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ゲームの中の殺人鬼に惚れられまして  作者: 死にたい猫_L
第一部 ゲーム_Outside
4/15

#4帰り道

暗い夜道を歩き出した2人の少年少女は、並んで家路へと急ぐ。

「…く、暗いな…」

「うん」

恥ずかしがるようなタケルの声に対して、リアはなんだか楽しそうである。

「怖くないのか?」

「全然!むしろわくわくする!」

瞳を輝かせてリアは拳を握った。

少し残念そうなタケルの顔が街灯に照らされた。


ひゅっ


「…!」

まただ。また、何かが高速で通ったような風が…

気のせいか?それにしてはさっき見た不自然な人影が引っかかる。


「なぁ、さっきから何黙ってんだ?話してみろよ」

黙ったままのリアにタケルが心配そうに聞いた。


「…さっきから、ずっと風が吹いてるんだ」

「は?」

「風…って言うか、なんか、何かが高速で移動してるみたいな…」

「…?俺にはそんな風聞こえないけどな…気のせいじゃないのか?」

「うん…やっぱ気のせいかなのかな…そんな気がする」


リアは思い直してまた歩き始めた。


しかしその時だった。


どくん。脈が激しく波打つ。

どっどっどっどっど、と速くなる鼓動の音が聞こえ、痛いくらい心臓が動く。

呼吸が浅くなり、全身に冷水をかけられたような冷や汗がどっと背中をつたう。

言葉が話せなくなるほどの威圧感に押しつぶされそうになる。

首を絞められたかのように喉からひゅうっと音がした。

必死で唾を飲み込んで、パニックに思考停止しかける脳みそに動けと命令する。

どこだ?どこから来てる?


この、『視線』は。


限界まで感覚を研ぎ澄ませて瞳を目の中でごろごろと泳がす。


「おい!リア!どうしたんだよ!!おい!」


遠くでタケルの声が聞こえる。

だが今は反応している暇はない。


私にはわかる。

これは、

これは、


これは明確な殺意。


「殺気」だ。


早く見つけないとどっちかが死ぬ。

私の脳みそはそう警告していた。


落ち着け…必ず見つかる。

視線が集中しているのは…後ろ?

私の後ろにいるのは、タケルだ。

タケルの後ろの電柱!

そこだ!!


「タケル!!…う…しろ!!」


タケルが咄嗟に反応して避けた。

夜空に金色の髪が舞う。

反応がもう少し遅かったら、切られていただろう。


そう、殺 人 鬼 に。


***

「っぶね…!!…お前…嘘だろ…なんで…」

タケルの動揺する声が聞こえた。

「…ぁ」

私もその先の光景には目を疑った。


そこには、先程プレイしたゲームの殺人鬼が、したり顔で笑っていた。


「なんで…!!そんなはず…だってあれはゲームで!!」

私は動揺して叫ぶ。

殺人鬼は答えなかった。


ゆらりと陽炎のようにナイフを構える。


次が来る。

その予感は的中した。


何かが高速で走ったような風の感覚。

さっきから鳴っていたのはこの音だったんだ。


側の草むらや電柱がいとも簡単に切れる。


「…っひっ」


その驚くような切れ味に喉から恐怖が発せられる。


なんで

なんでなんでなんでなんでなんで!


こんな…こんな…違う…


せっかく、友達ができたのに…


嫌だ…嫌…


『死にたくない』


恐怖に飲み込まれそうになったその瞬間だった。


「リア!!落ち着け!リアは俺が守る!!」


鼓膜を揺さぶるタケルの声にハッとする。


「タケ…ル?」


かろうじて正気を保った部分が私の脳を叩いた。


起きろ!!


お前ならできる。

戦略を立てるのは得意だろ?


誰かの、声がした。


「っ!!…タケル!!…こいつがあの殺人鬼なら、向かう場所は一つだと思う!!」


リアは精一杯の大声でタケルに伝える。


「っ!!…わかった!」


タケルが気づいた。

次は私の番だ。


リアは覚悟を決めた。


すうっと息を吸い込む。

今から再現する。

あの、ゲームを。


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