたベッドは寒かったけど、今は火照った身体を冷やす役目をしている。
冴子は私の身体に巻き付くように身を寄せた。
せっかく冷やそうとしているのに、こうべったりだと下がるものも下がらないかもしれない。
でも、私としては嬉しいから離れろとは言わずに好きにさせておいた。
「寂しくなかっただなんて嘘でしょう?」
「嘘じゃないわよ。」
相変わらず否定、ここまできて否定できる人間もいないもの(笑)。
「嘘。」
「嘘じゃないわよ。」
微笑しながら。
もう、そういうことにしておきましょうか。
私は冴子の手を取り、指を絡めた。
「ちゃんと練習してた?」
チェリストの指、意外にゴツい。
「してたわよ、うるさい人がいないから静かで良かった。」
「いちいちうるさいわよ、冴子。」
いとおしいくて・・・唇に寄せて口付けた。
撮影の時は集中したけど、冴子の事は忘れたことはなかった。困った事に、どんな子を撮っても冴子と比べてしまう。
「遊里こそ、浮気してないでしょうね?」
「するわけないじゃない。」
まだ、疑ってるのか・・・まったく。
冴子の視線に変化を感じ、寄せている身体が一瞬震えた。
「冴子一筋なのに。」
「遊里ー」
顔を少し上げて初めて照れたような表情をする。
「今日と明日くらいは一緒にいましょ。」
「・・・いいわよ、遊里が言うならそうしてあげる。」
なんでそう、上から目線なのか。
まあ、仕方がないか・・・冴子だもの(苦笑)。
そんな彼女に弱いのが私なのだ。
にやにや笑っている冴子を見ながら私はいとおしいと思う反面、心の中でため息をついた。




