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勇者はいってます。  作者: 夢見創
三章目 旅は道連れ
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最強料理人

グルメ回

 なんだか長い回想を挟んだ気がするが、勇者パーティ+魔王の関係者は、件のダンジョンに到着していた。

 すでに夕方になっていたため、一旦野宿し明日の朝から探索することになった。


 テントを張り野営の準備が終わると、アカネが顔を赤らめながらハクを連れ森の中に消えていった。


 そして十分もたたずに、ハクが巨大な猪を背負い、血で真っ赤に染まったアカネと一緒に戻ってきた。

 食料の調達だった。


 アカネはすっきりした表情になっていた。


 その猪を受け取ったピエールさんは、2本の包丁を華麗に使い、あっという間に猪の皮と内臓を処理していった。

 超一流の仕事であった。

「これだけ素晴らしい猪ナーラ、丸焼きトカーも良さそうですネェ」

 そういうと、ピエールさんは馬車の中から、鉄の棒と小型の物干し台のような物を出してきた。

 鉄の棒を猪の口から下まで通し、内蔵を抜いた腹の中には香辛料や香草を詰めタコ糸で縫合する。

 それをハクとドランが持ち上げ、さっきの物干し台のような物に引っ掛ける。

「これで準備完了デース、後は丹念にタレを塗りながらグルグール回し、炙り焼きをするだけデース」

「重そうだし、ドランか俺が回そうか?」

 ハクがそう言うと。

「火加減トカー、ワタシートの連携もありマースので、それはミリがやりマース」

「ミリちゃんが?」

「ミリー、こっちで手伝いお願いしマース」

 ミリは魔王やクロクロ達と楽しく会話中だったが、呼ばれるとすぐさま父の元に走って来る。

「ミリー、アレやりマース。準備お願いしマース」

「解ったかな!」

 そう言うと、ごそごそと古い装飾の施された半透明なメダルを取り出す。

「ソレハッ?」

 魔王はそれを見て硬直する。


 ミリはそのメダルを天にかざした。


「守護を司るヘスティアーの力を示すかな、神鎧(ギガント)降臨!」


 ミリがそう叫ぶと、天にかざしたメダルから眩しい光が発生する。

 メダルの光は天を貫き、空中に複雑で巨大な立体魔法陣が描き出される。

 その魔法陣が星のように光輝くと、その光の中から染み出てくるように、金属製の人型が現出(げんしゅつ)してくる。

 その人型の大きさは約8m、巨大な杖を装備した、橙色の巨人であった。


 巨人はゆっくりとミリの元に降りてくる。

 地上に着地した巨人は、従者のようにミリの前に膝を折り(かしず)く。

 巨人の胸元が開き光を放ち、光りに包まれたミリが吸い込まれていく。

 ミリを収納し胸元が閉じると、息を吹き返すように巨人は立ち上がった。


「じゃあ調理をはじめちゃうかな」

 拡声されたミリの声が響き渡る。


 ミリを乗せた神鎧は、猪が掛けられた焼台の後ろに座り込む。

 そして左手で猪をゆっくり回転させながら、右手の杖を猪にかざす。

 杖から熱線のようなものが出ているらしく、猪がじゅうじゅういいながら焼けていく。

 神鎧式調理法だった。うん・・・今度は高性能調理器か・・・

「ヘスティアーで焼くトー、こんな大きな食材デーモ、中まで手早ーク、しかもおいシーク焼けるのデース」

 特製のタレを猪の表面に丁寧にハケで塗りながらピエールさんが解説する。

 その間も、ミリに細かく焼き加減や回す速度の指示をしている。プロの仕事であった。


 しだいに油とタレと香草が程よく混ざり合った、香ばしい匂いが周りに立ち込める。

 自然とよだれが口の中に貯まる。

 なにこの暴力的な匂い。

 皆が猪の丸焼きの前に群がってくる、クロクロや魔王ですら引き寄せられる。

「皆サーン、猪ノー丸焼きができるマーデ、ヘスティアーデーモ、二時間程掛かりマース、もうスコーシお待ち下さい」


「あ・・・後二時間・・・耐えるのか、耐えれるのか俺」

「カグワシキ香り、腹ガナッテシマウ・・・ハズカシイ」

「生でもいいキル、食べたいキル・・・」

「よだれが止まらん、このままではよだれで脱水症状になる」

「し・・・仕方ないですわ、美味しい料理を食べるためには耐えないといけないのですわ。ジュルリ」

「ボク、もう、がまん出来ないぃい、誰かボクを縛ってぇええ」


 阿鼻叫喚の2時間だった。


 周りを餓鬼地獄のような惨状にしながら出来上がった猪の丸焼きは、まさに絶品であった。

「なにこの皮、旨、パリッとして甘辛くて、噛んでると中から極上の脂が染み出てくるぅ。うぁあ何だこれぇ、脂なのに、食べると太るのにぃ、けど止められないぃいい」

 アオイが目を白黒させながら食べている。

「皮は香草と一緒にパンに挟ンーデ食べルート美味しいのですヨー」

 そう言うと、ピエールさんは薄く切ったパンに香草と皮を挟んだ物を、ささっと作り差し出す。

 それをドランが受け取る。

「どれどれ・・・うがぁああああああああああ、なんじゃこりゃあ。甘辛い味とパンとのマッチングが素晴らしい、しかも猪の皮の脂がパンに染みてじゅわっと・・・うぉおおおお旨すぎる!これならいくらでも食べられるぞい」

「ドラン!お前ばっかりズルいぞ!こっちにもよこせ!・・・なんだこりゃあああああああああああああ」

 ハクとドランが超うるさい。


 肉の方も、柔らかくジューシーで噛めば噛むほど濃厚な肉汁と旨味が出てくる。

「肉美味しいキル、血出ないのに、美味しすぎるキル、もぐもぐキル」

 アカネは幸せそうに肉にかぶりついている。オールタイムで血に飢えている少女を黙らせるとか凄いな。

「わらわは猪の料理は獣臭くて食べられませんでしたのに、これは最高級のお肉に匹敵する香りと味わいですわ」

 クロクロは小さいバラ色の口で、お上品にもぐもぐと食べている。

 いつものジト目がゆるみ、雰囲気が何となくほわほわしている。

「このソースも試してくだサーイ、別の世界が広がりマース」

 クロクロの皿にピエールさんが鮮やかな緑色のソースをたらす。複数の香草とバターを調合し作ったピエールさんの特製ソースらしい。

「trqうぇyいお@???」

 そのソースをつけた肉を咀嚼したクロクロが、言葉を文字通り失う。

 皇家の人間であり、あらゆる美食を食してきたハズのクロクロが言葉を失うとかどんな味なのか・・・


「オイシイノウ、コンナオイシイ食事ハ、ハジメテジャ、我ハシアワセジャ」

 魔王は喧騒の中で至福に至っていた。顔は上気し妙に色香がただよっていた。


「お父さんの料理は最高かな!流石なのかな!褒めるがいいかな!」

 ミリはふんすと平坦な胸を張る。その姿が愛らしかったので皆から拍手が起こる。


 イノシシの骨とキノコを出汁にして作ったという香草スープも、爽やかでサッパリした味わいが他の料理と絶妙に合っていた。

 ハクとドランは酒を酌み交わし始め、どんちゃんやり始めていた。

 ピエールさんが猪の内臓で作ったつまみが酒と最高に合うらしい。二人でバンバン肩を叩き合いながらゲラゲラわらっていた。


 魔王はピエールさんに勧められ幅広の野草で肉を包んで食べた、野草の独特の苦味がアクセントになり、これもまた言葉が出なくなるほど美味しかった。

 当然奪い合いになった。

 違う野草で食べてしまい、アオイが悶絶するという一幕があったりしたが、それはそれで盛り上がっていた。


「ナンダカ、楽シイノウ・・・」

 むぐむぐと肉を頬張り、周り乱痴気騒ぎを見ながら、そう魔王は独りごちた。

次はダンジョンと見せかけて、また横道です。

今クロクロのイラストを描いてます、次の次の回に貼れればいいなぁ|ω・)

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