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「助かって良かったねぇ」
「ん。お疲れ」
「お疲れ様さ。良い実験台になったさね」
「実験ってアキさん意外と黒いねぇ」
「アキさんに同意」
「あらま」
「ポーション無いならともかく土壇場で仲間に本番で実践する余裕はないさ」
シキの【ゴブリン(白)】は並の回復ポーションもしくはホワイトマジックの初級回復術【キュアル】と同レベルの回復能力が有ると証明された。
シキ以外の二人は「この人、自分がどれだけの価値有るか解ってないだろうなぁ」と思いつつも口には出さず歩みを進めるのであった。
ぴこーん
ブルーマジック 【ゴブリン(白)】のレベルが上がりました
所持マジック
【ゴブリン】1/6 ※打撃
【ゴブリン(白)】1/6 ※回復(極小)↓回復(小) Lv.UP!
【バット】-/- ※?
【マンティス(黒)】-/- NEW! ※?
【ホーンラット】-/- ※?
**アイテムボックス**
水入り皮袋(五百ml)×98
干し肉(牛肉 百グラム)×99
乾パン(二百グラム)×99
魔石各種×96 (計:四万千ジェニン相当)
皮袋(空)×1
空き
空き
空き
空き
空き
==整理整頓=
==ゴミ箱==
************
ブラックマンティスの魔石は一個三千ジェニンであるとアキは説明する。
「高いは高いけど危険度考えると割に合わない気がするねぇ」
「あれは、あの四人が弱かっただけ」
「いやいや、見たところEかFランクだったからブルーならともかくブラックマンティス二匹相手は酷さ」
「虫は堅くて面倒。けど間接や腹は柔らかいから楽」
「そういうことでなくてさ」
フユの言い分とアキの反応からシキはふと、出来る人間の常識と世間の非常識は似てるのかな、と思う。
「でももうちょっと後半で出てくれたらご馳走だっただけに残念さ」
アキの言葉にシキは少しギョッとし聞き返す。
「え、美味しいの? あれ食べるの?」
「エルフは虫好き」
エルフを揶揄したのかと思いきやアキが気にするでもなく当たり前に
「鳥や豚より癖が無いのに街の人間が食べないのは不思議でならないのさ。機会が有ったらご馳走するさ」
と答える。
「機会が有ったら」
昆虫食どころか他の文化に対して寛容であろうとするシキではあるがそんな機会は来ないで欲しいと願う。
「そういえばさっき、新しいの覚えたんだよね。ちょっと試してみて良い?」
シキは二人の返答を待つより早くまずは【バット(黒)】を発動させる。
「ん……んん?」
「何も……感じないさ」
シキは納得した。自分たちの頭のすぐ上を一匹ずつ、半透明なアンブレラバットが羽ばたくでもなく浮いている。
「……アキさん、ちょっと僕の頭にこの水かけてみて」
「ほいさ」
アイテムボックスから水を出し振りかけて貰うとそこに傘でも有るように掛けられた水を弾いた。
「なるほど。傘。これは便利」
「へぇ。有効範囲は両手広げたくらいってとこさね」
有効時間もまだ解らないのに、これで一生傘を買わなくて済む、とシキはご満悦である。
「もう一つ試してみるね」
【マンティス(黒)】を発動させるとまたまた半透明のブラックマンティスが現れ【ゴブリン】のように何も無い空間、前方に向かってその鋭い鎌を袈裟懸けに振り下ろすモーションを取った。
「攻撃?」
「みたい。次の魔物で試してみよう」
いかにも【ゴブリン】よりも強力そうでシキは期待する。
「丁度良くブラックマンティス3匹。前方三十メル」
この世界の単位はキロ=キル、メル=メル、センチ=セル、ミリ=ミルでシキにとっても馴染みやすい。
「じゃ、私がまずは一匹減らすさ」
アキが矢で一匹のカマキリ特有の膨らんだ腹部を貫き暴れるも数秒後には地に伏した。
「一匹」
襲撃者に気付き逃げるではなく迫り来る二匹に向かってフユは走り出す。鎌を避け横をすり抜けつつ器用に胴の間接部を貫くとそのままショートソードは抜かずに手放して背後まで駆け抜けた。抜く動作で一時止まるのを嫌ったためである。ただその一撃で獲物は絶命した。
そして最後の一匹はフユを見失ったが前方の得物、シキとアキを倒すべく走り寄ってくる。
「怖っ」
流石に覚悟していても人間サイズの虫の化け物が鎌を振り上げつつ全力疾走して向かってくればシキのような元現代人には恐怖である。
「万が一の時は私が守るさ。落ち着いて」
「う、うん」
シキは先ほど自分が発動させた【マンティス(黒)】の間合いと出現のタイムラグを思い出しつつ、必要は無いが杖を走りよるブラックマンティスに向け発動させた。
ブラックマンティスの有効射程はそこまで広くなく大凡1メル。その体の特性上まっすぐに突くのではなく文字通り鎌を振り下ろすこととなる。
あと2メルというところであったがシキから1メル先に【マンティス(黒)】が出現するので必然的に迫り来るブラックマンティスよりもその分射程が長くなる。
【マンティス(黒)】発動。
ギィッ!
「うわっ」
「おお。凄いさ」
シキの【マンティス(黒)】は無警戒に突っ込んできたブラックマンティスの首から胴を袈裟懸けに切り裂く。
「お、おぉお……怖かった! けどやった!」
「うんうん、下手な戦士の攻撃より強いさ」
「これで僕も戦えるねっ」
初めて自分で魔物を倒したことから興奮するシキを手を叩いて誉めた。
いつの間にかアキと己がしとめた魔物の魔石を回収したフユはシキの倒したブラックマンティスの死体をショートソードで突つきつつ観察する。間接部や柔らかい部位ではなく堅い外殻ごと鋭い両手剣で一刀両断したかのような切り口にフユは驚く。
「シキさん、危ないから前に出ては駄目」
だがフユは「男性を矢面に立たせるのは淑女ではない」という個人的な基本理念から調子に乗りそうなシキを諫めた。
「そうさね。シキ君は後衛でよろしくさ」
フユやアキからするとシキのブルーマジックは言ってしまえば得体の知れないものである。目にも見えないのでシキの探索の不慣れさや短期間でも解るほどのんびりしたシキの性格、悪く言えば鈍臭さからどうにも不安が残るのであまり調子に乗られて前に出てこられたくないというのが二人の共通認識である。
「えー」
「この面子だと接近戦はフユ君で私が中・長距離の攻撃およびシキ君の護衛が仕事。シキ君は回復役とアイテム持ちという一番重要な役目がある。それぞれの役割を責任持って果たすのが基本さ」
そう言われると反論の余地はないので渋々頷く。
「安全な時に、徐々に馴れるべき」
「そうだね、解ったよ」
全く攻撃させない、という訳ではないとのフユにシキは素直に頷く。フユも全く前に立たせないのではなくもしもの時のために先ほどのように万全な体制でシキに戦いを学ばせるべきだと感じた。
「フユ君はリーダー向きさね」
諫めつつもやる気を削がないよう気を使う年端も行かぬはずの少女に感心した。
フユが一瞬暗い表情となったのをシキは見逃さなかった。
所持マジック
【ゴブリン】1/6 ※打撃
【ゴブリン(白)】1/6 ※回復(極小)↓回復(小) Lv.UP!
【バット(黒)】-/- ※傘
【マンティス(黒)】-/- ※斬撃
【ホーンラット】-/- ※?
**アイテムボックス**
水入り皮袋(五百ml)×98
干し肉(牛肉 百グラム)×99
乾パン(二百グラム)×99
魔石各種×98 (計:四万七千ジェニン相当)
皮袋(空)×1
空き
空き
空き
空き
空き
==整理整頓=
==ゴミ箱==
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