ヴィオーラ
「なに、このかわいいの」
食事の時間になったので、呂尚がポセイドーンを天に還し船へともどってきた。
そしてハクの膝の上に座っている、幼女になったヴィオーラを見て驚いている。
「おや?この魔力、あの子犬かよ。正体は獣人だったのか」
さすがに呪いの専門家だ、ヴィオーラの正体を簡単に見破った。
そして破顔しながら、ヴィオーラの頭を撫で回している。
「かわいいねぇ、この子は将来美人さんになるねぇ、オレが保証するぜ」
呂尚の顔が少々にやけている。
「手を出すじゃないぞ?」
ジロリとハクが睨む。
「ぉぉう・・・おとうさんは怖いねぇ、怖い怖い、うはははは」
呂尚は笑いながら、すたこらと自分の席へと向かっていった。
今日の食事は、龍のひき肉の肉団子スープだった。
ヴィオーラに食べさせてもいいように、やわらかく優しい味に仕上げてある。さすがピエールさんだ。
まぁ・・・材料は置いといて・・・
ハクたちも、食材については、だんだん慣れてきているような気がする。
アカネがスプーンですくいながらヴィオーラに食べさせている。
「おいしぃい!」
ヴィオーラはニカッっと笑い物凄く幸せそうに食べている。
人間の姿で食べるのは初めてなので、口からポロポロと食べている物を落とすが、それを魔王がやさしく拭っている。
「私もそれやりたいー」
「わらわ・・・も」
「ミリも食べさせたいかな!」
ヴィオーラの周りに女性陣が集まってきていた。
膝にヴィオーラを座らせているハクは、周りを女性陣に囲まれて柄にもなくアタフタしている。
「むぅ・・・なんだかハクが羨ましいのじゃが・・・」
「ドラン親方もそう思いますか?」
ドランと呂尚は、二人で酒をかわしながら、その光景を羨ましそうに見ていた。
アオイはヴィオーラに食べさせながら楽しそうにしているミリの方をチラチラと見ていた。
・・・その夜。
「あの酒・・・何かはいってたんじゃろなぁ」
「ですよねぇ」
酔っぱらいが二人、甲板で暗い夜空を見ていた。
「気が充実しすぎて、寝れないぞい?」
ドランの目がギンギンに見開かれている。
「そおいや、ピエール殿が龍の血肉は滋養強壮にいいとか言ってましたね」
呂尚の目もギンギンに見開かれている。
「・・・珍しい食材だからって、いきおいで龍酒でも作ったんじゃろなぁ・・・」
「・・・あの酒すごいね。千年以上生きてるけど、こんなに凄いのは初めてだ・・・」
寝れなくなった二人は、そのまま朝まで語り合っていたという。
そして朝、上半身裸になって、やたらテンション高く騒いでた二人を、クロクロが水の精霊王カイに命じ、水責めにして沈黙させた。
それを見ていたピエールさんは、龍の肉が漬けられた酒を船倉の棚の中にそっと封印した。
ヴィオーラは幼女の姿になっても、いつものようにアカネに狩りの技術、アオイに戦闘技術を順番に教えてもらっていた。
幼女に教えるには、なかなかハードそうな物ではあったが、ヴィオーラ自体が楽しそうにしているので、本人は二人に遊んでもらっていると思っているのかもしれない。
また彼女はライカンスロープであるためか、動きも幼女とは思えない機敏さである。
「すごいキル、子犬の時より素早いキル」
「ふふふふふふ・・・馬の野郎まっていろぉ・・・ボクの弟子は強いぞぉ」
ちなみに魔王は何かに目覚めたらしく、ヴィオーラの服を追加で何着か作り上げていた。
それから数日後、呂尚の外輪船は陸地に接岸し、ハク達は新たな地へと上陸した。
船が接岸した場所は瞻部州。
魔帝の治める国の南端の地であった。
次からは、また話があちこちに飛びます。




