蚩尤
身の丈は四メートル、竜などと比べればサイズは小さいが、それを超える圧倒的な力を目の前の魔物は放っている。
明らかに神獣級の魔物だ。
「ハク!そいつは『蚩尤』だ、倒せとは言わない、儀式が終わるまでそいつをこっちに近づけるな!」
呂尚が焦るような声で言う。
「判ってる!クリスティナ様、ドラン、アオイ、クロクロやるぞ!」
「全力でやりなさい!」
クロクロが精霊王に攻撃の指示を飛ばす。
それを合図に精霊王六柱の全力攻撃が開始される。
いつもの軽口が精霊王から出ていない。
相手がそれほど強いのだ。
普通の魔物ならば、塵すらも残らないよな激しい攻撃が、豪雨のように蚩尤に降り注ぐ。
蚩尤を中心に閃光と土煙が上がる。
だが・・・
蚩尤は何事もなかったように、そこに不動の体勢で立っていた。
『ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
蚩尤は雄叫びを上げる。
「糞みたいな化物じゃの」
ドランが槌を構えながら、蚩尤を見据えている。
「俺様も本気をだそうかの。この龍王の背骨で造ったドラゴンハンマーの威力を見せてくれるわ!」
あぁ・・・やっぱりそれ新兵器だったのか。
猛然と蚩尤に突っ込んでいくドラン。
蚩尤もドラゴンハンマーに何かを感じたのか、近づけないようにドランに向かって魔法を連続で放つ。
その魔法をクリスティナが遮り、ライトレイピアで弾く。
「久々にドラン将軍の戦いが見れるんですものね」
その横をドランがドワーフとは思えない速度で駆け抜ける。
横をすり抜ける瞬間、ニカッっと笑った気がする。
ところで将軍って何?こんな危険人物を要職につけてた国があるの?
「おりゃぁああああああああああああああああ」
ドランのドラゴンハンマーが光を放ちながら、轟音とともに蚩尤の左脇腹に叩き込まれる。
当たった瞬間、その余波で部屋が激しく揺れた。無茶苦茶な威力である。
蚩尤もこの攻撃は流石に効いたのか、左脇腹を抑えながら飛び退り、ドランから距離を取る。
「硬いのお、普通の魔物ならさっきので砕け散ってるぞい?」
ドランは蚩尤の防御力の高さに舌をまきながら、ドラゴンハンマーを肩に担ぎ直す。
『ぐるるるる』
蚩尤は、ドランを四つの目で威嚇するように見つめている。
ドランに気を取られている蚩尤に、ハクが追撃するように、魔導電磁レール銃の弾丸を撃ち込む。
水竜ですら一撃で倒す威力の銃弾が、光の筋となって蚩尤にえぐりこまれる・・・
ハクは目を見張る、えぐりこんだと思われた銀色の灼熱の弾丸が、蚩尤の直前で空中静止していた。
そして運動エネルギーが熱へと変換され、まばゆい光を放ちながら蒸発する。
蚩尤の周りには、可視化出来るほど濃厚な魔力が渦巻いていた。
その魔力で魔導電磁レール銃の弾丸が止められたのだ。
「嘘だろ?こいつが効かないのかよ・・・」
蚩尤が口角をあげ、にやりと笑ったような気がする。
「もう一発いくぞい!」
ドランのドラゴンハンマーが蚩尤を再度襲う。
しかし、その攻撃は蚩尤の六つの腕の一つに難なく受け止められる。
「なんじゃと?」
呆然としているドランを、蚩尤は躊躇なく殴りつける。
ドランはゴムボールか何かのように軽々と吹き飛んでいき、床を抉りながら壁に激突。
壁を半壊させながら大量の瓦礫の中に埋まった。
ドラン、実は元将軍でした。




