親方!
ピエールさんの作った朝食を食べながら。呂尚とハク達は話をしていた。
しきりに呂尚が「うめぇうめぇ」と言っている。
街があの調子だと、まともな飯にありつけていないのかもしれない。
「この船は、龍に潰されたこの国の船を、オレが修復したもんだ」
竜骨が無事だった軍のガレオン船をベースに、他の船のパーツを移植して建造したらしい。
二個一どころが五個一くらいのパーツを使ってるから、ツギハギ感がある。
「この船を、一人で修復じゃと?」
ドランが船を見上げる。
「この船の規模だと、百人くらいの職人が必要じゃぞ?」
ドランなら一人でも出来そうだけどな。
「あぁ、オレはちょっとした特技があってだな」
そういうと呂尚は懐から紙の束をとりだし、空中にばらまいた。
すると、その紙一枚一枚が、1メートルから2メートル前後の大小様々なサイズの魔物に変化する。
その数はゆうに100匹を超えている。
武器は持っていないようだが、個々の保有魔力も高く、とにかく数が多い
ハク達全員が武器を持ち身構える。
「まてまて、襲わないから安心しろ」
呂尚が皆を止める。
「こいつらはグレムリンか?」
ハクが呂尚に聞く。
「んーどっちかといえば、そっちでいう使い魔かゴーレムに近いな。オレの生まれ故郷では式神と言っていた」
呂尚は、近くに寄ってきた式神の額をツンツンとつつく。
よく見ると、式神の額にはさっき投げた紙がくっついている。
「その辺にいる雑霊を、この符に定着させることで造ることが出来るんだ」
どちらかというとネクロマンシーに近くないか?
「そして、こいつらはオレの命令で動かせるんだ、複雑は事はできないが、単純作業や力作業は十分に任せられる」
呂尚が相当な実力者である事はハクも予想はしていた。
なんせ全世界を一人で渡り歩いているのだ。あらゆる事に対処できる能力がなければそんなことは出来ない。
「なるほど、いまいち雑な仕上がりなのはそのせいかの」
ドランが苦笑いをする。
「んー?ドワーフのおっちゃん、船に詳しいのか?」
呂尚は、さっきからうるさいドランを見る。
「俺様は、刀剣から建造物、船に至るまで何でも作れるぞい」
ドランは腕を組みフンと胸を張る。
「その切り傷だらけの顔・・・もしかして魔改鍛冶ドランかい?」
「そうじゃ、俺様こそ世界一の鍛冶職人ドランじゃ。俺様にまかせれば、龍ごときに潰される心配の無い船に仕上げてやるぞい!」
ドランが腕まくりをする。
呂尚が目をキラキラさせている。ドランの実態をまだ知らないようだ。
「すっげえぇええ!ドランさん!いやドランの親方!よろしく頼みますぜ!」
その言葉を聞いて、ハク達は一斉に目をそらした。
ドランとハク達は、呂尚のガレオン船の中を見て回っていた。
急造で造られたため、素人目にもあっちこっちに粗がある。
ちゃんと浮いてはいるのだが、なんとなく不安がある。
ドランを見ると、図面を見ながら少々難しい顔をしている。
「改修と改造で合わせて一ヶ月じゃな、このまま海に出たらそのまま沈みかねんぞ?」
ドランが側壁や床を叩くと床がギシギシと嫌な音を立てる。
「一ヶ月か・・・長いな、呂尚、お前本当に『太公望』を知ってるんだろうな?」
「オレは嘘はつかねえ、龍を釣り上げたらちゃんと教えてやるよ。なんだったら会わせてやってもいい」
呂尚の手伝いを断り先に進んだとしても『太公望』についての情報が手に入るとは限らない。
胡散臭い男だが、ハクは呂尚を信じるしかない。
「それで俺達に手伝ってほしいことってなんだ?」
ハクは手伝いの件を切り出す。
「この船の乗組員だな。式神は単純作業はできるけど、個々に状況を判断できないから、臨機応変に対応できないんだよ」
「俺達は素人だが、それいいのか?」
「最初はこの街の漁師に頼もうかと思ったんだが、龍にビビって乗船してくれねえんだ。その点あんたらなら龍相手でもビビりそうにないしな。どうせ、すぐ近くの沖に龍はいるんだし、すこーし操船のことを学んでくれれば大丈夫だぜ」
本当に大丈夫なのか?
「うっし・・・大体把握した。作業をはじめるぞい。呂尚!式神を連れて来い」
「あいよ!ドランの親方!」
図面になにやら怪しげな物を付け加えながら、ドランが船の改修作業を始めた。
ハク達は・・・きっと碌でもないものになるんだろなぁと、半ば諦めていた。
またドランが・・・




