ケルベロスとの決着
引き金がひかれ、魔導電磁レール銃から光る弾が放たれた。
だがケルベロスは、その弾丸を軽々と避けた。
いや違う、発射前に見切っているのだ。
ケルベロスであっても、この短距離からの魔導電磁レール銃の異常な弾速からは避けられない。
ケルベロスは銃口から弾の軌道を読み、ハクが引き金を引く瞬間を見計らい、卓越した反射神経で弾道から体をずらしているのだ。
それに気づいたハクはケルベロスを撹乱するように、できるだけトリッキーな動きやタイミングで弾を発射する。
だが・・・
『無駄なこと』『笑止』『当たらぬ』
ケルベロスは、ハクの攻撃をことごとく見切る。
悔しそうな顔しながら、ハクは弾を撃ちまくった。
そして全弾を撃ち尽くす。
魔導電磁レール銃の弾は、ケルベロスに一発も当たることはなかった。
ハクは、その場で膝から崩れ落ちる。
もう為す術もないだろう。
『終わりか?』『終わりだな』『では死ぬがよい』
ケルベロスは、ハクにゆっくりと近づいていく。
ハクは脱力しもう逃げることすら出来ない。
そしてケルベロスはハクニとどめを刺そうと、鋭い爪を高く掲げる。
突然部屋に紫色の魔法陣が浮かび上がる。
「絶対防壁」
ハクの声がひびく。
ケルベロスのまわりに光さえも通さないほど強固で仄暗い防御障壁が出現する。
内側に・・・ケルベロスに向けて・・・
『なんじゃ』『何が起こった』『何をやった!』
今まで見たこともない程の強固な防御障壁に取り囲まれ、ケルベロスが困惑する。
すぐさま魔法や爪で破壊しようとするが障壁はびくともしない。
黒い魔法陣が展開される。
「重力捕縛」
ケルベロスに通常の数千倍の重力がかかる、自重の数千倍の重さに流石のケルベロスも耐え切れず膝を折り、床に磔にされる。
必死に起き上がろうとするが、骨がきしむだけで全く動けない。
『体が重い』『支えられぬ』『動けぬ』
ギリギリという歯を食いしばるような音が聞こえる。
赤い魔法陣が展開される。
「炎熱地獄」
防御障壁内が突如プラズマ化し超高温の火球となる。
ケルベロスはとっさに魔法障壁を張るが、それを上回る魔力で障壁ごと焼きつくされる。
プラズマ火球はケルベロスを覆っていた鋼のような白銀の獣毛をあっという間に焼きつし、数万度という地獄のような熱でケルベロスを蹂躙する。
ケルベロスはレジストを試みるが、あまりの熱量にレジストしきれず灼熱の赤い光を放ちながら黒く焼け焦げていく。
『なんだこの魔力は』『信じられぬ』『わが美しき獣毛が』
神獣すら焼く熱にケルベロスは驚愕する。
白い魔法陣が展開される。
「絶対零度」
防御障壁内の物が時が止まったかのように全てが静止する。
空間に存在するあらゆる原子の熱振動が止まり、超高温から瞬間的に絶対零度と化す。
瞬時にケルベロスの全身が白い彫像のように氷結した。
再度魔法障壁を張る余裕すらなかった。レジストも当然のように効かない。
急激な温度変化にケルベロスの牙や爪が耐え切れず砕けはじけ飛び、ケルベロスの強靭でしなやかな肉体にも無数の亀裂が入る。
『馬鹿な』『我が牙が』『我が爪が』
あまりの苦しさにケルベロスは苦悶の叫びを上げる。
黄金の魔法陣が展開される。
「無限剣撃」
防御障壁内にひしめき合うように無数の光の剣が現れ、ぐるぐると魚群の様にケルベロスのまわりを取り囲む。
美しい光景ではあったがこれは死のダンスだ。
炎熱地獄と絶対零度によって防御と攻撃力を根こそぎ失ったケルベロスに、光の剣は容赦なく全方向から襲いかかった。
光の剣は乱舞し、ケルベロスは抵抗もできず斬り刻まれ輪郭すら変わっていく。
ケルベロスは必死に回復再生を試し見るが、それ以上のスピードで肉体も魔力も削られる。
そして・・・ついに限界を迎える。
『『『見事だ人間よ・・・』』』
最後に絶対防壁の中でケルベロスの絶叫がこだまし、そしてケルベロスは力なく崩れ落ちた。
それを見届けると、ハクが倒れる。
「もう、死にそう・・・」
ハクは大の字になって目を閉じた。
同時に絶対防壁も消え失せる。
ケルベロスがいた場所には、鋭利な刃物で抉られたような円状の穴が開き、その中央には、ずたずたに斬り裂かれ、元の形すらわからなくなったケルベロスの肉塊があった。
呼応するように太陽の文様の扉がゆっくりと開いた。
アカネやクロクロ達全員がハクのもとに駆け寄る。
ハクの勝利だった。




