龍を釣ろう
魔王は水着を着て、チャプチャプと海を漂っていた。
しかもアダマンタインで出来た異常に頑丈な檻の中にはいっている。
「・・・」
魔王は遠い目をしていた。
ドランが改造し外輪船になってしまった船の甲板の上には、死んだ目になっているアオイとクリスティナがいた。
なんでこうなった?
呂尚の龍を釣るという荒唐無稽な目的を達成するため、ハク達は洞窟から完成した外輪船を出航させていた。
長期に渡るかもしれないし、そもそもあの街に戻ることもなさそうなので、荷物やユニコーンが率いる馬もすべて積んである。
馬車も解体されてコンパクトになって積まれている。
食料は一ヶ月分位はあるようだ。
船の操舵はハクが担当していた、操作は魔導棺桶車両と同じになっていたので、ハクには馴染み深い物だった。
まぁ、そもそも駆動系が棺桶そのものという話もある。
速度もこの時代のものとしては格段に早く、常時で十ノット程度の速度が出ている。
最高速度は十五ノットだとドランは言っていた、それ以上の速度は外輪が流石に耐えられないそうだ。
駆動用の魔力は魔導棺桶車両よりも格段に増えていたが、そもそも魔力が有り余っているハクにはあまり関係がなかった。
なかなか快適な船出だった。
そうやって4時間ほど進むと、龍の出るという海域に到着した。
呂尚が半日はかかる距離とか言ってたのを、その3分の1で到着してしまった。
ドランのバランスブレイカーっぷりが怖すぎる。
「これから、エサを船で引っ張りながら釣るトローリングで龍を釣ります。ただ龍を釣るには、特殊なエサが必要なんです」
呂尚は、これから始まる龍釣りについて説明を始めていた。
呂尚の後ろにある、布で隠された4メートル前後の物体が少々気になるが後にしよう。
「特殊なエサ?」
呂尚は、ぐっと手に力を込めて言い放つ。
なぜかマオをチラチラと見ている。
「龍は、美少女を好むのです!」
全員目が点になった。
「幸いココには、美少女がたくさんいます!エサとしては極上です!」
呂尚が腕をあげる。
「まてまて、俺の仲間にそんな人身御供のような事はさせないぞ」
ハクが抗議する。
「もちろん、餌になってくれる方の安全は確保しなければなりません。ということで、ドラン親方に頼んで、こういうものを造ってもらいました!」
え?ドランがなんだって?
呂尚がばさっと布を外し、中身が現れる。
二艇の小型船の間に、アダマンタイン製の檻が挟まっていた。
そのアダマンタイン製の檻は、船の後部に設置された、マスト改造の巨大竿とワイヤーでガッチリと繋がれている。
「このアダマンタインの檻なら、どんなに龍の噛む力が強くても、絶対に中の人は安全です!」
いわゆるシャークケージの龍用である。
「不測の事態にも対応する、緊急脱出装置も完備しております!」
檻は二重構造になっており、内側の檻が緊急時には射出されるようになっていた。
ほんとうに大丈夫なのかとドランをみると、あさっての方向を見ながら口笛をぴゅーぴゅーならしていた。
クロクロがジト目でドランを見ている。
「この檻に龍が十分に食いついたら、このレバーを倒します」
檻の内側には怪しげなレバーと怪しげな筒が複数本付いていた。
「このレバーを倒すと、この筒から固定フックが射出され、檻が龍の口に固定されます」
なかなか凶悪な仕掛けが装備されてあった。
フックには無数の返しがついており、突き刺さったら抜けないようになっている。
「それで餌になってくれる、美少女はいますかね」
すると、アオイとクリスティナが躊躇なく手を上げた。
「美少女といえば僕じゃないのぉ!僕がやるのぉ!」
「し・・・しかたがないな、美少女が必要というなら餌をやってもよい」
二人と魔王以外が白い目になっていた。
第一のエサ「アオイ」
数時間曳航するも、ヒットの気配なし。
「やっぱり男は無理なんだろな」
「龍のやつぶっころぶっころぶっころ・・・」
アオイが恐ろしい事をつぶやいていた。
第二のエサ「クリスティナ」
やはり数時間曳航するが、ヒットする気配がない。
「クリスティナ様だと、若さがたりないのかねぇ」
「まてぇえ!私はまだ十代だ!おい!何だその目は!」
クリスティナの抗議は無視された。
「やっぱり、マオさんだよねぇ」
「師匠しかいないかな」
「だよねぇ」
「ですわね」
自分が美少女であるという自覚の無い魔王は、目を白黒していた。
第三のエサ「マオ」
曳航3分・・・
ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイット!
速攻でヒットしやがりやがった。
『美少女!ハァハァ!美少女!ペロペロ!』
魔王が入っている檻をガッチリ咥えた龍が出現した。
全長50m、東方の龍の特徴である蛇のような長い胴体に強靭な四肢を持った巨大な龍だった。
魔王は檻の中で硬直していた。
アダマンタインの檻が壊れる事はなさそうだったが、檻を覆いつつむ程の巨大な口蓋は予想外だった。
『かぐわしき香り!もうしんぼうたまらん!』
檻の隙間から龍の舌が侵入し、魔王をぺろりと舐める。
『これは極上の美少女の味、デリシャース』
「イーーーーーーーーーーーーーーーーヤーーーーーーーーーーーーー!」
魔王の背中に怖気が走り、心の底から絶叫した。
龍は変態でした。
最近変態成分減ってましたし・・・遠い目




