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ゲームの中の殺人鬼に惚れられまして  作者: 死にたい猫_L
第一部 ゲーム_Outside
9/15

#8話し合い

「とにかく!まずはこの先のことを決めよう!」

タケルが強引に話の腰を折って机を叩いた。

「まず確認。ここは多分どっかの洋館。異世界とかゲームの中の可能性あり。根拠はコイツ」

ビッと親指で殺人鬼を指した。

「確かに…殺人鬼さんは間違いなくあのゲームの登場人物だよね」

頷いてリアも首を振る。

「話せないこいつに状況説明は無理…というか、なんとなく、こいつも状況わかってない感じあるけど」

タケルは視線を殺人鬼によこす。

殺人鬼は同意の意を表すように頷いた。

「あのゲームは一体なんなんだろう…それにあの靄は私たちを確かに切ったし…」

考え込むようにこうべを垂れて眉根を寄せるリアに同調するようにタケルが頷いた。

「今わかっていることが少なすぎてまだよくわからないね。とにかく、ここから出る方法を探すのが先決じゃないかな?」

リアが顔を上げ自信を込めて言う。

「うーん…それもそうだな」

タケルが少し諦めたように言った。

リアは屋上でのことを考えていた。

あの時までは確かに現実だったのに、今では夢の中にいるような心地がする。

ここは明らかに私たちのいた世界じゃない。

「立ち止まっててもしょうがない、か。確かにそうだな」

タケルは決心したように立ち上がる。

「行こう。探そう出口を」

***

「ひ、広い…」

1時間後、探索を初めてそれほど経っていないはずなのに疲れが出てきた。

「この洋館どうなってんだ…?建物の中の部屋が多すぎるし、誰も住んでなさそうな割には埃ひとつないし…綺麗すぎる…」

タケルがうんざりしたように呟いている。

「本当に変だよね。電気もガスも通ってるし、お風呂場だってキッチンだってある。でも窓の外は真っ暗闇でどれだけ時間が経っても何も見えない。まるで初めから外なんてないみたいに…」

そこまで言ってリアは少し怖くなった。

「階数もおかしくないか?なんか増えたり減ったりしてるような…?さっきは5階くらいまであったのに今は3階までしかないし…」

タケルも少し身震いした。

どうやら完全なるおばけ洋館に迷い込んだらしい。

「困ったな…玄関ホールらしきところもないなんて…大きな階段はあるのに…」

歩きながらカーペットの上を歩いていたその時だった。

バキッ

がくん。

「え」

廊下の端に歩いて行こうとしたその時、床が軋む音がして一瞬で二人の顔が遠ざかっていった。

あれ?嘘わたし…落ちてる?

「キャアァアァアァアアァ!」

悲鳴をあげて落ちる私を助けようとそれぞれ手を伸ばす二人。

しかし割れ目はどこまでも広く広がり、二人を巻き込んで真っ逆さまに落ちてゆく。

闇の中に飲み込まれた時、私たちの意識はまたもや途絶えたのだった。

***

ぱらぱらと木屑の落ちる音がする。

混濁した意識の中で漏れてくる光に目を細めながら目を開ける。

全身が痛かった。

気を失ってから多分そんなに経ってないと思うんだけど…みんなは…無事…かな…?

頭を抑えて立ち上がると、暗闇の中に人影が見えた。

「タケル…?」

呟くと影は怯えたように言葉を返した。

「人?…人間なのね?…あぁ!よかった!アタシの他にも人がいた!」

突然興奮気味の声が聞こえてきて、オネエ言葉で喋る人の顔が漏れた光に照らされて見える。

「……だれ?」

私の声は、瓦礫の中の埃を吸い込んで少しむせた。

「……う…リア…?居るのか?」

タケルの声と起き上がるもう一つの影。

二人の探している視線が私を見つけた。

「リア…!大丈…」

見つけた視線がもう一つの存在に気付き目を見開く。

「…誰?」

「誰って失礼ね!アタシが聞きたいわよ!!」

オネエ言葉に更に驚き手を地面につくタケル。

「リ、リア!オネエだ!オネエがいる!!」

失礼にもタケルは人影を指差して叫んだ。

「人を未確認生命体みたいに言わないで頂戴!」

きついツッコミが飛んできた。

背の高い影が立ち上がり、全てのやり取りを無視してこちらへ向かってくる。

「殺人鬼さ…」

呼びかけた私を制して髪についた瓦礫の屑を払う。

その時、丁度光の差しているところへ殺人鬼さんが出てきて顔が見えるようになる。

ゆっくりと、影のある顔は光が差して明るくその輪郭を見せた。

さらりと金髪が揺れる。

「やだ!イケメン!」

歓声の上がった声の方を殺人鬼さんと二人で見ると、立ち上がったその人物の顔がよく見えた。

色素の薄い髪に顔立ちは中性的で服装は一応男物。

薄ピンクのシャツに黒いチェックのズボン。ズボンにはおしゃれなサスペンダーのようなものが片方の腰からもう片方の腰にかけて付いていた。

同じく黒いネクタイが緩く首元を飾っている。制服のようなおしゃれな着こなしだ。

耳には紫のイヤーカフをしている。

「ね、ね、ね、誰このイケメン? 名前は?」

ぐうぐいと私と殺人鬼さんの近くに寄ってきて名前を聞こうとする。

「あっ!ちょっと!リアに近づくなオカマ!」

「オネエよ!」

キッとタケルを睨んでタケルと論争しだす。

「だいたい何なのよこのガキンチョは!」

「うっせーなオカマ!」

「だからオネエよ!」

オネエはいいんだ…

「とにかく!ここから出ないと!」

あわててリアが叫ぶ。

「ぅひゃっ」

すると無言で殺人鬼がリアをお姫様抱っこで抱えて瓦礫を登りだした。

「って!リアだけ連れてくなよ!」

タケルのツッコミに被せてオネエが叫んだ。

「きゃー!アタシもお姫様抱っこで連れてってー!」

「るっせ!オカマ!」

「オネエだってば!」

***

「……はぁ。という事で、とりあえず移動してきたわけだが…」

タケルが疲れた、とばかり額を覆う。

ここはさっきの給湯室で、今は四人が椅子に座っている。

「まず、そこのオネエ。自己紹介しろ」

タケルの言葉に眉を顰めて応対するオネエ。

「いちいち煩いわね。アタシの名前は青峰 色(あおみねしき)正真正銘の男の子よ!」

うふっとウインクもつけて彼、(彼女かもしれないが)は自己紹介した。

「それで?」

タケルが鋭い視線をよこす。

「それでって?」

半分とぼけてシキが笑った。

「だから!どっちだよ!…男か!女か!」

タケルが声を荒げて叫んだ。

「言ったじゃない男の子って」

「そうじゃなくて」

今度はリアが言葉を遮る。

驚いたような顔をしたシキが笑って少し間を取る。

ごくり、とみんなが息を飲む音がした。

「…グレーよ」

ホッとしたような、よくわからないような溜息がみんなの口から吐き出された。

「グレー?」

「そ。恋愛対象のことでしょ?アタシは女の子も普通に好きだけど、かっこいい男の子も人も好きよ」

ますますよくわからない顔をするタケルたち。

「何よ、聞いてきたのはそっちのくせして納得いかないみたいな顔して!」

ツンと可愛く怒るふりして殺人鬼とリアに向き直る。

「安心しなさい。あなた達が思い合ってるのは、わかってるから!」

ぱちんと二度目のウインクをかましながら微笑んだ。

「想っ…えぇっ…いやっ…違っ…ちょ」

真っ赤になってそれを隠そうと精一杯手で顔を覆いながら首を振るリア。

しかしその隣で激しく頷く殺人鬼。

殺人鬼とシキは固い握手を交わした。

「…くそっ…めんどくさいのが一人増えた…」

タケルは小さく舌打ちした。

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