魔改造
「ドランいるかー?」
ハクは、裏寂れた界隈にある鍛冶屋にきていた。
「なんだよ、うるせえなぁ・・・おっ?ハクじゃねえか」
中から、筋肉隆々のがっしりした体つきのドワーフの親父がでてきた。
顔や体のあちこちに切り傷や刺し傷があり、鍛冶屋というよりも歴戦の勇士と言った感じである。
「この街には、2ヶ月ぶりか?何処行ってた?」
店先の椅子にどっかり座ると、ハクの肩をバンバンしながら聞いてくる。
「ちょっと魔王城にまで行ってきたよ」
ハクはその辺にピクニックに行ったような雰囲気で答える。
「魔王城か・・・それで探しものは見つかったのか?」
少しドランが真剣になる。
「いや・・・やはり東方の魔帝の所に行くしか無いらしい」
ハクはこうべを振る。
「ふむ・・・魔帝か」
ドランは腕を組み難しい顔になる。
「そうだドラン頼んでいた品は出来てるか?あれがあれば道中が大分楽になるんだが」
「俺様を誰だと思っている、世界一の鍛冶師ドラン様だ、バッチリ出来てるぜ」
そう言うとドランはニヤリと笑いサムズアップした。
鍛冶屋の奥に行くと、そこには4つの円盤がついた怪しげな機械が、ジャッキアップされ置いてあった。
後方には2つのコの字型金属レバーあり、中央は何かを設置するのか深いくぼみがある。
「これが注文の品だ。今から最後の作業をするから郊外の作業場の方に行くぜ」
小一時間馬車に乗り着いた場所は20m平方程の広さの広場であった。
いろんな機材や工材が積んである。
大型機械を作る作業場といったところだろう。
ドランは馬車から鍛冶屋の作業場にあった怪しい機械と、勇者の棺桶を降ろし広場の中央に並べる。
「それじゃ、あいつを呼び出すか」
ドランは古い装飾の施された半透明のメダルを胸元から取り出し天にかざした。
「炎を司るヘーパイストスの力を示せ、神鎧降臨!」
ドランがそう叫ぶと、天にかざしたメダルから眩しい光が発生する。
メダルの光は天を貫き、空中に複雑で巨大な立体魔法陣が描き出される。
その魔法陣が星のように光輝くと、その光の中から染み出てくるように、金属製の人型が現出してくる。
その人型の大きさは約8m、巨大な鎚を装備した、錆色の巨人であった。
巨人はゆっくりとドランの元に降りてくる。
地上に着地した巨人は、従者のようにドランの前に膝を折り傅く。
巨人の胸元が開き光を放ち、光りに包まれたドランが吸い込まれていく。
ドランを収納し胸元が閉じると、息を吹き返すように巨人は立ち上がった。
「よし最後の作業をはじめるぞ」
拡声されたドランの声が響き渡る。
ドランは神鎧を使い、怪しげな機械の上に勇者の棺桶を載せる。
少し位置を調整した後、神鎧で上からゴンと鎚で叩くと、ガキンという音とともに棺桶と機械が寸分の隙間もなく一体化する。
移動手段にしか使っていないハク達よりはマシではあるが、伝説の神鎧はドランにとっては便利な工作機械扱いであった。
神鎧の指先から高熱の熱線を出し棺桶と機械をプラズマ溶接していく、歪みは巨大な鎚で叩き調整・・・うん・・・文句無しに超高性能な工作機械だった。
そうこうしてる内に、棺桶に4つの円盤がついた世にも奇妙な物体が完成する。
完成した物体を、予め用意してあった台座にのせ、4つの円盤を地上に接触しない高さにする。
ここまで作業を終わらせるとドランは神鎧から降りてきた。
手をクイックイッとやり、作業を見学していたハクを呼ぶ。
「ハク、ここに魔力を流し込んでみろ」
ドランは機械後方のコの字型になった部分を指し示す。
「了解、魔力はどのくらい流し込めばいい?」
「俺様が造ったんだ、好きなだけ流し込んでも壊れはしねぇよ」
ドランはガッハガッハと笑う。
「オーケオーケー、それじゃ思い切り流してやる」
ハクはそういうと、金属の棒を握りしめ意識を集中する。
すると、ぎゅぃいいいいいいいんという音とともに円盤が物凄い勢いで回り始めた。
「流石だなドラン、出力も速度も申し分ない」
台座から降ろし、棺桶の後方に取り外し可能な座席を取り付けると、ここに魔力で走行する魔導棺桶車両が爆誕した。
・・・もしかして霊柩車って言わないかな?
魔導棺桶車両の駆動系である魔導モーターは前輪の中に仕込まれており、左右に曲がるのは左右のモーターの回転比率を変える事で行うようになっている。
ハクが走ったり止めたりドリフトしたり、楽しそうに走行のテストをしていると、レバーの横に怪しげな青、黄、赤のボタンを発見する。
何かと聞くと、ドランがニヤニヤしながら言う。
「そいつから降りて、その青色のボタンを押してみろ」
いたずらっ子が悪巧みしてるような顔だった。
ハクがドランの指示通りに青色のボタンを押すと、座席が棺桶と分離され、その後車輪が水平になりガチャンガチャンと棺桶の下の方に収納される。
厚みは増えたものの、前の棺桶に近い形状になる。
「おぉおおお?」
もう一回押すと、収納された車輪が出て来て元の車両になる。
「おぉおおおおおおおおおお?」
超かっこいいギミックだった。
「今度は黄色いボタン押してみな、こいつはすげえぞ?」
ハクが黄色いボタンを押すと、棺桶の前方に2本、4つの車輪の中央に一本づつ、凶悪なドリルが出現し爆音とともに高速回転をし始める。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ハクが歓声を上げる。
「さすがドラン!解ってるじゃないか、完璧だぜ」
「おうよハク、ドリルは男のロマンだよな」
ふたりの男が拳を突き合わせながら、いい笑顔になっていた。
「ところでドラン、この最後の赤いボタンはなんだ?」
赤いボタンだけは、簡単には押せないように保護カバーが装着されていた。
「それだけは絶対に押すんじゃないぞ、絶対にだ、絶対に押すなよ?」
ドランがやたらと押すなと念を押してくる。
「お・・・おう・・・」
嫌な予感しかしなかった。
とうとう自走するように・・・




