新兵器
夜、ハクはドランに呼び出された。
ドランから直径一センチ半、長さ五センチ程の涙滴型の金属を数個手渡される。
一見銀の様に見えるが、それにしては妙に軽かった。
多分銀の1/4程度の重さしか無い。
「こんな金属見たこと無いぞ?」
ハクは訝しげにその金属をみている。
「それは、粘土から取れる銀じゃ。二千二百度以上の熱がないと分離できない代物だから、抽出するのにヘーパイストスが必要なんじゃよ」
それで、昼間にヘーパイストスを呼び出していたのか。
二千二百度以上の熱は、この時代の炉では出せない熱である。現状ドランしか精製できないだろう。
「少なくとも、この町の鍛冶屋の根性無しの炉では無理じゃったの」
・・・だから石投げられてたのか。そもそも、その温度だと炉の方が先に壊れる。
「あとこれだ」
ぽんと1m程度の奇妙な棒を手渡される。円柱に手で握るような取っ手がつけられており、形状的には魔導杖にも見える。
直径三センチほどの円柱には、先ほどの金属が入る程度の直径の穴が開いている。
中を覗くと、希少な魔導金属であるアダマンタインが内側に二本直線状に仕込まれているようだった。
穴の反対側にある取っ手の前には指で引っ掛ける程度の可動式のレバーが付いている。
なにか嫌な予感がしてきた。
「ここをこう引くと、取っ手の横に穴が空くのじゃ」
円柱を支えながら取っ手を引くと円柱と取っ手がガシャとスライドし、さっきの金属を入れられる位の穴が取っ手の側面に空く。
「ここにさっきの銀を装填して、円柱をまた元の位置に戻す、この辺の手順は面倒じゃからまだ改良が必要じゃな」
ガシャコンと金属の装填が終わる。
「円柱の先にある溝と、中央近くにある溝を重ね合わせるように覗きこむように構えて、そうじゃな・・・その状態で溝をあの岩にも合わせろ」
ドランが指し示す方向の五十メートル先くらいに1m前後の岩が転がっていた。
ハクは言われたように構え、溝を岩に合わせる。
「そうそう、そんな感じじゃ、そうしたら魔力を取っ手に流し込んで、取っ手の先にあるレバーを人差し指で引くのじゃ」
「おい・・・それって」
「いいからやってみろい」
ハクが魔力を込めると、この謎の棒に少々魔力を吸われたような気がする。
そして意を決したようにレバーを指で引いた。
その瞬間、まばゆい閃光とつんざくような音が響いた。
支えていた腕に強烈な反動がつたわる。
円柱から光が放たれ、瞬時に目標の岩に着弾、岩は内側から破壊されるように粉砕された。
弾丸の初速2キロメートル秒、魔導電磁レールライフルだった。
棺桶に装備されている魔導電磁レールガンの携帯版である。
「おほぅ、成功じゃ!さすが俺様!」
ドランが手を叩いて喜んでいる。
ハクは目が点になっていた。
ドランいわく・・・
「最初は黒色火薬の爆発で飛ばす奴を考えてたんじゃが、火薬の材料の硝石を入手するのが面倒でなぁ。どうせ魔力を無駄持ちしてる連中が揃ってるし魔導式にしてみたのじゃ」
だそうである。
してみたじゃねぇよ、こいつ現代科学すら超えてきやがった。
魔導電磁レールに使う、硝石より希少なはずのアダマンタインは、前に倒した守護竜の鱗にふんだんに含まれていたらしい。
ハクに渡したライフルタイプの他にも、クロクロや魔王が使えるような、小型の物もいつの間にかに作られていた。
威力はハクのものより抑えられているらしいが、オーガ等でも当たりどころによっては一撃だそうである。
もうね・・・
頼んでも碌でもない物を作るし、頼まなくても碌でもない物を作る、それがドランという男だった。
バランスブレイカードランの碌でもない兵器が出来ました。
弾はアルミニウム製です。
行程が複雑で電気や融剤を使うホール・エルー法は流石に使えないので、高熱を使う方法で精製しています。
細かいことですが、バレルには火薬式と違って吸気と放熱のための穴が上に開いています。
こんなものを実際に作ったら、発生するプラズマで撃った人間が死ぬか大怪我する気がするので、そこは魔法ありのフィクションということでよろしくお願いします。




