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ゲームの中の殺人鬼に惚れられまして  作者: 死にたい猫_L
第一部 ゲーム_Outside
1/15

#1目覚め

殺人鬼に惚れられた少女のお話。

ラブコメがある。

初めの方は何年か前に書いたものです。

ご了承ください。

…言い訳ごめんなさい。書き直します…


空間に浮かんでいる様な浮遊感。

パッと場面が変わり、私はゲームの中に居た。ドット絵の私と金髪の不良少年が今までとは違う最速のスピードで走って路地を曲がる。目の前には古ぼけた廃墟。そしてもう少し先には廃校になったらしい学校。そして背後には殺人鬼。私達はもうゲームの外に居てドット絵そっくりの格好で興奮してゲーム機を握っていた。「ちょっきたきたきた、やばいって!」

ゲーム機を握っているのは正確には私らしいがどうやら金髪の少年も一緒に握っているらしい。「こわいこわいこわい!ちょ、どっちこれっ?」

「知るかよ!早く入らないと殺られるぞ!」

ソファーの上でドタバタと進むボタンを押してドット絵を見つめている。


そう、追ってくるのは殺人鬼なのだ。


しかしその殺人鬼は殺人鬼らしくない殺人鬼だった。映画やドラマで見る様な狂った殺人鬼とは違い、スーツ姿でオールバックの金髪でたらんと一房たれた前髪がチャームポイントらしい。ホラーゲームの説明書のパンフレットが、かさかさと音を立てる。

そう書いてあったので間違いない筈だ。やむなく私達は路地を曲がりきり、近くの廃墟に入り込んだ。


「はぁ、はぁ。」


キャラクターが無事追いつかれる前に廃墟に入った。

これで大丈夫だ。

ホッとしたのもつかの間、私達はまたゲームの中に居た。ドット絵ではなくそのままの格好だった。金髪少年が居間らしき所に逃げ込む。すると緊張した面持ちで顔を上げた。

そう。

いたのだ。


殺人鬼が。


「嘘だろ?」


金髪少年が震える声でこちらを向いた。殺人鬼は鋭利な刃物を持っていて形はと言うとよくわからない。釜のようにも見えるし短剣のようにも見える。次の瞬間、金髪少年は殺人鬼に切られ、倒れた。続いて私は硬直した体で殺人鬼を見上げた。

一重になったその瞳からは暗い影が、

その口元からは薄い笑みがこぼれ落ちる。

奴は笑っているのだ。


身を切られるような感覚。

まるで冷たいつららを背中に突き立てられたような死の予感。


そして私の目の前がぷつりと電源を切ったように真っ暗になった。


ぱちり。

視界に広がるのは薄暗い部屋。

ライトグリーンのカーテンの隙間から見える朝日が眩しい。


(...なんだ、朝か...。)


はぁ、と朝日を遮るために腕を目元に持ってくる。白黒の横しましまだるんだるんルームウェアはワンサイズ上の物なので体に全くあっていない。

袖も長いし大きい為、図らずとも萌え袖になってしまっている。

基本的に軽くて窮屈じゃなく、シンプルな物が好きなのでお気に入りだ。


まぁ、買うときに弟に、


「なんじゃそりゃ!ねーちゃん囚人かよ!」


と爆笑されたんだがな。


殴って黙らせたからいいとして。


(......。)


くあ、と軽くあくびをしつつ二階からゆっくり一階へと降りる。


にゃーと可愛い声がしてたふたふたふと灰色の猫が近づいてくる。


「おはよう、リト」


擦り寄ってくる猫の名前はリト。

私がつけた名前。

飼う時に、変な名前つけんなよ!

と、また弟から言われたが抱き上げた時に

「ねぇ、リト?」と話しかけたら

リトはにゃーと返事をしたんだ。

それを見て弟はふっと笑って「それでいいってか!」と納得してしまったのだ。

弟すら納得させてしまうその不思議な猫は思いがけず私に味方してくれたのだった。


それからリトは家族になった。


一階に降りてもリト以外誰もいない。


なぜかと言うと。



私以外の家族は世界一周旅行とやらに出かけているからだ。


うん。


うちの家族はその、何というか、すごくアバウトなので、適当に行き先を決め、適当に航空券を買い、適当に飛行機に乗って出かけて行ってしまった。


思い出す所、回想はこんな感じだった気がする。


リアー!お母さん達明日から世界一周旅行の旅に行ってくるから!


は?!なんで!


それじゃ、回して頂戴パパ♡


オッケー!


ドゥるるるるる♪(効果音)


バンッ


決まったわ!


なんでダーツ?!


スウェーデンよ!!


どこだよ!!!


よし、じゃあ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、みたいに行こうか。


なんで縦周り?!


俺、オーロラ見たいなー!


なんで普通に参加してんの?!


オーロラはアイスランドだから見れると思うぞ!


答えんの?!


じゃ!!(3人共旅行鞄を持って玄関に)


ばたん。


…………もう勝手にしろ!!


虚しく響いた怒声は誰もいない玄関にただただこだました。


それから私は一人気ままな一人暮らしライフを送っている。


………いただきます。


ぱんと手をあわせて朝ご飯を食べる。

ふわ、と漂う香ばしい匂い。カリッと焼いたベーコンに醤油をひとたらし。

ふっくらした白身の膜を箸でゆっくり割ると、微妙な半熟とろり。

私的好みで言えば完全な半熟は好みでないのだ。

だから卵がけご飯は苦手。


もくもくと朝ご飯を消費する。


「ごちそうさま。」


誰もいない広い空間に喋るのはつらい。

だから、もう、声に出して言わない。

だって一人だから。

誰もいないから。

そうしていつか人はいただきますもごちそうさまも言わなくなる。


いただきます。


食物に感謝し、頂く事に感謝する。


ごちそうさま。


頂いた事に感謝し、命をありがとうと言う。


そうしていつかその心を忘れてしまう。


忘れたく無いけど。


にゃー、とリトの声。

キャットフードが口についている。


「……美味しかった?」


にゃーとは言うけど美味しかったどうかはわからない。


うぅーっと背伸びをする。


「さて、着替えますか。」


ふぅ、と息を一つ吐いてドレッサーの前に立つ。


すかすかのドレッサーの中身から

すみれ色のパーカーと制服のスカートを取り出す。


半分学校に行く気と行かない気が混ざった格好になった。


そうだ。


これは精一杯の抵抗。


空は薄く雲がかかり、日差しを遮ってくれている。

今日なら外に出られるか。


たんたんっと乾いた靴音を響かせ玄関を出る。

そよ風がボサボサの髪を撫でて行く。


あぁ、今日も世界は、回っている。







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