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勇者はいってます。  作者: 夢見創
六章目 海原を越えていけ
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摩睺羅伽王

 クルガリオは愛馬に乗り風のように駆け抜けていた。

 クリミナスによってしたためられた命令書を、後方の人の陣営へと一刻も早く渡さねばならない。

 クルガリオの周りには、ザキラの配下の精鋭が付き従っている。


 昼夜問わず走り抜ける強行軍で2日はかかる。

 魔物さえ現れる危険な道中である、クルガリオ以外にはこの役目は出来ないだろう。




 不意に気配を感じ、馬を止める。

 ザキラの配下も、一斉に周りを警戒する。


「おい・・・そこに隠れてる奴出てこい」


 草むらより、ぬるりと大蛇が這い出てくる。

 邪悪な雰囲気を纏った巨大な蛇である、けして普通の蛇ではない。


 大蛇は、クルガリオの目の前にするすると進んでくると、人間の男の姿へ化身する。


 その男は、見た目は一見普通の人間に見えたが、首には蛇のような鱗があった。

 男の目は細く鋭く、金の瞳の瞳孔は縦に裂けていた、全体から薄ら寒い雰囲気のする男であった。

「さすがは暴風将軍クルガリオ様、わたくしにお気づきになられましたか」


「寒気のするような気配だしてりゃ気づくぜ。お前は誰だ?」

 クルガリオは斬馬刀を背中から引き抜き、馬から降りる。


「わたくし天竜八部衆の一人摩睺羅伽王(まこらがおう)と申します」

 男は貴公子のように胸に手を当て、うやうやしく名を名乗る。


「よりにもよって・・・魔帝の将の一人かよ・・・やる気か?やる気ならここで相手するぜ?」

 クルガリオは斬馬刀を構え、ジリジリと相手との間合いをはかる。

 ザキラの配下もいつでも飛びかかれるように、体を低くし力をためている。


「いえいえ、そのような・・・わたくしごときが、名高いクルガリオ様に勝てるわけもなく」


 クルガリオは嘘をつけと心のなかで思っていた。

 摩睺羅伽王は無防備に見えて、一切の隙がない。

 このまま戦闘になったら、五分五分・・・いや相手の方が勝つ可能性のほうが高い。

 それぐらいの実力を、こいつは隠している。

 クルガリオの背中に冷たい汗が流れる。


「じゃあ何をしてたと言うんだ」

 クルガリオが問う。


「わたくしは、貴方と夜叉王が死皇帝様の手のひらの上で踊るさまを観戦していただけですよ?」

 摩睺羅伽王は薄笑いを浮かべている。


「クフフ・・・たまに雑用を言い渡されることはありますが、わたくしは基本的に傍観者なのです。夜叉王が勝とうが負けようが、わたくしにとっては演劇をみていると同じこと、客席から楽しい劇がみられれば満足なのです」

 摩睺羅伽王は舌なめずりをする、男の下は先が二つになっており人間の舌よりも細く長っかった。


「つまり、お前は見ているだけで、俺達の邪魔も、夜叉王の味方もしないということか?」

 クルガリオは警戒をとかず、摩睺羅伽王に問う。


「ええ、せっかく面白く(・・・)なりそうなのに、水を指したりはいたしませんよ。クフ・・・クフフフフフ・・・」


「それを信じろと?」


「信じても信じなくても良いですよ?あぁ・・・そろそろ、砦の方も楽しくなりそうですね。これは急いで戻り観戦しなくては・・・それではまた、どこかでお会いいたしましょう・・・クフフフフ」

 摩睺羅伽王はそう言うとニヤリと笑い、再び大蛇になりしゅるしゅると何処かへ消えていった。


 摩睺羅伽王が立ち去るまで、クルガリオ達は一歩も動けなかった。


「魔帝の一味も一枚岩じゃないということか?・・・しかし不気味な野郎だぜ・・・」

 クルガリオは斬馬刀を背に戻し、ふぅと息を吐いた。

次回から、少し長め過去話が始まります。

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