ケルベロス
ハク達は、ケルベロスと対峙する。
ケルベロスは閉じていた目を開け、ふわわあぁあという感じで欠伸をする。
そしてブルっと体を震わせながらゆっくりと立ち上がる。
あまりの質量で部屋自体も震える。
3つの頭を持つ偉大なる神の獣。
6つの金色の瞳がこうこうと光り、全身には白銀色の鋼のように丈夫な獣毛が生えている。
彼の持つ牙と爪は鋭く、全ての物を蹂躙し斬り裂くであろう。
『人間がここまでたどり着くのは、何百年ぶりかな、左の』
『700年位じゃないか?右の』
『それ位だね、中の』
『では、やるか』『やるかね』『やってみよう』
3つ首が器用に会話をしている。それぞれの頭が別々の意識を持つようだ。
そして普通の人間なら竦み上がるような6つの獰猛な目でハク達を見据える。
『700年ぶりの来訪者よ』『主らは我らが定められし試練』『受ける気はあるか?』
「定められし試練?」
ハクが聞きかえす。
『簡単』『お主らの中の代表の一人が我らと戦い』『我らに勝利すればいい』
『我らに勝利すれば』『太陽の扉は開き』『神秘はお前たちのものとなる』
無茶を言う、神獣ケルベロスと言えば、神の宝を守る守護獣だ。
その戦闘能力は計り知れない。
『全員でかかってきてもよいが』『それで我らに勝っても扉は開かぬ』『創造主がそのように作っておる』
そう言って、鼻で後ろの太陽の扉を指す。
『試練を諦めるというなら』『我らの力で地上に帰してやる』『我らは次の挑戦者を待つだけ』
「試練をやって負けた場合はどうなるんだ?」
ハクは厳しい顔をしている。
『挑戦者が死ぬだけ』『我らは悪鬼のたぐいではない』『それ以外の人間は地上に帰す』
ケルベロスの言葉に嘘や偽りはなさそうであった。
「あぁ、それなら安心した。俺が試練を受けてやる」
ハクがケルベロスをしっかり見据えながら言う。
『承知』『あいわかった』『貴様の挑戦を受ける』
ケルベロスは満足そうに笑った。
「ハク!?」
アカネが驚く。
クロクロはわかっていたようだ。動揺もせず、じっとハクを見つめている。
ドランもクリスティナも予想はしていたのだろう、さほど驚いてはいない。
ピエールさんは構えていた包丁をおろす。
ミリは何が起こっているのかいまいちわかっていない。
魔王が何かを言おうとするが、ハクに静止される。
「たぶん、これは俺がやらなきゃならない試練だ、最初からそう仕組まれてる」
リボーンは、ハクに鍵を渡し、ハクにしか解けない謎かけをした。
つまりは、そういうことだろう。
「マオさん、ドランから受け取った武器を貸してくれ」
ハクが魔王に聞いてくる。
「コレデスカ?」
魔王は腰につけてあったポーチから、クロクロの物と同タイプの魔導電磁レール銃を取り出し、弾と共にハクに渡す。
「うん、これだ」
確かにこれなら、ケルベロスにもダメージを与えることは出来るだろう。
だが、相手は神獣だ・・・これで倒せるとは思えないのだが。
ハクは銃と弾を受け取ると、不具合がないか両方を一つ一つ丹念に調べる。
そして何かを納得したように頷き、腰に銃を装備する。
「みんなは一旦部屋の外に下がれ。マオさんは防御魔法でみんなを守ってくれ」
魔王は頷き、パーティー全員が部屋を出ると、扉に蓋をするように強固な防御魔法を展開した。
アカネが必死な形相で部屋の中に飛び込もうとしていたが、ドランとアオイがそれを必死で止めている。
クロクロもヘキを使いアカネを拘束している。
アカネはジタバタと暴れるが流石に動けず、ハクの方を心配そうに見ていた。
クリスティナは祈るように見つめている。
ピエールさんはミリを守りながら背後から魔物が来ないように気を配っているようだ。
ハクはそれを見届けると、ケルベロスの前に立った。
『もう良いのか?』『準備はよいか?』『覚悟は決まったか?』
ケルベロスはハクに聞く。
「ああ、いいぜ」
ハクは棺桶を構える。
『よし』『ならば』『始めよう』
ケルベロス対戦の開始です。




