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勇者はいってます。  作者: 夢見創
六章目 海原を越えていけ
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釣り船

 酒場では太公望について、あれ以上詳しい事が聞けなかった。

 そもそも手伝いの件が迂闊に話せないことらしく、落ち合う場所と時間を決め後で会うことになっていた。

 他の仲間も連れて来ていいらしい。

 胡散臭い事この上ないが、ハク達に対し罠を仕掛けても罠ごと踏み潰されるだけだろう。


 ハク達は、日がまだ登らぬ時間から行動を開始していた。

 呂尚が指定した時間は翌朝の早朝。人通りが少ない時間である。


 ハク達に付けられていた護衛達は、ホテルの厩で真っ白になっていた。

 アオイが妙にツヤツヤしている。

 何が起こったのかは想像にまかせる。

 これでもうハク達を監視する者はいない。


 ハクは走りながら、クロクロから街の事情を聞いていた。

「龍と国軍か・・・相手するなら国軍のほうが楽だけど、さすがにこの国と敵対関係になるのは不味いよなぁ」

 ハクの口ぶりからして、この国の軍程度はなんとかなるということか。

「そうですわね、クロノクロスに対し難癖をつけられそうですわ。ただクリミナス兄様なら逆手をとりそうですけど」

 ハクの頭にクリミナス宰相の顔が浮かぶ。たしかにあの人ならやりかねない。

「ここで足止め食らうのも勿体無い、太公望の話を聞いたら、そっちもなんとかしないとな」


 まだ暗い街中を、彼らは風のように走り抜ける。

 ミリはピエールさんの背中でまだ寝ていた。ものすごい速度で移動しているのに揺れをミリには感じさせていないようだった。

 まぁ・・・ピエールさんだし。

 子犬はアカネの頭の上で、静かにしている。

 魔王は眠れなかったのか、目の下にクマが出来ていた。

 ドランは昨夜あれだけ飲んでいたのに、そんなことは微塵も感じさせない。

 クリスティナは腹を抑えている腹が減っているようだ。そおいや朝飯抜きだっけ。


 指定された場所は、うら寂れた地域の路地裏であった。

 ますます胡散臭い。盗賊の襲撃とかに使われそうな場所である。


「ようハク、時間通りに来たな。お仲間もみんな来たようだな」

 呂尚が、ひょこりと路地裏の角から顔を出す。

 神出鬼没なやつである。


「んじゃ、オレに着いてきな」

 呂尚は、路地裏の奥に皆を誘導する。


 路地裏の先には、古い井戸があった。

 呂尚はその井戸に、隠してあった縄梯子を取り出し、井戸に設置し先に降りていく。

 ドランと魔王は、その後を追うように降りて行く。

 クロクロは大鎌が邪魔になるのか、闇精霊に大鎌を収納させ、降りていった。

 ハクは先に棺桶を紐で吊って降ろし、その後滑るように降りていった。

 アカネとアオイ、クリスティナ、そしてピエールさんは縄梯子すらも使わず飛び降りていった。


 下では呂尚が待っており、全員が降りてきたのを確認すると、縄梯子を外し井戸の上から見えない場所に片付ける。


 井戸の底には、横穴がありその奥には古い地下道があった。

「昔の貴族が作った、非常時の逃走経路だよ」

 呂尚はそう説明した。

「よくある話ですわね」

「そうね」

 皇族の二人が頷いてる。


 クロクロが光の精霊王メイに命じ、明かりを灯す。

 地下道はダンジョンのように複雑に入り組んでいたが、呂尚は迷うこと無くスイスイと進んでいく。

 何十、何百と無くこの経路を使っているにちがいない。

「美人さんばっかりで羨ましいねぇ」

 呂尚は軽口を叩いている。

 


 下水が流れ込んでいるのか、所々異臭がする場所があったが、それは風の精霊王のフウが匂いを分解し浄化していた。

「明かりといい、精霊は便利だねぇ」

 呂尚はそれをみて羨ましそうにしていた。


 数百メートルは進んだろうか、ハクの計測では、街の外までこの地下道は繋がっているようだ。

「そろそろ目的地だよ」

 呂尚がそういうと、奥に光が見えてきた。



 地下道の先は自然の洞窟に繋がっていた、波の音が聞こえると言うことは海に面しているのだろう。


 そして、洞窟には一隻の船が浮かんでいた。

 その船は、もとは外海を行き交う商船か軍艦だったと思われる大型のガレオン船であった。

 全長は60メートル、全幅12メートル、見た目は海賊船のような風体である。

 しかも左右に砲台まである。


「おっきい船かな!」

 ミリが起きたらしい。船を見て少し興奮しているようだ。


 ピエールさんはミリを背中から下ろすと、おもむろに朝食の準備を始めた。

 動じないなぁ・・・

 新鮮な食材が手に入らなかったらしく、保存食を色々加工している。


 ドランは興味津々なのか、船の周りを丹念に調べている。

 ときどき、うほぉとか、ここはーとか言っている・・・嫌な予感しかしない。


 ハクが船を見回す。

 見れば見るほど巨大である、帝国にもこのサイズの船はあまり存在しない。

「こんな船まで用意して、俺達に海賊をやらせるつもりか?」


「オレは釣り師だぜ、そんなことはしねえよ。こいつは釣り船さ、このサイズじゃないと今狙っている獲物が釣れねーんだ」

 呂尚は呆れたように答える。


「オレはこの船で、龍を釣るのさ!」

 呂尚はそう言うと、ニカっと笑いサムズ・アップした。

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