オアシスにいた者
「昨日の鳥の料理は、う・・・旨かったな」
「そ・・・そうですわね、鳥でしたわよね、絶品でしたわね」
「お・・・おいしかったねぇ、鳥」
「美味しかったキル、また狩るキル」
「・・・」
皆、あれは鳥だ、鳥なんだと自分に言い聞かせるようにつぶやいていた。
昨日の深夜に棺桶を回収し戻ってきたドランは、その時に何を見たのかカタカタと震えていた。
多少老けたような感じさえする。
ドランは死んだ魚のような虚ろな目をしながら、攻撃の余波で一部破損した馬車を黙々と直していた。
ドランが静かだと、それはそれで不気味である。
また、ドランが回収してきた勇者棺桶には傷ひとつ入っていなかった。
むしろ空気との摩擦でくっついていたゴミ等が燃え尽きたのか、以前よりも艶艶している。
本当に謎の物体である。
「まさかこんな所で、魔帝の連中とやりあうとは思わなかったな」
地図を見ながら、ハクは頭をかいている。
予定では、魔帝の国に入るまでは戦闘は避けるつもりだったのだ。
まだ道中の序盤である、これから先が思いやられる。
次の目的地イグドラまでは、あと一週間といったところである。
昨日棺桶を回収する途中でドランがオアシスを見つけたらしいので、今日はそこまで進むことにした。
昨日とは違い平和な道中になった。
ミリが水を出す魔法を魔王から教えてもらい早速使っていた。キラキラと煌く水で虹ができていた。
アカネは、砂漠に生物を見つけては馬車から飛び出して狩っていた。あれが今日の夕食になるのかもしれない。
アオイはドランの馬車の御者をしながら、ヘーラーのメダルを眺めていた。
「アプロディーテーよりは動けるけどぉ、タイムリミットがあるし、打撃系の奥義が撃てるほどしっくりこないんだよねぇ、なんでだろぉ」
そう言ってヘーラーのメダルを手のひらでくるくるっと回した。
ハクは御者をしながら迦楼羅王との戦いを思い出していた。
「次に敵に会うまでに、対空手段をもう少し増やさないとなぁ」
迦楼羅王との戦いで自分たちに不足した物があることが解った。
だか、それを解消するのはなかなか難しい。
クロクロは術を封じた状態だし、ハクの術も使い勝手が良いものではない。
ピエールさんならなんとかしちゃいそうだが、あくまでも依頼主だ、そうそう巻き込むわけにもいかない。
「では、ドランに何かを造らせるのですの?」
馬車の横で大鎌に乗って並走していたクロクロがジト目で聞いてくる。
「そ・・・それは最後の手段にしたいんだが・・・」
魔導電磁レールガンの事を考えると迂闊にドランには頼めない。
絶対になにかやらかす。絶対だ。
「対空能力の高いアルテミスが使えればよいのですが、わらわでは十分の一の力も発揮できませんですの」
クロクロがアルテミスのメダルを取り出して優しく撫でる。
「神鎧は強力だが召喚するのにタイムラグがあるし、召喚中に術者が無防備になるから使いどころが難しい、今回は俺達が神鎧を持っていることは迦楼羅王が知らなかったから、なんとかできただけだ」
「次は、うまくいくとは限らないということですわね」
「攻城戦とかあらかじめ準備が出来る戦いならともかく、今回のような遭遇戦ではうまくいかない可能性のほうが遥かに高いな。だからもう少し小回りが効く武器が欲しい・・・」
悩んでいると、予定よりも早くオアシスが見えてきた。
「おぉ、冷たくて気持ちいいかなー」
オアシスの中央にある泉でミリが足を浸しチャプチャプしていた。
ピエールさんその横で泉の水をカップにすくい上げ色とか味を調べている。
ピエールさんは満足そうにニカッと笑った。良い泉質だったようだ。
「ていいぃい」
ドランが泉に向かって飛び込んでいった、さっきまで死んだ魚のような目をしていたのに、今は水を得た魚のように生き生きとしている。
それにハクも続く、いい大人がギャンギャンさわいでいる。
「ドラン、あっちの小島まで競争だ!」
「おぅ!俺様の力見せてやる!」
元気だなぁ・・・
アカネは気持ちよさそうに泉にプカプカういている。
「気持ちいいキルー、生き返るキルー」
アカネの横には真っ二つになった巨大な淡水魚が浮かんでいた、水が気持ち良いのか、大物を斬れたから気持ちいいのか判断が難しい。
とりあえず、夕食に予定外の品目が増えるは確実だろう。
アオイは泉の水に浸したタオルで体を拭いて砂とかを落としていた。
「僕は、胸なんか無くても可愛いんだ、うん・・・そうだ可愛いんだよ」
澄んだ泉に自分を映しながら、何かを納得しようとしていた。
クロクロは優雅に紅茶を飲んでいた。
精霊王たちはいつもの様に甲斐甲斐しくクロクロの世話をしていた。
フウが何かをしたのか、クロクロにブーツで蹴り飛ばされていた。
フウは泉の表面を数度跳ねた後、泉に沈んでいった、沈むフウの足元に水の精霊王カイが見えた気がしたが気のせいだろう。
魔王は喧騒を離れ、泉の周りをのんびり散歩していた。
程なくして泉のほとりに、神々しく美しい女性がいるのを見つける。
女性は魔王をみると満面の笑顔を浮かべながら、小走りで近づいてくる・・・あれは・・・
「マオちゃんじゃない!お久しぶりぃいい!」
女性は魔王に飛びつくように抱きついてきた。
「リ・・・リボーン様!?」
魔王は目を白黒させていた。
リボーン様、再登場
あと・・・オアシスなのに水着回じゃないとか。




