第五話「冬」
5冬
01実都「こんにちは、白井華さん?」
02華「高梨くん。俺になにか?丁度帰ろうとしてるんだ、早めに済ませてもらえると」
03実都「あー大丈夫大丈夫。そんなに時間はとらねえよ。・・・つかこっちも時間ねえし(小声)」
04華「え?」
05実都「あははーこっちの話。実は俺と白井さんの家って同じ方向なんだよね、知ってた?」
06華「知らないけど・・・」
07実都「あっれほんと?!まあそうだよなあ、あんま話とかもしたことなかったしなあ。ってことで一緒に帰ろうぜ?!」
08華「・・・・・」嫌そうな顔
09実都「あっから様に嫌そうな顔すんなよなー!まあ、そういう顔も知らなかったし俺としては面白れぇけど。取って食ったりしねえって、何せ俺にはレオンちんがいるからな!」
10華「ああ帝さんのこと好きなんだよな、高梨くんは。」
11実都「おうよ。世界で一番愛してる!・・・とか言うと殴られるんだよな。どうにも本気にしてもらえねえの、困ったもんだよなあ」
12華「その言い方が悪いんじゃないか?高梨くんは顔が派手だからそう言っても冗談だと思われるんだと思う。もっと真剣に伝えてみたら少しは伝わると・・・・・なんだよその二ヤついた顔」
13実都「いやあ、なんでもねえけど。」
14華「は?」
15実都「俺は伝えすぎて伝わんねえけど、あいつは伝えなさ過ぎて伝わんねえよな」
16華「・・・・・そうだな」
17実都「そんな拗ねなくてもいいんじゃねえの?多分アイツもいい加減反省したと思うしよ」
18華「拗ねてなんか・・・!」
19純「こら実都くん!何か華ちゃんに酷いこと言ったんじゃないでしょうね?」
20実都「そんなことしてませんー、普通に話してただけですぅー。な、白井!」
21華「巽さん・・。」
22純「純でいいよ!私も家こっちだからご一緒してもいい?」
23実都「だめですー俺と二人で帰りたいよなー白井?」
24華「いい・・けど別に」
25純「ほおらみてよ!!実都くんと二人は襲われそうで怖いってさ!」
26実都「だあかあらあ、俺はレオンちん一筋だって言ってんだろ!?」
27帝「死んでもごめんヨ、くそタラシめ」
28実都「あーれレオンちんもいたのー???レオンちんも一緒に帰るー??俺の家にぶほおぁ!!!」
29帝「そういうのがきしょいって言ってるのヨ!!!普通に好きだって言えねえかこのクズ!!」
30実都「好きだよ、レオン」真剣に
31帝「でっ・・!!う・・・ぐ・・!」
32実都「え、レオンちん真っ赤になってるきゃわいいいいいぐほうおぁ!!!」
33純「ほんとこの二人は全く・・・」
34華「・・・・・・」
35純「華ちゃん・・・・?」
36玲「いつも通りですねこのふたりは、まあ安心もしますけど。」
37華「西園寺くん・・・」
38玲「あれ、奇遇ですね白井さん。僕の家もこちらの方なんですよ。」
39華「え・・・・西園寺くんの家もこっちなのか・・?」
40玲「ええ、まあ僕の、というより・・・僕の友達の家って感じですけど」
41華「雪の・・・家・・・・」
42実都「悪いな白井。てか流石に途中でバレるかとおもってたけど相当素直なんだなお前。」
43華「う・・・」
44純「私たち、雪君にも華ちゃんにも、お互いにちゃんと自分の気持ち伝えてもらいたくて・・」
45帝「もういいなんて言わずに、もう一度だけチャンスやってくれヨ。」
46玲「雪君が、・・・待ってます」
47華「・・・・・・」
歩いて雪の家の中に入る
48雪「冬」
49華「冬」
50華「雪、はいるぞ」
雪の部屋にノックして入る。ベットに腰かけている雪
51雪「華・・・来てくれたのか」
52華「お前の友達にあそこまでされて来ないわけにはいかないだろ」
53雪「ま・・・そうだよな・・。悪かった、お前に嘘をつく形になって」
54華「謝ってほしいところはそこじゃない」
55雪「え・・?」
56華「確かに俺は嘘をつかれるのが嫌いだけど、それが一番じゃない」
57雪「でもあの遊園地で」
58華「お前は気づいてないだろうと思ったから。それにあのタイミングで俺が本当のことを言うのも嫌だった」
59雪「俺に・・・本当にしてほしくないことって・・・」
60華「・・・・自分を犠牲にすること。俺はきっと一生このままだから、近くにいたらずっと雪に苦労させるし、お前はそれを何だかんだ言いながら受け止めてくれるだろ。それが俺は嫌なんだ。」
61雪「・・それで・・・?」
62華「だから・・・離れようとした。好意を持ってくれた宇佐美さんにも話をして、お前から距離を取ろうとした。花火大会でも屋上でも・・・」
63雪「あいつ・・・もう華に・・・」
64華「でも・・・・・ずっと待ってたんだ。」
65雪「え?」
66華「こうやってちゃんと話せるときをずっと待ってた。俺からいかなかったのはただの強がりだけど、でも十分待ったはずだろ・・・?」
67雪「・・・・・ごめん。俺、本当に勇気がなかったんだ。多分それだけなんだよ。あいつが現れても、すぐに華の腕をつかむことが出来なかったのは俺が弱かっただけだ。」
68華「・・・・・。」
69雪「・・・あいつに言われたんだ。」
70誠「華ちゃんを好きになったのはね。たまに見せてくれた笑顔がかわいかったからなんだ。でも・・・その笑顔を見せるのは雪君の話をしている時だった。その時に気づいたんだよ。僕が入り込める隙なんてこれぽっちもなかったんだってね。」
71華「宇佐美さん・・・」
72雪「待たせて・・・本当にごめん。」
73華「うん・・・」
74雪「・・・・っ・・好きだ」涙声で
75華「うん・・・・遅いよ・・雪」涙声で
76鈴柾「お前があんな風になるなんて珍しいと思ったら、なるほど、手助けしてたってわけね。つくづくお人好しだな」
77誠「好きな子が喜んでる姿は可愛いですしね。慣れてますんで平気ですよ」
78鈴柾「まああの二人は簡単にはくっつかないからな。ひと悶着あった方が刺激があってよかったんじゃねえの?」
79誠「慰めてくださってるんですか?嬉しいですね。いやあ久しぶりに僕も苛々しちゃって。手荒にしちゃいましたけど、うまい具合に収まって一安心ってとこですね。」
80鈴柾「高梨たちにはちゃんと話したんだっけ?」
81誠「ええ文化祭の時にね。あのすれ違ったままの二人が会話したところで何にもならないことは目に見えてましたんで。雪君の場所を知ってあの場を開放してもらうにはすべて話すしかなかったんですよ。もう本当にあの二人怖いんだから、年下のはずなのになあ」
82鈴柾「はは、まあでもすげえいいやつだよ、あいつら。」
83誠「そうですね。ほんと羨ましいな。」
84アナウンサー「次のニュースです。あの名家である宇佐美家の跡継ぎが元日正式に決定されました。跡継ぎとなったのは宇佐美誠さん。宇佐美琴美さんのご子息にあたる方で現在高校3年生です。本日セレモニーが開催され、誠さんのスピーチが行われました。」
雪の家
85誠「このような盛大なセレモニーを執り行うことが出来ましたのは、他でもない皆様のお力添えがあってのことだと思っております。さらに・・」
86実都「おーすげーな雪の兄ちゃん。やっぱ正真正銘の有名人なんだな。」
87玲「しかもすごくいい人ですしね。あの時は何されるかとおもいましたけど」
88純「ね!!ほんと怖かったあ!演技派だよね・・・」
89帝「それでも私の好みではないネ。」
90実都「レオンちんの好みは俺だもんねーーー??ってあれ、殴んないの?」
91帝「・・まあ・・・あいつよりは・・・マシよ」
92実都「え」
93帝「マシ!!!数ミリのミリミリでマシってだけネ!!お前とアイツの二人しかこの世にいなくてどっちかと付き合わねえとダメって時はしーかーたーなーくオメエにしてやるっつってんのヨ!!!こらなにニヤニヤしてるネ気持ち悪い!!!」
94玲「どうやら春も近いようですね・・・。どうです純さん、僕たちもここらで無難にくっつくというのは」
95純「わ、玲君も冗談とか言えるんだね!あはは!ちょっと意外でびっくりしちゃった!」
96玲「・・・・厄介なのがここにもいたか・・」
97実都「そういやあいつらはどこにいったんだっけ」
98帝「確か初モード?に行ったネ」
99玲「ああ、初詣ですね。僕らもそろそろ行きますか?宇佐美家の皆さんもセレモニーを終えて帰ってくるでしょうし。」
100純「そうだね。いつまでも雪君の家に居座るわけにもいかないし。外寒いだろうなあ・・!」
鐘を鳴らす音
101雪「・・・・・」
102華「・・・・・雪、何をお願いした?」
103雪「お前、こういうのは言っちゃいけないんだぞー、知らねえの?」
104華「知ってるよ。大丈夫、雪のその願いは言ってもちゃんと叶うから」
105雪「・・・・・お前とこれからも一緒にいられますようにって」
106華「あれ、思ってたのと違った」
107雪「はああ?!おまえふざけ・・!」
108華「ぷっ、ははは!冗談だよ冗談!・・・・私も、同じ。」
109雪「はは、そっか。じゃあ叶うな。」
110華「うん。」
111雪「・・・そろそろ帰ろう。」
112華「うん、帰ろう」
終