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ハク達は厩舎のある大きめの宿を取り、厩舎に馬と馬車を繋ぐと、すぐさまリボーンが教えてくれた『太公望』の情報を収集しはじめた。
一刻も早く彼を見つけて、アカネと勇者にかけられている呪いを解かねばならない。
ピエールさんも、この街の料理人とかにそれとなく聞いてみるとのことだった。
砂漠で移動に使ったラクダ達も、ピエールさんが商人に売ってきてくれるそうだ。
客商売に慣れている分、ハク達よりも高く売ってきてくれるだろう。
アオイとドランは役に立たないだろう。
途中から、どうせ趣味に走って暴走する。
ハクは酒場や情報屋をまわり、クロクロとクリスティナは二人で役所や自警団の詰所、領主の館等に情報を探しに行った。
クロクロはその皇女兼聖女という立場から、無駄に歓待を受ける為、普段は役所や領主の所には寄り付かないのだが、今回は積極的に動いている。
アカネは子犬を頭にのせて「キル!キル!」と楽しそうにハクの後ろをついて回っていた。
なんとなくアカネのほうが犬っぽい。
案の定、ドランは鍛冶屋連中に追い掛け回されていた。
アオイの方も、なにやら剣呑な連中に追い回されていた・・・なにやってんだこいつら。
魔王とミリはピエールさんと一緒に街を散策していた。
いつもながら魔王の後には、ぞろぞろこそこそと着いてくる集団がいた。
「ふしゅーふしゅー俺の大胸筋をあの子に見せたい」
「あぁあん、僕の広背筋と僧帽筋に勝てるとでも?」
「ワシの三角筋に勝るものはおるまい、ふんす!」
なんだろう・・・肉体派変態が多いな・・・ここは。
夕暮れになり宿で集まり、ピエールさんの作った食事を食べながら今日の成果を話していた。
アオイとドランには聞かない。なんとなく事件の香りがするし。
今日のピエールさんの料理は、特製のソースを掛けた炙り焼きの肉と野菜をピタパンに挟さんだ物や、レンズ豆で作ったスープなどエスニックな物が提供された。
肉と野菜をピタパンに挟んだものは・・・不味いわけがないじゃない。
かぶりつく度にジューシーな肉汁が溢れだし、それとスパイシーなピエールさん特製のソースが絡み合って特上の味わいになっている。
スープにはたっぷりのレモン汁が絞り入れられていた、すこし酸っぱいがそれがアクセントとなってとても美味しかった。
スープにプレーンなピタパンを浸して食べるのもおつなものであった。
露天に甘い果物が売ってあったらしく、甘いジュースや甘酸っぱいヨーグルトデザート等もあった。
当然女性陣はそれを争うように食べていた。
お酒のつまみ用にモツを炙ったものも提供されている。
ドランがいつものように酒を飲みながらガツガツ食べていた。
「それらしい人間が、半年前に東の港街バスラに向かったことは判った」
ハクが料理にかぶりつきながら、情報屋から聞いた話を皆に話す。
この辺では見かけない格好の若い男が、ここは砂漠の街なのに珍しい魚が釣れる所がないか聞きまわっていたらしい。
「それで、酒場の親父が港街のバスラを教えてやったら、嬉しそうにこの街を去っていったらしい」
「ワターシも同じ話を聞きマーシた」
ピエールさんは料理を提供しながら、街の料理人からの情報を話す。
それは多少の差異はあるもののハクと同じ話であった。
「わらわのほうも、だいたい同じでしたわね、お姉様」
「そうね、後は彼が東洋人っぽい感じだったと言うことくらいね」
クリスティナは、さっきからうるうるしながらヨーグルトデザートを食べている。
全員が同じ話を聞いてるということは、よほど目立つ人物だったのか、変人だったか。
多分変人なんだろうなぁと皆思っていた。
「彼が『太公望』である可能性は高いですわね。ただ名前をはっきりとは名乗っていないそうですし確証はとれませんわ」
クロクロが少しイライラしているのか、食べ方に少々お上品さ欠けている。
領主の所で何かあったのかもしれない。
「バスラに行って確かめるしか無いか」
ハクが左目のモノクルを触りながら言う。
「ということで、俺達は港街バスラに向かうが他はどうする?・・・アオイは強制な」
「エー」
アオイが抗議の声をあげる。
ところで、大事そうに抱えてる金の像とか宝石のついたペンダントとか何処から持ってきた?
さっきから宿の外をカタギには見えない連中が武器を持って走り回ってるが、お前のせいじゃないだろね?
「私も行くわよー、勇者くんとアカネちゃんの件は他人事じゃないしね」
ひらひらと手を振りながらクリスティナが言う。
「美味しい食材のあるトコーロ、どこにデーモ行きマース」
ピエールさんは乗る気だった。
「お父さんの行くならミリもついていくかな!」
ミリは元気だった。
「ドランはどうする?」
「ここまで来たんじゃ、俺様も行くぞ」
腕まくりをしてるが、それはまた碌でもないものを作るというポーズか?
「マオさんはどうする?この街でピエールさん達を待つという選択肢もあるんだけど」
「イエ・・・ワ・・・私モ着イテイキマス」
魔王は少し迷った感じだが着いてくるようだった。
「マオ師匠もくるかな!うれしいかな!」
ミリがマオに抱きつきながら、きゃいきゃい騒いでいる。
マオはそんなミリを優しく撫でている。
これで全員が港街バスラに向かう事が決定した。
「そういえば領主の所で変な話を聞いたんだけどね」
クリスティナがデザートのスプーンを口に含みながら、世間話をするように話し出す。
「魔王軍と魔帝軍が戦ったとかなんとか、もごもご、しかも魔王軍が魔帝軍に攻め込んだらしいよ?もぐもぐ、ね?変でしょ?」
魔王の顔が真っ青になった。
最近暑いですよねぇ




