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 町は塀に囲まれ人通りは途切れなく続いていた。門兵は二人立っているが獣や魔物が入り込むのを防止する監視でしかない。


「おー」

「何、珍しい?」

「いやぁ、FF寄りな町だなぁって」

「FF?」

「んー、気にしないで。良い町だね」

「そ……う?」

「うん」


 FFファイナルファイティングのような、のどかな田舎町、という雰囲気にシキは楽しい気分になっていた。通りを行き交う人たちの服装も西洋の中世風、というあまりにざっくりした印象を受ける一方でシキのような魔術師風の格好やフユのようにどこか和風の雰囲気の人間も居たのがファンタジー世界に入り込んだ実感をシキに持たせる。

 初日からフユというシキの好みドストライク(ただしストライクゾーンは広大)な少女と出会った幸運と目の前に広がるファンタジーな町並みがシキにこれから先の未来への期待を持たせるのである。


「どんまい。きっと良いことある」

「え、慰められるような感じなの?」


 シキが身分証一つ持っていないと判明しフユがハンターギルドへ案内、登録した。その際に受付けの男性に睨まれたがシキはヘラヘラとこなした。


 フユは「……気づいてない」と、ギルド内における女性全てがシキの美貌に釘付けであり、それに対して嫉妬した受付男子に睨まれたことに気づいていないシキに半ば呆れるという一幕もあったが無事受け取ることが出来た。ちなみに登録料はフユのなけなしの所持金から支払われた。


 そしてクレジットカードほどの大きさのマジックアイテム、ギルドメンバーカードに表示されたシキの職業欄を見て、フユはシキに思わず慰めの言葉を掛けたのである。


「たまに、変わったジョブになる人が居る、らしい」


 フユは答えにならない答えを気まずそうに返した。


 カードには名前、年齢、性別、ジョブが表示される。フユの説明に寄ると魔術系職業でメジャーなのはホワイトマジシャンやブラックマジシャン、タイムマジシャンの三種であり、たまにサモナーという魔物や神、精霊といったものを召喚する術を使う者も居るという。


「ブルーマジシャンって何かマズいのかな?」

「ブルーマジシャン、聞いたことない。つまりどんな術が使えるのか不明。術を覚えるためのスクロールも売ってないと思う。ただ、たまにジョブで村人とか、遊び人、とか出る人が居るからそれよりは良い、のかも?」


 疑問系である。ただ、シキは女神が参考にしたというゲームの知識が有る。


「術、使えなくても努力で戦える」


 フユの励ましにシキは笑顔で返す。


「なら大丈夫。多分僕知ってるからね」

「え? 記憶喪失は?」

「あ。うん、今そのあたりだけ想い出したから大丈夫って意味!」


 フユは記憶喪失だという設定に対してつっこみを入れたつもりだったが通じなかった。バレバレの演技にそれ以上つっこまない事にした。


「どんな魔術?」

「多分だけどね。あとで検証してみませう。で、どうしよっか?」

「ん……今日の宿代が無い。薬草採集すれば泊まれる」


 フユはシキが居るのでひとまずは安全な依頼を請け負ってその日の宿代だけでも稼ごうと考えた。


「おー。なんか王道だねぇ」

「王道?」

「そういうのやってみたかったんだ」


 変わった箱入り息子だと改めて思う。どこの世界にそんな雑用を喜ぶ人間が居るのかと。


「じゃ、早速いこうか!」

「ん。今日は毒消しの相場が高いからそれを狙う。今から狩りしても見つかるか解らない上に疲れるから割りに合わない」


 そして二人は連れだって町の外の森に向かうのであった。



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