アオイとユニコーン
ハク達はイグドラに向かう砂漠の手前の街で、馬車を引くラクダを複数頭手に入れていた。
これから二週間ほど砂漠の旅になるし、絶対に必要になるものだ。
けして安くはなく手痛い出費だが、グラナダにたどり着けば売却できるので、ある程度は回収出来る見込みだ。
魔王はユニコーンの目の前に地図を広げ、身振り手振りしながらルートの指示をしていた。
「ヨイカ、コノルートヲ辿るノジャゾ?」
ユニコーンは地図を見ながら魔王の言葉に頷き、最後まで聞くといななきをあげた。
「えっと・・・それで解ったのか?あの馬は・・・というか地図読めるのか?」
それを見ていたハクは少々困惑気味である。
「ハ、ハイ・・・頭イイ子デスカラ」
魔王はハクから目を逸らしながら答えた。目が少し泳いでいた。
馬車から馬たちを離すと、全頭がユニコーンの元におのずと集まり、ユニコーンと何かをヒヒヒーンと会話しているようであった。
そしてひときわ高くユニコーンいななくと、魔王にペコリと一礼し、他の馬を引き連れ街道に向かって走っていった。
「あ・・・うん・・・解ったぽいね・・・」
「あの馬ぁああああああああああああああああ、ころすぅうううううううううううう、どこにいったぁああ」
何故かボロボロになったアオイが、どこからとも無く這い出てきた。
全身が泥まみれ砂まみれになっていた。
怒りで眉間に大きなシワ出来ていた。
さて・・・アオイに何があったのか?
夜にまで時間を戻す。
アオイは九頭流の一の技の歩法「霞歩」を使い足音もたてず、あるテントへと向かっていた。
「今日こそ、コキャっとぉ・・・ふひ・・・ふひひひひっひひっひひ」
ぼそぼそと喋ってるせいで、足音を消している意味はなかったが、目的のテントの近くまで到達する・・・
ミリと魔王が就寝しているテントである。
もちろん目的は魔王をコキャっとする事だった。
「コキャっとするぞーコキャっとするぞーコキャっとするぞーコキャっとするぞーコキャっとするぞー」
アオイの目はかなりイった状態になっている。
「シャァアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・ぎゃぁああああああああああああああああああああああああ」
テントに向かって跳びかかった瞬間に、アオイの体に紫電が走る。
「防御魔法・・・いや・・・結界かぁ?」
全身に電気が流れたように体が痺れ動きが鈍くなる。筋肉が硬直しうずくまるようにしゃがむ。
息遣いが荒い、かなり強力な結界だったらしい。
アオイは上目遣いで、憎々しげにテントを見る。
「あの女ぁあぁあぁ」
テントの周りにはミリの安全のために、魔王が邪悪な者を払う不可視の結界を張っていた。
アオイ・・・お前・・・結界に邪悪認定されたんだ・・・
というか魔王、魔王なのに邪悪な者を払うとかいう結界の中で寝てるんですか?
うずくまる葵の耳に、カッパカッパと何かの足音がアオイに近づいてくるのが聞こえる。
「・・・あの女の馬ぁ!」
魔王の馬、ユニコーンである。
ユニコーンはアオイを確認すると一気に加速、アオイの直前で前足を振り上げ、そのままアオイに足を叩きつけた。
全身にまだ痺れが残るアオイは、いつものように避けることが出来ず、ズム!という重い音をたて吹き飛ばされる。
かろうじて防御はしたが、ユニコーンのケタ違いの加速力と体重が乗った重い攻撃は、体重の軽いアオイでは完全に防ぐことは出来ない。
息が止まり、口の中に鉄の味がする。
胸に鈍い痛みがする、肋骨にひびでも入ったかもしれない。
アオイはぺっと血の混じったつばを吐くと、深呼吸とともに全身に気を流し痛みと痺れを軽減させる。
「こいよ糞馬ぁ、相手をしてやるぅ・・・獣風情が人間に喧嘩売った代償はしはらってもらうよぉ!」
アオイ VS ユニコーン




