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泥の手形

作者: 福耳の犬
掲載日:2016/08/06

『何これ、凄い雨、、』


梅雨の末期、凄い雨が夕方から続いていました。


家の前の坂道は川の様に雨水が流れ下り、避難することも危険な状態でした。


『昼間に買い物していて良かったね。』


『2〜3日分はあるから大丈夫だよ。』


『そんな雨が2〜3日も続いたら大変だよ。』


お母さんと姉と僕で話していました。


外は相変わらずゴーゴーと雨が降り続き、坂道は深さ20cm程の川になっていました。


『これお父さん、帰ってこれないね。』


『電車も止まっていて帰れないってメールがさっき来てたよ。』


そんな話しをしていた頃、家の前の道路では雨水に混じって泥や小石が流れ出していました。


3人で夕食を食べてテレビを見ている時、外からゴー、ドーンと爆音の様な音が鳴り響いたと思った瞬間に壁は崩れ濁流と土砂が家を壊しながら流れ下ってきました。


母も姉も目の前から一瞬で消えて目の前は濁流となり、手足は石と泥に埋りながら助かろうともがいていました。


それから何分、何時間が経ったのか分かりませんが、僕は道路の上に横たわっていました。


『助かった。』


『お母さん、、お姉ちゃん、、』


周りには母の姿も姉の姿も無く、兎に角大丈夫なのか心配でなりません。


その時、向こうから車のヘッドライトが近づいて来ました。


『助けを求めよう、、』


慌てて道の真ん中に立ち車を止めようと仁王立ちしましたが、車が減速する気配がありません。


『危ない。』


紙一重で車を除けましたが、こちらも必死の為に泥だらけの手で車を叩きました。


結局その車は僕に気づかず走り去ってしまいました。


叩いても叩いても次の車も、またその次の車も同じく止まらず走り抜け、世の中がこんなに薄情だとは思っていませんでした。


しかし母も姉も安否も分からず、車を止めるしか手がありません。


その頃からです。


県道⚪️号線には噂が流れました。


災害現場横を通ると泥の手形が車に着くという、、、

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