さぁ選べ
「報告ではそう聞いていたけど、お前本当に男だったんだな、」
アオイは、半裸状態に丈夫な鎖でぐるぐる巻きにされ、冷たい石の床に転がされていた。
焼かれた傷は治っていた、高位の魔法で治療したのか、跡すら残っていない。
そのアオイを、棺桶を振り回してた変な男が見下ろしている。
首筋には赤い少女が刀を突きつけている。
しきりに「斬っていいキル?斬っていいキル」と言っている。
「アカネ、もう少し待ってろ」
「えぇええキル」
少女は残念そうにしている。どれだけアオイの首を斬りたいのだこの娘。
「おれは賢者ハークレイ、仲間にはハクって呼ばれてる」
賢者?うそつけぇえええ!とアオイは思った。
「正直、あの馬鹿に手を出した時点で、お前は死罪決定なんだわ」
「え?・・・死罪?」
死?死ぬの?僕まだ14だよ?とアオイは思っていた。
「クラウスのフルネームって知ってるか?」
フルネーム?
「ラクス公・・・クラウス・リグラス?」
アオイはそう答える。
「リグラスはあいつの母方の苗字。本当の名前はクラウス・クロノクルス、この国の第三皇子だよ」
「はへ?」
皇家に対する不敬は当然死罪である。
その位の絶対的な権力がこの国の皇家にはある。
その皇子は、この部屋の奥で水の入った樽に首まで沈められ、黒い少女にこっぴどく水責めにされてるんですが、それはいいんですか?
皇子涙目なんですがぁあ?あ・・・また沈めれた・・・
「あぁ、あれはいいんだ、クロクロはクラウスの妹だから。しかもクラウスよりずっと地位も高い」
「妹が兄より地位が高い?兄は側室の息子、妹は正室の娘ってことぁ?」
「いや、クラウスが正室の息子、クロクロは側室の娘だな、ついでに正室の皇妃様も元気過ぎるぐらいにご健在だぞ?」
意味がわからない。クラウスがポンコツ過ぎて皇帝陛下に見捨てられたとか?
「クロクロ、クローディア・クロノクルスは聖女なんだよ」
アオイは目が点になった。
聖女といえば、世を救うと言われる勇者の永遠の伴侶と言われ、絶大な魔力を持つ清らかな乙女というアレか?
実の兄を水責めにしてるアレが清らかな乙女とか、なんの冗談だ?
「ということで、お前には2つの選択肢がある。まず最初のは死罪だな、理由はさっき言った通りだ、諦めて死ねって事だな」
「ハク、もうそろそろ斬っていいキル?斬るキル?斬る?キル?」
赤い少女が賢者を見て、しきりに確認している。首の刀にどんどん力が込められてきている。
やばいやばいやばい。このアカネとか言う赤い娘は本気だ。
「あ、あと一つはぁ?」
「俺たち勇者パーティの一員となり、我らが勇者に忠誠を誓え。そうすれば勇者と聖女の権限でお前の罪をチャラにしてやる」
「・・・勇者?・・・勇者がいるのぉ?」
アオイは驚く、聖女に続いて、勇者まで出てくるとは思ってもいなかった。
「聖女が居るんだ、当然勇者いるぞ?」
「ど・・・どこにぃ???」
死ぬか生きるかの瀬戸際ではあったが、勇者には興味があった。見れるものなら見てみたかった。
賢者は一瞬天を仰ぐと、赤い少女と一緒に部屋のある一点を指し示す。奥の黒い少女も同じ場所をさしている。
「あの中」
「あの中キル」
「あの中ですわ」
指し示された場所は、賢者が振り回していた棺桶だった。
勇者は死んでいた。
「って?ぇえええええ?ぉおおおおおい」
アオイは大混乱に陥った。
その後アオイは流石に死ぬのは嫌だったのか、しぶしぶ勇者パーティの一員となった。
賢者は満足気、黒い聖女は無関心、赤い少女は凄く残念そうにしていた。
「強くなってぇ、こいつらから逃げ出してぇ、自由を手にいれてやるぅ。勇者はもう死んでるからなんとかなるぅ」
とアオイは心の中で思っていた。
数日後、勇者の復活の場面をその目で見るまでは。
「アレ何、アレから逃げるなんて無理、無理ゲー、絶体おかしい、このリアルバグ誰がつくったの?いやぁああああああ、そこはだめぇえええ、許してゴメンナサイ、心入れ替えるから勘弁しく下さいぃいいいいぃい、うぁああああああああああやめてとめてぇえええ」
心にトラウマを刻み、いろいろアオイは諦めた。
アオイの回想終了、ダンジョンに向かいまーす。




