港街バスラへの道中
「ナゼ魔王軍ガ魔帝ニ戦ヲシカケタノカ・・・」
港街バスラに向かう馬車の上で、魔王の頭には、その疑問がぐるぐると渦巻いていた。
まさか自分が魔帝に拐かされたという勘違いが原因だとは、流石に魔王は思いつかない。
「早急ニ調べネバナランナ・・・・」
理由が解ったら頭を抱えるのは確実ですけどね。
魔王が聞いた噂によると、四天王が率いる魔王軍は、魔帝の砦を僅か二週間で攻略したという。
しかも相手のほうは、倍の兵力数だったらしい。
四天王が一騎当千の実力があるとはいえ、流石に異常だった。
マキラがなにか策を練ったのか?魔王はそう考えたが、なぜかまっさきに思い浮かんだのはブーンと笑う蟲王バイラだった。
「・・・マサカナ」
ハクが拾ったという子犬は、尻尾を振りながら、ユニコーンの後ろをちょこちょこと走っていた。
ミリがそれを楽しそうに追っかけている。
子犬は拾ってきた当時は痩せ細り、毛並みもばさばさだったが、ピエールさんの作った食事により健康的な体を取り戻し、ツヤツヤな毛並みになってやたら可愛らしくなっていた。
今ではパーティ内の人気者である。
気難しいクロクロでさえも、すきあらば膝に載せ頭を撫でている。
周りの精霊王達が、嫉妬に狂った暗黒面の目をしていたが、クロクロのジト目で撃墜されていた。
そういう精霊王達も、子犬が危険な場所に行きそうになったら、さりげなく止めたりしているので、嫌っているわけではないらしい。
色々複雑のようだ。
アカネは子犬に狩りの仕方を教えている。
覚えがよいらしく、アカネも満足気だった。
「なかなかスジがいいキル、きっと将来は素晴らしいハンターになるキル」
食事前になると、クリスティナの横でピエールさんの調理風景を一緒に見てることが多かった。
尻尾をぶんぶんふっている、クリスティナと一緒で食いしん坊なのかもしれない。
ピエールさんは調理の合間に、内蔵などの栄養ある部分を食べやすいように細かく切って、軽く炒めたものを子犬に食べさせていた。
子犬は美味しそうにそれを食べていた。
なぜかその横でクリスティナが物欲しそうに見ていた。
ドランからは凝った意匠の首輪をもらい、それを首につけていた。
ん?ドラン・・・だと?その首輪、変な機能ついてないだろな?
ドランは、横を見てわざとらしく口笛をヒューヒュー吹いている。
アオイと子犬はなぜか戦っていた。
「鍛えてるんだよぉ」とアオイは言っていた。
子犬の動きは確かに優れていて、手加減しているとはいえアオイの攻撃をスイスイと避けている。
天性の才能があるのかも知れない。
「一緒にあの白い馬を倒そうねぇ」
・・・ぉーい。
疲れて寝るときには、ハクの横で丸まって寝ている。
子犬にとって一番安心できる場所のようだ。ハクのことを親だと思っているのだろうか?
港街バスラへの道中は、そう言った感じで平和なものだった。
途中で盗賊が何回か襲ってきたが、この集団に勝てるはずもなく、ボコボコにされた挙句、アオイに身ぐるみ剥がされて道の横に打ち捨てられていった。
収支は思いっきりマイナスだろう、盗賊も狙う相手は選んだほうがいいと思う。
魔物たちも以下略。
風景も砂漠から、草原や森等の緑地帯へと徐々に変化してきている。
街道は整備されているため、港街バスラに着くのもそれほど時間はかからないだろう。
クロクロは大鎌で、ハクの御する馬車の横を並走していた。
「ここにくるまで魔帝が仕掛けてこないのは不気味だな。神殿からの長距離転移で俺達を見失ったのかと思ったが、監視はしっかりいるみたいだしな」
「街から、ずっとつけてきてますわね」
クロクロは後方にある丘をちらっと見る。
「八部衆の一人を倒してるんだ、いい加減なんらかのリアクションがあってもおかしくないんだがな」
「自分の懐に誘い込んで、確実に仕留めるつもりかもしれませんわね」
「俺もそう考えた、だが何かおかしいんだよな。わざと泳がされてる気がする」
ハクは険しい顔をしている。
「どちらにしても、わらわ達の目的は変わりませんでしょ?」
クロクロは前を向く。
「そうだな、俺達の目的は変わらないな」
ハクも前を見据えた。




