魔王は師匠になりました
朝、ミリと魔王は馬達に餌や水を与えたりブラッシングしたりと甲斐甲斐しく世話をしていた。
兵士がそれを見て「ボクもブラッシングしてほしい、ハァハァ」とか言っていたら、最近、変態即殺になってきているクロクロに焼かれていた。
ハクは日課の棺桶千本素振りをやっていた。数人の兵士が面白がってやらせてもらっていたが数回で撃沈。
むしろ数回出来た事自体が凄い、なかなか良い練度の兵士達らしい。
しかし魔改造によって100キログラムは増えているのだが、脳筋賢者はなんで余裕なんだ?
アカネは、朝の狩りに出掛けていた。数十分したら獲物を持って戻ってくるだろう。
アオイは目の下に出来ていたクマを、必死に化粧で消していた。こいつ夜中に何をやってた?
ピエールさんは朝の食事の仕込みをしていた。
そこにクルガリオ将軍が通りがかる。
将軍は丈夫そうな薪をおもむろにひょいと一本拾い上げると、ピエールさんへ恐ろしい速度で投げつける。
ピエールさんに薪は当たることはなく、音もなく綺麗な断面で寸断され落ちる。
ピエールさんが包丁で斬ったのだ。
「おめえ・・・やっぱり・・・」
「殿下、ワタシーは一介の料理人デースネ」
ピエールさんは将軍を殿下と呼び、その先の言葉を制した。
「おめえ程の男がもったいない・・・いや料理は確かに絶品だったが・・・」
ピエールさんはちらっとミリの方を見る。
「ワターシには守るものがイマース、もう離れバナレーになるのは嫌ナーノデース」
ピエールさんは、ぎこちない笑顔をしていた。
「しかたねぇなぁ・・・朝の料理も楽しみにしてるぜ?」
将軍はしょうがねぇという顔をしながら、ピエールから離れていった。
「将軍に食材をワケーテ貰いましダーシ、腕によりをカケーテ、美味しいモーノヲお作りシマース」
ピエールさんは一礼すると作業に戻っていった。
将軍は難しい顔をして歩いていた。
「クラウスの馬鹿は、時々変な運命の巡り合わせを作るな、考えがあってのことか、偶然か・・・」
将軍は、ラクスにいる弟の顔を思い浮かべた。にへらっとした間抜け面が浮かんできた。
「偶然だな」
将軍は断言した。
ドランは設計図とにらめっこをしていた。
たぶんロクでもないので無視することにする。
ミリと魔王が馬の世話を終え、テントに戻ってきていた。
「ねえねえマオさん、私にもあのキラキラ覚えられるかな?」
ミリが魔王の袖を引きながら聞いてくる。
「防御魔法ヲカ?・・・ウム・・・試シテミテモヨイガ・・・」
「わーいかな!どうするのかな!」
魔王はさらさらと紙に魔法陣を描くと、その上にに手を乗せるようにミリに指示する。
「これはなにかな?」
「ミリノ魔法ニ対スル資質ト、適正ナ属性ヲコレデ調ベルノジャナ。ミリ、目ヲツブッテ、チカラヲ手ニコメテミルノジャ」
「んーーこうかなー?」
ミリは目を閉じ手に力を込める。しだいに手を乗せた周りから虹色の光があふれ出てくる。
その光を見て、魔王は驚愕する。
「七色ジャト・・・?」
この魔方陣で示される適正な属性は色で表される、赤なら火という青なら水という感じである。
本来魔法適性がある人間は一色か二色、帝都の宮廷魔法師で3色か4色といった所である、
魔王や聖女のような規格外ならともかく、一般の人間のミリが七色というのは本来あり得ない。
七色は、火、水、地、風、闇、光、そして無のすべての属性に適正があることを示している。
特に無の属性は珍しい。
しかも極めてはっきりと発現している。これは潜在的な魔力の高さを示している。
我と同じ全属性持ち・・・魔王級の資質?人間じゃと不世出の大魔導師の素質があるということか・・・我が魔法を教えて良いものなのか?
魔王はそう思い少し難しい顔をしていた。
「マオさんどうしたのかな?少し顔色が悪いかな?」
目を開けたミリが、不思議そうに魔王の顔を覗き込んでくる。
「アア、ナンデモナイノジャ。ミリニハ資質ガアルヨウジャ。問題ナク防御魔法ヲ覚エラレソウジャゾ」
「ほんとかな!うれしいかな!教えてほしいかな!!」
ミリが満面の笑みで喜んでいる。
「マズハ基礎カラジャケドナ」
「マオさん・・・ちがうかな、そうだマオ師匠かな!マオ師匠よろしくお願いしますかな!」
「マオ師匠・・・?」
ミリの師匠扱いに魔王は戸惑っていた。
でも、なぜか悪い気はしなかった。
「あの娘も、強い運命を持っていますのね」
クロクロは日陰で紅茶を飲みながら、不意に発生した魔力の流れを見てそう独りごちた。
クロクロの周りには、真っ黒に焦げた兵士たちが転がっていた。
その上で火の精霊王がマッスルポーズをしていた。
ピエールさんの腕によりをかけた朝食は、
いつの間にか作られていたピエールさん特製の竜のベーコンと、さっと湯通しされた山菜をパンに挟んだサンドイッチをメインに、ふわっふわのスクランブルエッグ、さわやかな味わいの香草スープが出てきた。
素晴らしいモーニングセットであった。
もちろん全員が撃沈した。数人野生化したので取り押さえるのが大変だった。
朝食後、ドランとハクがダンジョン近くの丘へ魔導棺桶車両を運んでいくのが見えた。
その数分後、巨大な槌を持った錆色の巨人が現れ、何かをピカピカガンガンやったあと去っていった。
魔導棺桶車両に竜の爪で作ったツノが生えていた。
ドランとハクが、ガシっと手と手を握り合っていた。いい笑顔だった・・・
「アノ神鎧・・・我ノ知ラナイ物ナノジャガ・・・」
ここには何機の神鎧があるんじゃと、魔王は戦慄していた。




