祠
森を抜け、その後数度魔物に邂逅したものの、なんとかやり過ごしながらハク達は目的地の祠にたどり着く。
魔帝が治める地でありながら、魔帝の配下に遭遇しなかった事に少々違和感を感じる。
そして途中途中にあった村に人が誰もおらず、家々は破壊され、打ち捨てられるように朽ち果て廃墟になっていたのが気になっていた。
目的地の祠は、少々大きめの岩で組まれたもので三メートル四方程の小さなものだった。
奥に小さな祭壇がある。
「小さな祠だな・・・本当にここでいいのか?」
ハクが腕を組みながら、いぶしかげに呂尚に聞く。
「ここで間違いないぜ?ちょっと待ってな」
ハク達を祠から少し離させると、へらへらと笑いながら、呂尚は祠の中に入っていった。
そして、奥の祭壇の前に胡座をかくと、手で素早く印を結び、祭壇に触れる。
ガコンと言う重い音とともに、地面が動き出し、祠の前に地下へと繋がる階段が現れる。
「ふふん・・・どうだ!」
呂尚はハクたちの方に振り返る、ドヤ顔である。
「おーすごいすごい、地下への入り口が隠されてたのか」
ハクが拍手する。
「この入り口には呪術封印と機械的な仕掛けが組み合わされてるんだよ」
呂布が仕掛けを説明する。
呪印で鍵が掛けられており、開くのは重しと歯車を利用した機械式になっているらしい。
「ほほう」
ドランがペチペチと入り口の仕掛けを触っている。
これは、やばい傾向だ。
「んーけっこう深そうだねぇ、奥が見えないやぁ」
アオイが中を覗き込んでいる。
「とりあえず、ダンジョンじゃないから途中で魔物が出るとかはないけどな」
呂尚はそう言うと、ひょいひょいと階段を降りていく。
ハクたちも、その後についていく。
ミリやヴィオーラも敵地である地上に残していくわけにはいかないので、全員ついてきている。
祠の階段は地面を螺旋状に掘って造られており、呂尚によるとこの階段で数百m程地下に降りていくようだ。
造られて随分時間が経っているらしく所々崩れている。
とりあえず、それでも通路が塞がってはいないので、進行には問題はない。
だが階段を降りる度に、寒気のするような気配が徐々に濃くなっていく。
邪気などに敏感なクロクロが、その気配にあてられ少し気分が悪くなってきているようだ。
「この感じ・・・昔・・・」
クロクロの顔が青ざめている。
「大丈夫?クローディア」
クリスティナが心配そうに声をかける。
妹が、ここまで憔悴している姿はあまり見たことがないのだろう。
「この程度なら大丈夫ですわ・・・前ほどではありませんし」
クロクロはしっかりと奥を見据えている。
一時間ほどをかけて、階段の一番下へと辿り着いた。
ミリはいつのまにか、ピエールさんが背中に担いでいた。
さすがに子供にはきつい距離だった。
ヴィオーラは獣人であるせいか、小さいのに全然疲れた様子は見えない。
着いた場所は円形の広い部屋だった。
地下の洞穴を整えた場所らしく、天井は高く所々に岩が突き出ている。
奥の方に祭壇があり、祭壇の周りは東方の古い文字である甲骨文字が一面に書かれていた。
ハクはこの祭壇の形状に見覚えがあった。
「斬血丸があった祭壇と同じ・・・」
ハクは苦々しい顔になっている。
「そうだ、ここは斬血丸のような魔帝が作った魔呪兵装が安置されていた場所だよ」
呂尚が答える。
「この場所を使って、斬血丸を再封印するんだ」
あぶなく日をまたぐところでした。




