転送サービス
気づくと一行は見知らぬ場所にいた。
きょろきょろ見回すが、近くにあるはずの神殿が見当たらない。
なぜかハクたちの馬車も転送された場所のすぐ近くにあり、放しておいた駱駝たちも草をのんびり食んでいた。
馬車ごと別の場所に連れてこられたようである。
あたりはもう暗く、すでに夜になっていた。
ハクが空を見上げ、星の配置から現在の場所を推測する。
「なんだこれは・・・」
ハクが頭を抱える、星の位置から推測した場所は、次の目的地であった砂漠の町グラナダのすぐ近くを示していた。
一気に数百キロメートルを移動している。
移動時間を短縮できたとはいえ、どう考えても何らかの力が干渉している。
ガサガサッと音が聞こえると、突然木の影から白い物がとびだしてくる。
飛び出してきたものは、彼らもよく知っていた。
魔王の馬である、ユニコーンである。
ユニコーンは一直線に魔王の所にかけていき、魔王の顔をぺろぺろ舐めはじめた。
「コラ、ヤメイ、クスグッタイノジャ」
魔王は突然現れたユニコーンに困惑していた。
ミリもユニコーンに気づいたのか、ユニコーンの首に抱きつく。
「お馬さん、なんでこんな所にいるのかな!」
久々に会えて嬉しいのか満面の笑みだった。
アオイはヌンチャクを構え、ユニコーンに向かってファイティングポーズをしていた。
ユニコーンもそれを見て、にやりと笑った。
妙なライバル関係が構築されたようだ。
ハクがアカネに支えられながら、ごそごそ馬車を調べていると、馬車の幌の内側に一枚の羊皮紙が貼ってあった。
『サービスしておいたよーん』
その紙にはその軽い一文だけ書いてあった。
「あの女性は一体何者なんだろうなぁ」
ハクは苦笑しながら頭をポリポリとかいていた。
ピエールさんは、いつの間にか食べらる野草や山菜を集めてきていた。
そして氷獣の仕込みを始める。
いつもながら見事な手さばきで氷獣が解体されていく。
というか、しっかり氷獣を持ってきてたんですね。
「赤身の素晴らしいお肉デーシたので」
はい。
馬車から取り出してきた、大きな寸胴に綺麗に洗った氷獣の骨をいれていき、魔王に出してもらった水でゆっくりコトコトと煮始める。
骨から出てくるアクは丁寧にすくい、ある程度煮立ったら骨を全部取り出した。
そして残った黄金色のスープに玉ねぎやイモなどの根菜、固めの山菜やきのこ、角切りにした氷獣の肉を投入し、それらが柔らかくなるまでアクを取りながらじっくり煮込んでいく。
クリスティナがいつものように、匂いに吸い寄せられるようにピエールさんの目の前に来ていた。
徐々に出来上がっていく料理をうっとりとながめている。
投入した食材が柔らかくなったら、塩や香辛料を加え味を整え、葉物の野草や山菜を刻み入れ彩りを加える。
出来た料理は、氷獣の山菜ポトフであった。
氷獣の骨から濃厚な旨味の出汁が出ており、肉からは獣臭さは全く感じられず、肉も野菜も口に入れるとホロホロと崩れるほど柔らかかった。
「おいしいおいしいおいしぃいいいいいいいい」
クリスティナさんやっと食べられたので幸せそうである。
すっかり女性の食いしん坊キャラとして定着した感じ。
余った肉や内臓は、串焼きにされ出されている。
串焼きはピリ辛で酒によく合う。
ドランが酒をかっくらいながら、もりもりと食べている。
ハクはさすがに今日は調子が悪いらしく、いつもより食べる量が少ない、たった8人前くらいで食事が終了した。
「明日はグラナダらしいデースね。新鮮な食材も手に入りマースし、明日は腕によりをかけた料理を作らせていただきマース」
全員からジュルリという音が聞こえたような聞こえなかったような。
次から新章です。




