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勇者はいってます。  作者: 夢見創
五章目 古代の神殿と騒がしい者達
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出会い

 八年前


 当時十二歳であったハクは、帝都の皇宮へと召喚されていた。

 人間の身でありながらエルフの里で育ち、エルフの知識を得た膨大な魔力を持つ者。


 老齢の現賢者の後継、次世代の賢者として。


 ハクの後ろには、緑色(・・)の髪と緑の(・・・)を持つ幼いエルフの少女が付き従っていた。

 エルフの里の族長の娘であり、ハクの幼馴染。

 アカネ・グリーン。当時8歳。

 彼女もまた次世代を担うものとしてハクと一緒に召喚されていた。


 ハク達は、貴賓室のような場所に通されていた。

 品の良い装飾で飾られた部屋で、華美な装飾はないのだが、とてもお金が掛かってそうな場所であった。

 エルフの里のような、のどかな場所で育ったハクとアカネは場違い感が半端無い。


 そこに黒髪の幼女を小脇にかかえバタバタとやって来た者がいた。

 美しい装飾が施された豪奢な白いドレスで着飾った、銀色の髪を持つ美しい少女であった。

 少女は、ハクの目の前で立ち止まると、面白そうにハク達を観察していた。

 彼女はハクより若干年下のようであった。

 貴族の娘であろうか?


 彼女は小脇に抱えた幼女を、自分の前に抱え直し、偉そうな言い回しでこう言った。

「貴様がハクか!私はクリスティナ、この国の第一皇女だ。そしてこの黒髪の娘が聖女であり、わが妹クローディアである」

 そして大輪の花のような顔で笑う。

 聖女と紹介された妹のクローディアは少々ぐったりしながら、ジト目で姉を見ていた。


「ひーめさーまーどこーですかー」

 遠くから複数の女の人の声とバタバタした音が聞こえる。


「やばい、侍女たちに見つかると面倒なんだ。そうだ!お前たちも来い、面白いものを見せてやる」

 妹を再び小脇に抱えなおすと、反対の手でハクの手を握り走りだした。

「えぇえええええええ」

 少女とは思えない力強さで、ハクは強引に引っ張られていく。

 皇女様なので下手に逆らうことも出来ない。

 アカネもここに一人残されるは嫌だったのか、クリスティナ達の後について走りだした。




 クリスティナに連れてこられた場所は、宮殿の衛兵達の訓練場所であった。

 様々な戦闘を考慮しているのか、天井は高くかなりの広さがある。


 その中央で二人の男が剣を振るっていた。

 一人は二十代半ば位の筋骨隆々の偉丈夫で、まさに鍛え上げられた戦士といった感じの男である。

 もう一人は背はやたら高いのだが、まだ十代半ば位の金髪の少年であった。優しそうな顔が目を引く。


 その二人が、ものすごい勢いで剣を打ち合っている。

 どちらの剣も二メートル近くもある巨大な剣であり、剣というより無骨な鉄板のようであった。

 練習用なのか刃を落としてあるが、その質量だけで骨ぐらいは軽く粉砕できそうである。

 それを二人は、板っ切れを扱うように軽々と振り回している。

 あまりの速度に空気がビリビリと震えている。

 剣同士が当たる度に火花が飛び散り、重い金属がぶつかり合う音が響き渡る。


 彼らの戦いは、ハクとアカネが今まで見た事が無いほど激しく迫力のある戦いであった。

 ハクとアカネは魅了されるように彼らの戦いを見ていた。


 最初は彼らの力は互角のように見えていた、打ち合う度に金髪の少年の動きが加速していく、そしてとうとう捌ききれなくなったのか偉丈夫の剣が少年の剣によって弾き飛ばされた。

 偉丈夫は金髪の少年に向かって、降参という感じで両手を上げる。

 まさかの金髪の少年の勝利であった。


「クルガリオお兄様!今よろしくて?」

 クリスティナは、その男達に声をかける。


「おぅ、クリスティナとクローディアか何の用だ?んで、そのちみっこい二人は誰だ?」

 その声に偉丈夫がバリトンのいい声で答え、ハクの顔をみながら猛獣のような獰猛な笑みを浮かべる。


 ハクは、その迫力に押され数歩さがる。

 アカネは胸元にある何かをギュッと握りしめていた。


 兄ってそっちかいと突っ込みたくなるほど、クルガリオと呼ばれた男は皇子様と呼ばれるような高貴な人間には見えなかった。


「お兄さま、そんな怖い顔で脅さないで下さいな」

 性格はともかく、クリスティナとクルガリオの見た目は全然似ていないなとハクが思っていたら、クリスティナがハクをクルガリオの前に押し出した。

「この白い子はハク、次世代の賢者様よ」

 ハクはおっかなびっくりしながらクルガリオを見上げる。

 何か喋らなければと思ってはいたが、口に出せなかった。

 そんなハクの頭をクルガリオはポンポンと優しく叩く。

「それじゃ、そっちのエルフの娘がアルテミスの使い手、アカネか?」

 クルガリオはアカネの方にも手を伸ばすが、アカネはクルガリオが怖いのかハクの後ろにささっと隠れる。


「こりゃまいったなぁ、嫌われたかなぁ」

 クルガリオは困ったようにボリボリと頭をかく。


 クリスティナとクルガリオが、ハクとアカネをネタに会話してると、クリスティナの小脇に抱えられていたクローディアが突然ジタバタと暴れだした。

 さすがに長時間抱えていた為、疲れていたのか、クリスティナは妹の拘束をつい解いてしまう。

 拘束を逃れ、へちょっと床に着地したクローディアは、金髪の少年にテテテテテっと駆け寄って行き、彼の足をヒシっとつかむ。

 そして、姉に向けて「んべーっ」と舌を出すと、そそくさと金髪の少年の影に隠れた。

 そんなクローディアの頭を、金髪の少年は優しく撫でる。


「クローディアったら、しょうが無い子ねぇ」


「いや・・・多分お前が悪いと思うぞ・・・」

 クルガリオが、クリスティナをジト目でみていた。


「そういえば、面白いのを見せてあげると貴方たちに約束してましたね?」

 クリスティナはそう言うと胸を張り、金髪の少年を指し示す。


「彼こそ人間界の希望である勇者グロウリオン、これから貴方達が仕える人よ」

 クリスティナはそう言うとドヤァという顔になった。


 当の本人であるグロウリオンは、ハクとアカネを見つめながら少し恥ずかしそうに笑った。

宮殿組の初めての出会いの話です。

ちゃんと生きている勇者。でも、しゃべらない。

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