#2友達
第2話
主人公、宮野リアに初めてできたゲーム友達。
一緒にゲームをするが…?
朝。晴天。ではなく。
薄く灰色のかかった不機嫌をそのまま表した様な空。
雨でも降りそうだからか、外には人っ子ひとりいなかった。
そして少しだけ今日は風が強い。
誰もいないとは、私にとっては実に好都合である。
…ひとり。
…一人。
遊ぶ約束も無く。あ、友達が居ないとかはいっちゃいけない約束だ。
ひゅうぅうっとツッコミのごとく風が吹く。
寒くはない。生暖かい風が吹いているからだ。
ダラダラとグレーのアスファルトの上を歩く。
目的地は一応コンビニだが、何を買うかは特に決めていない。
歩いて3分くらいしか経っていないのにもう疲れた。
すでにこの時点でもう私の駄目人間っぷりが伺えるだろう。
あー帰りたい。
はぁ、と自然に吐かれるため息を止めるすべはない。
自分より大きいまた灰色の塀の角を曲がり、コンビニとご対面。
ロー○ン。
青い。実に青い。
ウィーンとして自動ドアが、
…開かない。
片手で手をかざし開けゴマとつぶやいてみるがビクともしない。
よく見ると灰色の押してくださいボタンが私を無言で見上げていた。
あぁ。そうですか。そこにいましたか。納得です、次から覚えておきます。そう思い、ポチッと押すと素直に自動ドアは開いてくれた。
おかしいな。来るの3回めのはずなんだけど。
すたっと足を伸ばし店内に進入。
ひやっとした空気が流れて頬を撫でる。
任務を遂行。
買う物決めてないけど。
店内をぶらぶら見て歩く。
ポップな吹き出しにはオススメ!などの売り文句が並べられている。
お、珍しいな。なんだこれ、布?
かがんでよく見ると、カラーマジックで長々と書いてある。
しっとり枕カバー☆
380円☆
ごっめーん☆店長っ!
発注ミスしちゃった!(๑>•̀๑)テヘペロ
500枚くらいミスったから後宜しく♡
じゃ、デート行ってくるから♡
……とりあえずどこからつっこんでいいのかわからない。
まずなんで枕カバー発注した?
いるの?コンビニに枕カバーいるの?
商品名しっとりて何か?汗か?
て言うか最後確実に個人的な内容挟んでるだろ、どうでもいいわ。
今すぐこのポップを引きちぎりたい衝動に駆られる。
が、そこはぐっと抑えて冷静になろう。
ん?なになに?まだ続きがあるな。
"おい、なんかこの枕カバーしっとりしてんだけど"
コメント書き加えられてるじゃねーか!誰だよ、そんな事書いたの!
あれか!商品名のしっとりってそういう事か!
お前の感想はいらねぇよ!
あ?まだあるぞ?
"あーそれ、多分店長ね。休憩中に寝てたわ気持ち悪い。"
おい。吹き出しはお前らの雑談じゃねーよ、ちゃんと商品のピーアールしろよ。
"ごめん、ほんと許して、発注ミス500枚は俺が売っとくから!あっ!やめて!警察だけは!FBIだけは!"
だまれ日本にFBIはない。
つーか店長弱み握られてるし、使用済みの枕カバー店頭に置くんじゃねぇ。
うぅ。最悪の気分だ。なんだよこのポップ。
おかしいだろ、ここのコンビニ。
はぁとつぶやいて別の物を見る。
おっと!ガリゴリ君だ。これ買おう。
なんか別の意味で疲れたし、さっさと買って帰りたい。
レジにスムーズに並ぶ。
"20円のお釣りになります。"
定員さんの軽やかな声。
忘れず、灰色のボタン様をポチッと押す。
よし。ミッションコンプリート!
あー疲れたわーっと伸びをして自動ドアが開くのを待って店を出ようとすると急に出ようとした男性にぶつかる。
とっさのことで受け身ができないー
その時だった。
私のパーカーの裾がぐいっと強い力で引っ張られた。
あっ、と言う間もなく私は男性にぶつかることなく自動ドアの右側に着地していた。
一瞬何が起こったのかわからず、去っていく男性を唖然と見送る。
はっと気がつくと金髪の少年が、近くの黄色のU字型を逆さまにしたやつ(名前は知らん)に座っていた。
金髪の髪に小柄な体格。赤い薄手のフードつき半袖パーカーに横シマ白黒Tシャツの長袖がパーカーの袖から出ている。黒の短パンを履いていて、下にはスニーカー。
まぁ、「しゃれおつ」なんだろう。
しかもなんとシルバーピヤスをしている。シンプルなリング型の形状のもので装飾は一切なし。
小6くらいの身長にしてはよく似合う。
よく見る不良少年だろうか。
「おい、大丈夫か?」
そんな事を考えていると、不良少年がいぶかしんで覗き込んできた。
「あ、あぁ。大丈夫だ。ありがとな。」
驚きつつもそう返すと少年は「別に」
と軽く返して俯いた。
何はともあれ無事だった。
さて、帰るか。
そう思ったその時だった。少年の持っているコンビニ袋からゲームのパッケージが覗いていた。
タイトルは「world downfall」……
「その、…それ…どこで見つけた?」
震えながら少年の肩をがっしり掴む。
はたから見れば完全に変質者だが、今はそんな事に構ってられない。
だって今目の前に、
幻のゲームがあるのだから。
「?それ?もしかしてこれの事か?」
少年はがさりと白い袋を持ち上げて見せる。
「それだよ、それ!どこで見つけたんだ?!私それがめちゃくちゃ欲しかったんだ!!」
柄にもなく興奮して喋っている。
やばい。絶対引いてるよね、でも、あぁー欲しー!!
「おま!これ知ってんのか?!すげー!初めて会ったよ、これ知ってる奴!!」
少年も同じく興奮して、がさがさと袋を振り回している。
「知る人ぞ知る名作だからな!!これ持ってる奴はなかなかのもんだよ!」
腕組みをして熱弁しあう私達を見てたむろしていた人達がそそくさと帰っていく。
が、今はそんな事どうでもいい。
まさか、ヲダウンを知ってる奴が居たとは。
world downfall 略してヲダウン。
wo-down でヲダウン。
意味は「世界滅亡」
内容は高性能なシューティングゲームだ。
一つは「ニージ」
侵略する側であり、レゼレンツを滅亡させる為にいる。つまり敵。ちなみにこれはパソコン側が動かしている。
「レゼレンツ」
意味は住民。侵略される側だが、同じくテロリストを滅亡させる。それぞれの武器とアバターを使って戦う。
ちなみに武器も自分達で作る。
専用のチームもある。
「クラスメン」
意味は職人だ。
突如、ネットに表れ、グラフィックの美しさや、造りの細かさに魅了され、プレイする者が当時後を絶たなかった。
しかし、かなり高性能かつプレイヤー次第の選択がいかんせん多い事もあり、プレイは難航。
途中で投げ出す者も多かった。
頭を使うからだ。
しかし、沈みかけた夕暮れの淡いオレンジの太陽に、濃く濃淡な青い夕闇がかぶさり、白く輝いている小さな星々がチラチラと見える様子はまさに現実世界そのものだった。
闇に溶けこんだ倒壊したビルがシルエットとなって雰囲気を盛り上げる。
まさに天才の所業。
制作者の名は「ディオス」
年齢、外見、居場所。
どれにおいて全て不明。
謎の人物だ。
「にしてもどこで手に入れたんだ?製品版にはされてないはずだけど。」
「それが不思議なんだよ。ある日突然家に届いたんだ。宛先も無いし。」
「?それは変だな。しかし製品版かぁ。やったら面白いだろうな。」
うっとりとゲームを見つめると少年はにかっと笑って言った。
「なんだよ!水臭えなぁ。俺ん家でやりゃいいじゃん!あんたの事気に入ったし!」
「ほ、ほんとか!恩にきる!」
ざぁっと風が吹いて長いロングヘアーを揺らす。
そこにこの世で一番幸せと言うような笑顔。
はにかむような頬は桃色に染まり、肌の白さが目立つ。
あれ?こいつこんなに綺麗だったけ…
どきりとした思いが胸を打つ。
?変だな。動悸?
少年は首を傾げる。
「今時間あるか?き、今日でもいいなら、その、行ってもいいが?」
下を向いてもじもじとする。
やば、人にもの頼む乗ってこんなんでいいんだっけ…
「今日?空いてるよ?」
少年は爽やかに返事を返してくれた。
「そうか!私は宮野 リア。よろしくな!」
「俺は一条 タケル。こっちこそよろしく。」
タケルの声は、久しぶりに心地よく耳に響いた。