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勇者はいってます。  作者: 夢見創
六章目 海原を越えていけ
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龍王・・・

「海洋を司るポセイドーンの力を示せ!神鎧ギガント降臨!」

 どこかで聞いたようなセリフが聞こえる。

 見ると呂尚が見慣れたメダルを天にかかげていた。


 天にかざしたメダルから眩しい光が発生する。

 メダルの光は天を貫き、空中に複雑で巨大な立体魔法陣が描き出される。

 その魔法陣が星のように光輝くと、その光の中から染み出てくるように、金属製の人型が現出(げんしゅつ)してくる。

 それは三叉の鉾を持つ雄々しい姿の群青色の巨人、神鎧ポセイドーンだった。


 龍王電撃ショーに集中している2人以外は、ぽかーんとそれを見ていた。

「マタフエタ・・・」


 ポセイドーンは船の甲板に着地、光で呼び出した呂尚を収納する。


 ポセイドーンは船の後部に進むと、備え付けられた巨大な竿をがっしりと握った。

 龍王が咥えた檻と、この竿とは、丈夫な金属製のワイヤーで繋がれている。

 ポセイドーンが、ぐぐっと竿を引き上げると、巨大な竿が大きくしなり、ワイヤーのたるみが取れる。

 そして、龍王が再び海中に潜れないように巧みに竿を操りはじめた。


「ハク!あいつを蛇行しながら全速でひきずり回せ」

 ポセイドーンに乗った呂尚から指示が飛ぶ。


「お・・・おぅ」

 はっと我に返ったハクが操作レバーを握り、船の最大速度である十五ノットまで加速する。

 そして左右に蛇行しながら前進する。


『ぐぉ・・ぐぉおおおおおおおおおおおおお、あひゃああああああああああああ』

 船の速度と蛇行による強い遠心力、そして竿を操るポセイドーンの膂力で、龍王が右へ左へと勢い良く振り回される。

『小癪な、ぎやぁああああああああああああ』

 龍王も必死に抵抗し、度々こちらに攻撃仕掛けようとするのだが、アオイとクリスティナペアが狙ったように電流を流しそれを阻害する。

 アオイとクリスティナには、いつのまにか嗜虐的(シギャクテキ)な笑みが浮かんでいた。



 もうどっちが悪なのか判らない。



 龍王にとって拷問のような地獄の時間が永遠と続く。

『おのれ、ぐぁああああ』

 このカオスのような状況を、クロクロと魔王がジト目で見ていた。

『あ、あ、あ、ああああああああ、ぬぉおおあああ』

 ドランが魔導蓄電池の交換や調整を無駄に手際よくやっている。

 おかげで龍王はアオイとクリスティナに絶え間なく電流を流されるはめになっている。

『ビリビリはやめてぇええ、ぴぎゃあああああああああああああああああ』

 ハクの荒い操船に船酔いしたのか、ミリはキャビンの長椅子の上でぐったりしていた。

 まぁ、この恐ろしい光景をミリに見せなくてよかった気がする。

『やめてぇえええええええ、とまってぇえええ、うぎゃあああああああああああああ』

 アカネは、龍に近づくことが出来ないため、不満そうにしながら「きるきるきーるきるきるきーる」と謎の鼻歌を歌っていた。


 ところでピエールさん、そんなに龍王を見つめてどうする気ですか?

「ソテーがいいデースかね・・・それともシチューがいいデースか・・・ふーむ」

 龍王、すでにピエールさんのターゲットになっていた。




 数時間後、ついに龍王は力尽き、海面に横倒しになった。

 何百何千回と電撃を体に流されたため、あちこちから煙が上がっている。

 目からは生気が完全に失われ白く濁っている。


 酷い惨状だった。


 操舵していたハクも、さすがに魔力が尽きたのか、大粒の汗をかき肩で息をしている。


 アオイとクリスティナは、目で合図し、頷きあう。

 そして、息も絶え絶えになっている龍王に飛び掛かっていった。


 龍王は飛びかかってくる二人をぼんやりと見ていた、抵抗するにも、もう指一本ですら動かせない。


 アオイは膨大な気を溜めた掌底を、龍王の胴体へ叩きつける。

九頭流(クズリュウ)、六の技の奥義、血壊滅波(けっかいめっぱ)

 掌底が叩きつけられた場所を中心に海に白い波紋が広がる。

 龍王の体に流れる血と体液に、アオイの膨大な気がなだれ込み瞬時に膨張、龍王の体のあらゆる部分が内側から破裂していく。

 体中をずたずたにされていくような激痛に、龍王がこの世の終わりのような絶叫をあげる。


 クリスティナはライトレイピアに魔力を込め光輝かせる。

 そして叫び声をあげている龍王の側頭部に、光を放つレイピアの剣先を突き入れた。

 斬れ味の増大したライトレイピアは、龍王の硬い頭蓋をたやすく突き抜けると、あっけなく龍王の脳髄を貫いた。

 クリスティナは冷たい目をしながら、ライトレイピアをゴリっとひねり、そのまま引き抜く。


 大量の血と脳漿が吹き出し、あたりに撒き散らされる。海が真っ赤に染まる。


 龍王の絶叫は止まり、数度痙攣したかと思うと、そのままピクリとも動かなくなった。




 それを見ていたハク達は、アオイとクリスティナの悪鬼のような所業に戦慄をおぼえていた。


「・・・参加・・・出来なかったキル」

 アカネががっくりとうなだれていた。


「コヤツラニカカルト・・・天龍八部衆デスラ・・・コレカ」

 魔王は頭を抱えていた。



 龍王、いいところ無しで退場。

・・・龍王・・・乙

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