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そしてやっと着いた宿屋で今度はシキがフユを咎め押し問答の事態となっていた。受付の前で言い争う。
「え、僕だけ? フユちゃんどうするの?」
「僕は馬小屋で寝るからだいじょぶ。そこだと格安」
「駄目だよ! 危ないよ外で寝るなんて!」
「二人で泊まるにはお金足りない。だからシキさんが泊まれば良い。だいじょぶ、僕強い。金目の物も持ってないから誰も襲わない」
「そんなっ じゃあフユちゃんが泊まって僕が外で寝るよ」
「有り得ない」
フユの常識で言えば年頃の男性を野宿させるなど淑女ではない。ましてや自分と組んでくれると言っている男性であり、アイテムボックスの持ち主だ。少なくともこんな美貌の少年が一人で野宿すれば千パーセント女性に襲われるだろう、と。
何故千パーセントかというと十回は犯されるからだとフユは思ったのである。
「お二人さん。困ったときはお互い様、私が足りない分のお金を出してあげるさ」
そんな二人に声を掛けたのは金色の髪をサイドテールにした少女。
シキよりも背が高いがシキの背が低めなだけである。それよりもシキは驚く。
「エルフ!?」
「エルフなのにゴメンナサイっ」
「何故謝る!?」
少女の尖った耳を見てのシキの言葉に即座に腰を直角にし謝る少女。シキにとって見ほれてしまう程の美人である。どこのCG合成で作られたエロバレーな金髪少女なのかと。フユもまたシキから見て十分以上に日本人的な顔立ちの美少女なのだが目の前の少女はアングロサクソン系の目鼻立ちのハッキリした美少女であった。
一方フユは油断無く構える。相手の装備から弓を主体に戦うアーチャーだと見て取れる。ただアーチャーだとしても接近戦が出来ないという訳ではないので油断なく腰の短刀に手を掛けた。
「目的は何」
フユは淡々とだが確信を突く。
「いやいや、困ったときはだね人間助け合いが必要ってもんさ」
「怪しい」
突然現れて宿代を恵むハンターが居るなど聞いたことがない。十中八九シキを引き入れるかシキに夜の相手をさせようとするかどちらかとしか思えない。
「怪しくないさ?」
怪しい人物が怪しくないと抑揚なく淡々と自己紹介してくれば怪しさ度合いは天元突破であった。
「うーん、流石にねぇ」
流石にアホのシキでも見ず知らずの人物からお金を出して貰うのには警戒する。
「シキさんを渡せとか一晩貸せとかそんなゲスだと予想」
「フユちゃん、初対面の人を即座にディスっちゃ駄目だよ」
「う」
メッとフユの唇に人差し指を置くシキ。唇にふれた指の感触にフユは内心悶絶し耳まで即座に真っ赤となるがシキは当然アホなので気付いていない。
「で、どうして僕たちに宿代出そうとしてるんですか?」
警戒はしているもののお金が無いのも事実。ただ、シキは目の前の少女、見た目十代半ばから二十歳といったエルフに率直に聞く。
「う、その」
シキに真っ正面から見られ罰が悪そうにたじろぐエルフにシキはじっと見る。悪意が感じられない。ただ、何か困っているのだろうことは疑いようもない。
「実際お金なくて困ってるのは事実ですからね。出来る事で問題なさそうなら協力しますけど」
「お願いしますっ」
シキの言葉に活路を見いだしたとばかりにエルフの少女は膝を折り額を床に打ち付けた。
DOGEZAにシキはドン引きつつ「あ、これ聞いちゃ駄目だったんじゃない?」とフユに目配せするが「いやシキさんが……」と若干非難の色を瞳に映すだけであった。
ちなみに本作品の登場人物は下記リンクにもある現代が舞台の
あべこべ世界で人生をやり直します!
と同じで所謂スターシステムという奴です。
そちらも是非ご一読を。




