威力偵察
「死皇帝様が、全世界へと宣戦布告をしただと?」
夜叉王は生き残った十万と、新たに下賜与えられた七十万の兵力で、軍の再編成中であった。
流石に八十万の兵力を運用するのは、戦上手の夜叉王とは言え並大抵のことではない、昼夜問わず指示を与えづづけている。
「早過ぎるな、我らが魔王軍を蹴散らしてからでも、遅くはないと思うが・・・」
夜叉王はその美しい顔を歪め、険しい顔をしている。
「死皇帝様は気まぐれなお方ですので」
部下の一人が言う。
「ふむ・・・では、我らが先陣をきらねばならぬな・・・再編はどのくらいまで進んでいる?」
「7、8割というところでしょうか?」
「飛空部隊ニ万を率い魔王軍のいる砦へ威力偵察を行え。やつらの出方をさぐるだけだ、深追いをする必要はないぞ」
「ははっ」
部下たちが、部屋から出て行く。
夜叉王は、周囲の地図を広げ作戦を練る。
こちらの兵力は敵の約3倍、砦に引き篭もろうとも潰せる兵力である。
だが、こちらが敗走してから3週間がすでに経っている。
やつらも戦力を増強しているかもしれない。
「人の軍は、いつ到着する?」
ゴウラがクリミナスに問う。
「近隣の国からは数日、クロノクロスが率いる人類軍の本隊は少なくとも、あと一週間かかる」
「魔王国からの増援も一週間・・・この一週間が踏ん張りどころでございますね」
マキラが腕を組んで険しい顔をする。
「ならば・・・」
「敵襲!!!」
伝令が司令室へと飛び込んでくる。
空を見上げると、空をとぶ魔物たちが砦に向かって侵攻してくるのが見える。
「貴君たちと我らが手を組んでいることを知られては不味い、今回の迎撃はお願いします」
そうクリミナスがゴウラに進言する。
「仕方ないな・・・あとでしっかり働いてもらうぞ、バイラも来い」
人に対してのわだかまりがあるのか、ゴウラは憎々しげな表情である。
「わかったブーン」
こっちは、いつもの調子なのでよくわからない。
「では私は対空砲火の指示を行います」
マキラは一礼し闇に消えていく。
「ガルル、儂は待機か相手が空では致し方ない・・・グルル」
「ちきしょう・・・俺が出れないのは口惜しいな」
クルガリオとザキラは出撃できず、残念そうにしている。
「今はまだ抑えておけクルガリオ。お前はこの作戦指令書を持って後方へと走れ」
クリミナスはクルガリオにクロノクロスの花印がおされた封書を渡す。
中にはマキラとクリミナスが計画した指令書が入っている。
「わかったよ兄貴」
「ガルル・・・クルガリオ殿、儂の配下も連れて行くが良い」
ザキラは配下で特に足の早い精鋭をよびだし、クルガリオにつけた。
「ありがたい、ザキラ殿」
クルガリオとザキラの配下は司令室を飛び出していった。
敵との空中戦は、やはり積極的な戦いにはならなかった。
敵は対空砲火がギリギリ届かない位置で陣取り、ゴウラの飛竜部隊からも一定の距離を保っていた。
砦をぐるっと廻るように移動し、何かを探っているような動きである。
ゴウラやバイラたちも、不用意に近づいた敵を落とすだけで、対空援護のない場所に陣取る相手の方にはあえて攻め入らなかった。
相手の部隊は飛空部隊だけでニ万だ、勝てない数ではないが、今の状況では迂闊に戦端を開き味方の数を減らすわけにもいかない。
したがって、敵、味方とも損傷は軽微である。
敵との戦闘はわずか一刻程度で終わり、魔帝軍はたいした戦果も無く戻っていった。
「煮え切れぬな」
ゴウラは去っていく敵を見据えながら、不満そうにしていた。
「やつら、本気でやる気なかったブーン。まぁ僕はやることはやったブーン」
バイラは前足をワキワキしていた。
その前足には、蚊ほどの小さな虫がとまっていた。
「やはり威力偵察ですね・・・ふむ・・・放った斥候からの報告はどうなっていますか?」
クリミナスは先の戦闘を影から見ながら、敵の動きを的確に判断を下していた。
斥候部隊のサイレントスライム、サイムがクリミナスに報告する。
「敵将は夜叉王、敵の数は約八十万スラ。本隊の再編も7、8割終了してるスラね。士気も高いスラ、いつでもこの砦攻めてこれるスラね」
「次は本格的に攻めてきますね。では・・・手はず通りに、この砦を捨てましょうか」
あっちもこっちも




