噂のレストラン
アオイが、何やらごきげん斜めであった。
「この僕より、美少女がいるなんて信じられないよぅ」
ハクの用事で、港町ラクスに来ていた勇者パーティ一行は、アオイに凄い美少女が居るという噂のレストランに引きづられるように連れてこられていた。
アオイは「真相を確かめてやるんだよぅ」とかブツブツ言っていた。
辿り着いたレストラン「海の潮騒」は、清潔でおしゃれな佇まいのレストランであった。
料理もうまいと評判らしく、確かに美味しそうな匂いが漂っている。
店の前にはすでに長蛇の列ができていた。仕方なく最後尾にならぶ。
クロクロは顎に手を当て、ジト目でげんなりとしていた。
アカネは、街を歩く人を見ながら「1キル、2キル・・・・」と物騒な事をつぶやいていた。
アオイは手鏡を見ながら、ココが決まらない、もう少しこうとか、化粧用品と格闘していた。
とりあえず並んでる間、椅子も足りなかったので棺桶を椅子にしていた。
いつもながら罰当たりな感じである。
ハクは何かの設計図を見ながらうんうん唸っている。
珍しく賢者らしかったが、列が進むたびに座っている他の3人ごと片手でズルズル棺桶を移動させてるので、列に並んでる他の人間はその異様な光景に引き気味である。
3時間後、やっと入店出来るようだった。
棺桶とクロクロの大鎌は邪魔なので入り口の横に立て掛けておいた。
棺桶と大鎌という絶妙な組み合わせの為に、おしゃれなレストランが一瞬にして猟奇な店に変貌した。
「3541キル・・・」
・・・うん・・・ハクはアカネの首根っこをひょいと掴み入店した。
窓際の4人席へ案内され着席する、きょろきょろと店内を見回すと奥に件の少女がいた。
彼女はメイド風の服と、ふりふりのエプロンとヘッドドレスを着けた、このレストランのウエイトレスだった。
可愛らしい服装がよく似合っている。
「ほぅ」
クロクロが感嘆の声をあげる。そもそもクロクロも妙に黒い雰囲気が邪魔をしてはいるが美しい少女なのである。
彼女は件の少女を噂通りと認めた。
アオイは少女を見つめたまま硬直し動かなくなっている。
ハクも珍しく驚いている。
アカネはキルキル言ってる。アカネだけ普段通りだった。
マオという噂のウエイトレスは、本当に美しい少女だった。
種族はエルフらしく、ちょっと尖り気味の耳をしている。
身長は低めだが、芸術品のように均整のとれたプロポーション。
シミひとつ無い白雪のような白い肌。
幼さは残るが、女神のごとく美しく整った卵型の顔。
蝶のような綺麗な髪留めで纏められた長い髪はやわらかな薄桃色のウェーブ。
人を惹きつけ離さない柔和な目に、きらめく瞳は美しい桃色。
つやつやとしていて柔らかそうな桃色の唇。
光がきらきら舞い踊るような可憐な姿に・・・ん?
「ま・・・負けたぁ・・・僕より可愛いとかあり得ない・・・やっぱり胸?胸なのぉ?」
アオイは机に突っ伏して、ガンガン机を殴っていた。
お前だと机が壊れるからヤメレ。
「胸って・・・お前男だろ・・・」
「揉めば、きっと大きくなるぅ、ハク揉んでぇ」
「ならんわぁああ!」
ハクはアオイに拳骨を落とす。
アオイはそのハクの拳を片手でパシと軽く受け止める・・・ちきしょうめ・・・
馬鹿な会話をしていると、話題のマオが注文を聞きに来た。
周りの客の視線も、マオと一緒に移動している。
・・・まぁわからなくもない、たぶんほとんどの客が彼女目当てである。
「ゴ注文ハ、オ決マリデショウカ?」
綺麗な声であったが、少し発音が聴きづらかった、異国の人間だろうか?
しかも何故かハクの顔を直視しないようにしている。
「わらわは、このフルーツてんこ盛り蜜かけパンケーキと、砂糖たっぷりのミルク紅茶ですわ」
クロクロは、この店で一番甘そうな物を頼む。
クロクロは実は甘党であった。
精霊王たちは超ミニサイズになって机の上でトテトテしている。
見た目だけは可愛い。・・・変態だけど。
アカネは肉料理のページを穴が空くように見ていた。
「この300gステーキを血の滴る超レアでキル、付け合せはイモでキル」
それはもう生なんじゃないか?
アカネは両手にフォークとナイフを持って左右に揺らしながら、キルキルキルと嬉しそうにしていた。
「僕はコラーゲンたっぷり海鮮シチューとぉ、それと野菜サラダをぉ」
アオイは机に突っ伏しながら注文する・・・しっかりと美容食である。
「俺は、この殺人級超メガ盛りパスタを増し増しのW盛りで」
ハクの注文に周りがザワッとする。
「な・・・なんだと?大食い自慢を奈落に落とし、減らない不動の山と言われたあのパスタか?あれを増し増しのW盛とかありえんぞ?」
「ゴ注文ハ、以上デショウ・・・カ?」
マオが消え入りそうな声で確認をしてくる。
「白ワインがあれば一本追加で・・・ところで、君、俺と会ったことがないか?」
マオは、一瞬ビクッとすると、頭をプルプル振って一生懸命否定する。
しぐさが、あまりにも可愛らしいので、周りからなにやら暖かな視線が彼女に注がれる。
同時に殺気を含んだ刺すような視線がハクには注がれる。
「いきなり、ナンパですの?」
クロクロがジト目でハクを見る。
「い・・・いやそんな事は・・・」
ハクは一瞬アカネの顔を見た後、頬をポリポリと掻く。
「ソ・・・ソレデハ、少々オ待チクダサイ」
マオはそそくさと厨房に下がっていった。
「・・・どこかで会った気がするんだけどなぁ・・・あれだけの美少女を忘れるとか無いと思うんだが・・・」
ハクは独りごちる。




