乱戦開始
何か間違っている戦闘スタート
魔王は部屋の床の全てを覆うような魔法陣を展開し、剣と盾を携えし暗黒騎士のような骨鬼、アンデット・オーガナイトを無数に召喚する。
身の丈は3m近い巨体、獰猛な牙、禍々しい角を生やす見るからに凶悪な魔物達である。
「我ノ居城ニ迷イ込ンダ招カレザル客ヨ、闇ニ飲マレテ滅ブガ良イゾ」
召喚された骨鬼は一斉に勇者パーティを襲う。
魔王が召喚した強力無比な軍団である。多勢に無勢、普通であれば、これだけでケリがつくはずであった。
だが・・・
「あらよっと」
ハクが勇者入りの棺桶を、凄まじい速度で振り回すと、骨鬼はその暴力的な質量に耐え切れず、まとめて吹っ飛び床や壁で砕け散る。
死者の入った棺桶を武器に使うのはどうかと思ったが、そもそも賢者ってなんだっけ?という疑問が生じる。
どうみても彼は脳筋であった。
アカネは、目にも留まらぬ速度で壁や天井を立体的に駆け、背後からズバスバと骨鬼を斬り裂いていく。
戦い方は剣士というよりニンジャに近い、圧倒的な機動力で絶妙に死角に入り込み確実に致命傷を与えていく。
「こいつら斬っても斬っても血が出ないキル、アンデットを斬るのは楽しくないキル」
無双しながら、心底イヤそうな顔をしている。
どれだけ血が好きなのだ、この血染めエルフ。
アオイは、乱戦状態でも物色をやめない。
「闇のネックレスだぁ。これはいいものですぅ。じゅるり」
何か見つけては、変な声を上げている。
ただし周りを気にしてないように見えて、自分に襲ってくる骨鬼は振り向きもせず裏拳や回し蹴りで蹴散している。
その威力は凄まじく、骨鬼を盾や武器ごと粉砕する。
「ここにもあったぁ、大量、大量ですぅ」
ものすごく楽しそうであった。
ポケットや背中に担いだ袋は、すでにパンパンになっている。
格闘家という名の盗賊であった。
クロクロはというと、もぐもぐとバナナを食べていた。
小腹がすいたらしい。
クロクロの代わりに戦っているのは、先ほどクロクロを甲斐甲斐しく世話をしていた精霊達である。
「クロクロ様に攻撃してくるとは、この火の精霊王エンがゆるさん。燃えつきぉおお」
骨鬼は超高温の炎で焼かれ石灰化する。
「水の精霊王カイがお掃除してあげるわねぇ」
大量の水が殺到し骨鬼を一気に押し流していく。
「この地の精霊王ヘキが命ず、地の底に沈めやぁああ」
床板に異空間が開き骨鬼たちはぼとぼとと落ちていく。
「この風の精霊王フウの名において、クロクロ様の敵を切り刻め」
風が収束し見えない刃となり骨鬼たちを切り刻んでいく。
あれ?この精霊達って、精霊王だったの?
「うるさいですの、静かにしなさいですの」
癇癪を起こしたクロクロが、自称精霊王達に向かってバナナの皮を投げつけると、
「「「「ハイ」」」」
精霊王たちが一斉に黙る。
よく訓練されているようである。
勇者パーティは勇者が居ないにもかかわらず、異常なほどに強かった。
もし配下の四天王達が相手していたとしても、互角以上に戦うだろう。
だが魔王には莫大な魔力があり、骨鬼程度なら無限に召喚することが出来る。
このまま長期戦に持ち込めば、勇者という決定打の欠ける彼らは次第に疲弊し、魔王有利となるはずである。
魔王は髑髏の仮面の裏でそう確信していた。
突然チーンという甲高い音が響き渡り、全員の動きが一瞬止まる。
「ナンジャ、コノ音ハ?」
魔王は音の発生源を探す。
音の発生源は、ハクが武器にしている棺桶であった。
その音を聞いたハクは、自分を中心にコマのように棺桶を振り回し、自分の周りから骨鬼を強制排除する。
「ねぼすけめ、やっとお目覚めか」
ハクは振り回していた棺桶をひょいと持ち直し、そのまま床にズンと落とす。
その衝撃で床に放射状のヒビが入る。
もうこの床は全面張り替えるしか無いだろう。
「さぁさぁお立ち会い、勇者の復活ショーにてございます」
ハクはにやりと笑い、魔王に向かってそう口上した。
次はホラーかも知れない。




