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勇者はいってます。  作者: 夢見創
六章目 海原を越えていけ
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悪夢蹂躙

 女は足を組み空中で座るようにしながら、悠然とハク達をみている。

 そして、その周りには可視化するほどの暗く濃い魔力が渦巻いている。


「お前は誰だ?」

 クルガリオが斬馬刀を構えながら問う。

 グロウも大剣を抜き構える。


「女に刃物を向けるなんて無粋ねぇ・・・ふふふふ、でも、いいわぁ教えてあげましょう。私は『黒の魔女』よん」


『黒の魔女』この名前に全員に戦慄が走る。


「黒の魔女?冗談も大概にしろや」

 クルガリオが叫ぶ、だが体は感じている、目の前の女は本物の『黒の魔女』であると。

 背中に冷たい汗が流れる。


『黒の魔女』

 歴史の節々に現れ、世に(わざわい)と混乱をもたらすという伝説の魔女。

 もし伝説が本当であれば、、数千年の時を生きているという化物である。

 血と殺戮をなによりも好み、その絶大な魔力で街をまるごと塩の結晶に変えたとも、ネズミを操り伝染病を蔓延させ数百万人を殺したとも言われている。

 生きる災厄、それがこの黒の魔女である。


 ハクやアカネは足の震えが止まらない。

 いつも冷静なクロクロも真っ青な顔をしている。

 目の前にいるものは、圧倒的な力を持った闇であった。

 彼女に比べれば、さっきのベヒモスなぞ子猫にも等しい。


「あはぁん、信じられない?それじゃぁ、そこの聖女ちゃんでも殺してみせましょうか?」

 黒の魔女は口角をあげ壮絶な笑みをみせる。


「やらせるかよ!」

 クルガリオとグロウリオンが、魔女に向かって走る。

 そして、魔女に必殺の刃を叩き込む。




 二人の剣撃が途中で止まっている。

 彼女の(まと)う魔力の渦に受け止められたのだ。

 勇者の剣撃すら阻むのか?


「あはぁん、思ったより凄かったけど、その程度では、まだまだ私にはとどかないわよん?」

 魔女はそういうと、魔力を膨張させる。

 その魔力に、二人の偉丈夫があっけなく吹き飛ばされる。

 まるで巨大な物体に弾き飛ばされたような勢いで、二人は、床を数度バウンドしそのまま壁に叩きつけられる。

 あまりの衝撃とダメージに二人が苦悶の表情をうかべる。

 体中に傷がつき血が濁流のように流れる、骨も何本か折れているようだ。


 一撃で、あの二人が満身創痍になっている・・・なんという力なのか。


 クロクロが二人に駆け寄り、回復の奇跡を掛ける。

 二人は重傷であり、クロクロの力を持ってしても、すぐには直せない。


「このままでは全滅する・・・なら」

 二人の姿を見て、意を決したハクは、呪文を唱えながら魔女の近くまで走りだす。


「ハクお兄ちゃん!」

 アカネが悲痛な叫び声をあげる。

 ハクは近づこうとするアカネに来るなと手で静止する。


 ハクの魔法は欠陥品だ、ハクが下手な魔法を使うと、ハクの内にある膨大な魔力が暴走し、ハク自身を巻き込みながら周りに大破壊をもたらす。


「魔女!俺とともに逝け!」


「あらぁ?自爆?やらせないわよぉ?」

 そういうと、魔女はハクから溢れだした魔力に食らいつく。


 そして文字通り魔力を食った。


「賢者ちゃんの魔力、なかなか美味しいわねぇ」

 舌なめずりしながらハクを見る。


「な・・・なんだと」

 ハクは力の殆どを持って行かれ、その場にひざまずく。

 展開中だった呪文もあっけなく霧散する。


 そのハクの顔面を、魔女が容赦なく蹴り飛ばす。

 ハクは壁に叩きつけられ、左目から血を流しながら倒れる。

 アカネは声にならない悲鳴をあげながら、ハクに駆け寄る。


「じゃぁ、聖女ちゃん。そろそろ死んでちょうだいね」

 そういうと、魔女の手のひらの上に、ほんの数センチ程度の黒い魔力の塊が生まれる。


 あれは「死」の塊だ。

 死が凝縮された物だ。


 魔女はその黒い塊を、クロクロに向けて放つ。


 クロクロは右手をかざし、守護の奇跡を何重にも展開する。

 その聖女の奇跡を、黒い塊はあっけなく食い破る。


 クロクロは死を覚悟した。


 その時・・・


 横合いからクロクロは弾き飛ばされる。


 そこで見たものは、クロクロの代わりに黒い塊を体で受け、ゆっくりと倒れゆく、勇者グロウリオンの姿であった。


「グロウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 クロクロが絶叫した。

過去話はもう一話続きます

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