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勇者はいってます。  作者: 夢見創
六章目 海原を越えていけ
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ベヒモス

 きっかけはクルガリオが、新しく見つかったダンジョンを見に行こうと言う軽い話だった。

 小規模のダンジョンらしく、まだダンジョンに挑んだことのないクロクロとアカネに、ダンジョンがどんな場所か見せるのに丁度いいんじゃないかという、クルガリオの配慮だったのだろう。

 グロウも同行するということで、戦闘力も過剰な程であった。


 ダンジョンは、4階層程の浅いダンジョンで、強い魔物も出現しなかった。

 ダンジョンのような狭い場所の戦闘には役に立たないハクは、ダンジョンの地図作成と罠の解除をやっていた。

 戦闘力は他で補える為、適材適所と言った感じである。

 ハクは持ち前の知識で、罠の解除を手際よくやっていく。


「流石だなハク。ただ、やってることだけ見ると、賢者というより盗賊っぽいな」

「うるさいよ、クルガリオ様」

 ハクとクルガリオは、そう言い合いながら楽しそうに笑っている。


 アカネも故郷の村で鍛えられた能力と弓で、敵をすばやく発見し的確に仕留めていく。

 クロクロが展開している守護の奇跡のおかげで、敵からの攻撃もほぼ無効化されていた。

 アカネの対処できない敵は、クルガリオとグロウが一撃で倒していく。


 順調すぎるくらい順調だった。




 そして半日ほどで最奥の部屋にたどり着く。

 最奥の部屋は、半球状の部屋になっており、天井と壁には星の配置図が美しく描かれていた。

 ダンジョンとは思えないほど荘厳な部屋である。


 その中央にダンジョンのボスらしき魔物が鎮座していた。


 象頭人身の魔物「ベヒモス」だ。

 地上では最強級と言われている魔物であり、その力は竜にも匹敵する。

 この程度のダンジョンにいるはずのないレベルの魔物である。


「なんでこんな所にベヒモスなんて化物がいるんだ?」

 ハクがベヒモスを視認してうめく。


 だが、こちらにはクルガリオと、そして勇者グロウがいるのだ。

 相手がベヒモスであっても負ける気がしない。

 グロウとクルガリオが、ベヒモスに向かって歩き出そうとする。


 それをクロクロが静止する。

「ここは、わらわとアカネが行きますわ」

 クロクロが白い(・・)天使のようなドレスをひるがえしながら前に進み出ると、クロクロをとり囲むように6体の精霊王達が現れる。

「ゆきなさい」

 クロクロがベヒモスを指すと、精霊王達が一斉に「うぉークロクロ様のためにー!」とか雄叫びを上げながらベヒモスに攻撃を開始する。


 精霊王達は、矢継ぎ早に精霊魔法をベヒモスに向かって放つ。

 一発一発が上級魔道士の最大魔法に匹敵する威力がある、それがベヒモスを中心に乱舞する。

 巻き込まれたら、人ごときは蒸発し骨すら残らないレベルである。


 ベヒモスは突然の攻撃に一瞬怯むものの、その魔法攻撃の殆どを軽々と防ぎ、さらには弾き返している。

 かろうじて当たった部分も、たいしたダメージになっていないようだ。

 圧倒的な魔法防御力。さすが最強級の魔物。

 精霊王達は驚きを隠せない。


 ベヒモスは、うるさそうに巨大な腕を振り精霊王達をなぎ払う。

 精霊王達は勢い良く弾き飛ばされ、壁や床に打ち付けられる。

 凄まじい威力であり、いかな精霊王とはいえども、すぐには立ち上がれない。


 邪魔者を排除したベヒモスは、自分の手の上に魔力を集め、黒く長い槍を作り出す。

 禁呪級の呪文「闇の槍」である。

 闇の毒をまとうその槍は、かすっただけでも人は地獄の苦しみで悶絶し、やがて死に至る。

 直撃しようものなら、その時点で跡形もなく消し飛ぶだろう。

 その槍を、精霊王を自分にけしかけた、クロクロに向かって投げつける。

 ベヒモスから放たれた闇の槍は、闇の光となって真っ直ぐにクロクロに飛んで行く。


「甘いですわ」

 クロクロが手を前にかざすと、ベヒモスの闇の槍が霧散する。

 聖女の守護の奇跡は、ベヒモス級の魔法ですら通さない。


 ベヒモスは驚愕した。

 自分の魔法攻撃を小さな子どもが簡単に防いでみせたのだ。

 信じられないものを見るかのように、ベヒモスの動きが一瞬止まる。


 一瞬動きを止めたベヒモスの右目に深く矢がささる。


 激痛が襲い、ベヒモスが絶叫をあげる。

 叫び声で空気がビリビリと震える。


 ベヒモスの右目に刺さった矢は、アカネが放った矢だ。


 アカネは戦闘が開始された直後から、ベヒモスの死角へと疾く静かに移動し、静かに息を潜め必殺の機会を狙っていたのだ。

 アカネは天性の狩人である。

 感の鋭い野生動物ですら、彼女の気配を探ることは出来ない。


 ベヒモスは眼球ごと矢を引き抜き、矢を放った者を怒りの雄叫びを上げながら探す。

 だが、いくら探しても、アカネを見つけ出すことが出来ない。

 ベヒモスからギリギリという激しい歯ぎしりが聞こえる。


 アカネは、ベヒモスのすぐ傍にいた。

 音もなく移動し、ベヒモスの死角へと入っていた。

 そして絶対に外さない位置からアカネは矢を放ち、ベヒモスの残った左目もあっけなく潰した。


 視界を失ったベヒモスは、血の涙を両目から流しながら、人の胴体ほどもある腕を盲滅法に振り回し、まるで竜巻のように周り物を破壊していく。


 しかし、そんな出鱈目な攻撃がアカネやクロクロに当たるわけがない。


 クロクロは安全地帯まで優雅に後退し。

 アカネはベヒモスの攻撃を、至近距離でゆらりゆらりと避けながら、全身の筋肉の健を矢で的確に撃ち抜き、ベヒモスから力を徐々に奪っていった。


 ベヒモスは最後に足の健を撃ちぬかれ、たまらず地面に倒れこむ。


 倒れたベヒモスは厭忌の叫びを上げながら膨大な魔力を練り込みはじめる。

 ベヒモスの姿が霞むほど、濃厚な魔力がベヒモスの周りに集まり始める。


 視力を失い、足は潰され動くこともままならない。ではベヒモスはどうする?


「全方位への無差別魔法かな。直接当てられなくても、この部屋自体を破壊し、全員を瓦礫で圧殺すると言ったところか」

 ハクが冷静に分析する。


 それを聞いたクロクロが、ベヒモスをキッと見据え、腕で大きく十字を切る。

「断罪の奇跡」

 クロクロの声と共に、巨大な光の刃がクロクロの目の前に出現し、即、ベヒモスに向かって床すらも切り裂きながら放たれた。

 そして、ベヒモスの魔法がまさに完成する直前。

 ベヒモスの腕を、足を、最後に首を切断した。


 まさに断罪したのだ。

 ベヒモスの頭は地面に転がり落ち、苦悶の表情のまま永久に沈黙した。

過去話はもう少し続きます

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