魔木
ハク達は、船を隠し、瞻部州から北上を開始していた。
今は深い森の中の道を、馬車でひたすら直進している。
「このまま北上すると、魔帝の都に着くんじゃないのか?」
ハクが魔導棺桶車両を操りながら、馬車の中にいる呂尚に聞く。
「そこまでは行かないぜ。目的地は一番外周の尼民達羅山の手前にある寂れた祠だ、荒野にある祠だから魔帝の連中もいないはず」
すでにここは魔帝が治める地であり、いつ魔帝の軍と遭遇してもおかしくない状況である。
「ここからは、そう遠くない位置だから、大丈夫・・・・って・・・くそ」
突然、周りの木々が一斉に動き出し、進行方向の道を塞ぐ。
「ちっ・・・魔木かよ・・・」
呂尚が険しい表情をしながら馬車から飛び出す。
呂尚は、いつのまにか杖のようにも見える謎の道具を手に握っている。
魔木、古い木が魔素によって変化し生まれた魔物である、動きは遅いが巨大で力も強い。
異常に耐久力が高く、剣も通りにくいため、かなり厄介な魔物である。
その数約三十体。
「海からの侵入者を待ち伏せしていたって感じか?魔木ならじっと何年でも待つことができるし、そういう役にはうってつけか」
ハクたちも馬車から飛び降りる。
「火攻めすれば簡単に倒せるが、それをやると火事になるし目立ちすぎだな、普通に戦うとするかね」
そういうとハクは魔導棺桶車両を、通常の棺桶に状態に戻し担ぎあげる。
クロクロは精霊王達を呼び出し、自分の周りに配置する。
アカネが斬血丸をすらりと抜き、舌なめずりをしている。
クリスティナのレイピアは、すでに抜き放たれており魔力で光り輝いている。
アオイはウォーミングアップをするように、ヌンチャクをビュンビュンと振り回している。
ドランは巨大な槌を肩に載せてニヤニヤしている。
ピエールさんは、いつもの様に両手に包丁を握っている。
ミリとヴィオーラは危険なので馬車の奥に身を隠してもらっている。
魔王はそこに防御結界をはり、防衛陣にする。
「さて行くか」
最初にアカネとクリスティナが飛び出し、魔木を瞬時に真っ二つにする。
だが魔木は痛みすら感じないのか、真っ二つにされていても動きが止まらず、猛然と二人へと攻撃をしかけてくる。
「面倒くさいわね」
「こいつら血が出ないキル、嫌いだキル」
二人は仕方なく何度も斬りつけ、動かなくなるまで細切れにしていた。
「九頭流、九の技の三『崩打』」
アオイがヌンチャクを魔木に勢い良く叩きつける、ボンという音とともに、魔木は細かく粉砕され一撃で動かなくなる。
気をヌンチャクに乗せて、魔木を中心から破壊したのだ。
まいどながら人格はともかく、戦闘能力は高いアオイであった。
「どっせぇええい!」
ドランが槌を振り回すと、槌のうしろが発光し急激に加速する。
ドランの槌が叩きつけられた魔木は、あまりの威力にひしゃげながら吹き飛んで行く。
・・・考えないようにしよう。
ハクは、いつものように魔木を棺桶の質量で力任せで殴りつけ、数体をまとめて粉砕していっている。
ピエールさんは、常人には到底目視できない速度で包丁を振るい、魔木を瞬時に薪の束に変えていっている。
いつものピエールさんですよね。
クロクロは優雅にお茶を飲んでいた。
火気厳禁のためエン以外の精霊王が術を駆使し魔木を倒している。
役立たずになったエンは、馬車のそばで真っ白になっていた。
魔王は魔木への攻撃には加わらず、ずっとミリとヴィオーラがいる馬車を守っていた。
呂尚は、謎の道具で戦っていた。
魔木が呂尚の道具にふれると、さほど力を加えられていないにもかかわらず、巨大な体が勢い良く空に打ち上げられ空中で粉砕される。
力学ってなんだっけと思うくらい、現実味のないおかしな光景だった。
ドランの造る武器もいい加減おかしいが、呂尚の道具もそれに負けないくらいのレベルである。
「なんだ?その変な道具?」
棺桶を振り回し魔木を破壊しながら、ハクが呂尚に聞く。
「変って言うなし!これは打神鞭、師匠の元始天尊から授かった二つの宝具の一つだよ」
呂尚は打神鞭を振り回しながら、律儀に答える。
「ん?すごい宝なのぉ?」
宝と聞いてアオイが戦闘中なのに食いつきてきた。
ドランも聞き耳を立てている。
こいつら余裕あるなぁ・・・
そして数分後、魔木は全て動かなくなっていた。
魔木は薪になりました。




