闇に蠢く者達
死禁城、周囲4キロメートルにも及ぶ巨大な城。万を数える者達がたった一人の主のために蠢く魔城。
贅を尽くした装飾に彩られた城は絢爛豪華ではあったが、どことなく肌寒いような不気味さを漂わせる不思議な場所であった。
その最奥、玉座の間。
半身半獣の者、緊那羅王が、主のおわす御簾の前に傅いている。
「死皇帝様、迦楼羅王が討たれた模様です」
彼の美しい声が震えている、それは怒りか悲しみか、それとも恐れか?
「ほぅ」
御簾の内側から、何故かくぐもったような笑い声がしたような気がする。
「すぐ討伐隊を組織し・・・」
「捨て置け」
主から思いもよらぬ声が響く。
「ですが!」
緊那羅王が御簾の方に詰め寄る。
「西の牛貨洲は夜叉王の五十万の軍勢が詰めておる、近づけば勝手に擦り潰されよう。南の瞻部州を通るなら黒死海を抜ける必要がある。あそこには龍王がおろう、あ奴の庭じゃ存分に相手してくれるじゃろう。こちらからわざわざ出向くまでもないわ」
御簾の中の主は、そう静かに答える。
「で・・・ではそのように・・・」
緊那羅王はビクビクしながら御簾から離れると、一礼し主の元から去っていった。
「くっくっく・・・迦楼羅王が討たれるか・・・これは楽しめそうじゃわい・・・」
御簾の中の主は楽しそうに笑っていた。
「乾闥婆よ・・・おるか?」
虚空からじわりと美しい女性が現れ、主の横に傅く。
女性の頭には八角の角が生えており、背には黄金の翼がある。
女性の体からは、冷たく濃い香気が放たれている。
「お呼びでしょうか?死皇帝様」
美しい声で主に伺う。
「人間の国へ紛れ、我が国が千年の時を破り人の国へと侵攻するという噂をながせ」
「はっ!主の御心のままに」
女性は深く礼をすると、再び虚空へと消えていった。
「くっくっくっく・・・祭りをはじめようぞ、なぁ修羅王」
いつのまにか主の後ろの壁を背にし、美しい男が立っていた。
主の御前であるのに、彼は傅きもせず、腕を悠然と組み顔には獰猛な笑みすら浮かべていた。
「楽しみで御座いますな。天王様」
男は死皇帝を天王と呼んだ。
「天の牢獄よりヴリトラを解き放ち、この世を混沌へと誘おうぞ」
主は年若き子供が笑うような声をあげた。




