仕掛け
「後続はまだか!」
夜叉王が天幕の中で怒気をはらんだ声で叫んでいた。
おかしい・・・砦に残していた兵たちが、一向にこちらに来ない。
兵量を持ち、後から追いついてくるように命じていたはずなのに。
夜叉王は苛立ちを隠せないでいた。
そこに、装備のあちこちが焼け焦げボロボロになった兵が、夜叉王の部下に肩を支えられるようにして連れてこられる。
兵は疲労困憊しており、息も絶え絶えだった。
兵は、夜叉王の目の前に来ると、目を見開き平伏した。
平伏しながらガタガタと震えている。
「お主は、砦に待機させていた兵だな?」
夜叉王が問いただす。
「は・・はい」
「他の兵たちはどうしたのだ」
一瞬兵の動きが止まる。そして、たどたどしく答えた。
「第一砦が炎上焼失し・・・壊滅状態に・・・」
「な・・・何が起きた?」
「夜叉王様が奴らの追撃に向かった数刻後・・・砦のあちこちから突然火の手が上がり、我軍の者たちを巻き込みながらあっと言う間に広がり・・・」
奴ら・・・砦から退避するときに仕掛けを・・・
夜叉王のギリッという歯軋り音が聞こえる。
夜叉王のあまりの怒気に、部下たちが怯み、無意識に一歩下がってしまう。
「もうよい下がれ・・・お主ら、その者を手厚く治療してやるが良い」
夜叉王は部下に命じ、報告に来た兵を下がらせる。
奴らの仕掛けに気づかなかったのは自分の落ち度だ、夜叉王は自分に憤怒していた。
「奴らめ・・・」
兵量も援軍も絶たれた・・・長期の戦闘は不可能。
ならば・・・
クリミナスとクルガリオは二人だけで中央の天幕にいた。
「糞兄貴。あのやり方は、魔王が軽蔑するぜ?」
「私が責任とるさ。今回のシナリオを書いたのは自分だしな」
クリミナスの手には、円柱状の謎の物体があった。
その円柱には、どこかで見たようなイラストが書かれてある。
「それ、やっぱりドラン製か?」
「ああ、まだ将軍職をやっていた頃のドラン殿が設計した『時限発火装置』だな。これはそのプロトタイプだ」
複雑に組み合わされたバネと歯車を使い、設定した時間に可燃油を上の穴から霧状に噴射しばらまいた後、内蔵された火打ち石でよって着火する装置である。
相手は見たことも聞いたこともない兵器であるため、兵器であるとは気付かれにくく、魔力も使っていないから、魔力探査にも引っかからない厄介な代物である。
「そいつマキラ殿に量産してもらい、砦にまんべんなくばら撒いておいたのか、えげつねぇなぁ・・・」
クルガリオが呆れている。
「この位やらないと、数に勝る魔帝軍に勝ち目は薄いからな」
クリミナスは笑っていたが、目は笑っていなかった。
「これで奴らは撤退するか・・・いや・・・犠牲を厭わず・・・」
魔帝の性格からして、撤退は許さないだろう。
「全力で攻めてくるだろうな」
クリミナスとクルガリオそう結論づけた。
天幕に闇が現れる。夜王マキラだ。
「やつらが動き出したようですよ?」
「そうですか、ではこちらも迎え撃ちましょう」
こっちは40万VS40万のガチがはじまりそうです




